蘭通詞会所にて
大通詞:大田崇善(おおた そうぜん)本田博太郎 が アメリカ人との英語通詞に尽力した森山栄之助(もりやま えいのすけ)小池徹平 を労う。
この通詞がうまくいかなければ、長崎の町には大筒が撃ち込まれていたかも知れぬという崇善。
やはり、オランダ語だけでこん国守ることは無理かもしれんと。
その言葉を聞いた周りの者は森山を咎めるが、それを遮るように大声で会所にやって来たのは・・・
おぉ~、親父殿っ!
片肌脱いで竹刀を片手に会所へやってきた、崇善の息子で通詞の見習生:大田清十郎(おおた せいじゅうろう)浅香航大 だった。
清十郎、なんかその恰好わっ!
道場で一汗かきました、いつアメリカが攻めて来よっても異敵何するものぞの心意気ですっ!
そう言って竹刀を振り回す清十郎に、後頭部を叩いて叱る崇善。
この抜けもんがっ、おまえは通詞やろがっ!
言葉で相手と組みあわんでどがすっと。
そう言って、清十郎の口を押える。
すると奥から、大通詞で蘭語通詞会所の長:杉原尚蔵(すぎはら しょうぞう)矢島健一 が 金魚のフン 稽古通詞でお坊ちゃん気質、通詞の長である父親にくっついている:杉原敬生(すぎはらけいしょう)重岡漠 と一緒に表に出てくる。
栄之助の今日の働きを労う杉原だったが、息子に蘭語の稽古をつけろとせがまれていたと親バカぶりを発揮している。
敬生にこのあとは、ラナルド・マクドナルド(木村昴)から受ける英語の講義であることを伝えられ、ふと表情が曇る栄之助だった。
崇福寺 大悲庵
ラナルドのいる座敷牢の前で、通詞たちは英語の講義を受けている。
ラナルド・マクドナルドによる英語の講義は、すでに半年に及んでいた。
他の通詞が帰ったあとも、ラナルドの前から離れない栄之助。
ご機嫌はいかがですか。
よい。
あなたの発音もよい。
もしあなたがここを、この牢を抜け出すことができたら
あなたは何をしたかったですか?
「したかった」は過去のこと、何をしたいか聞いてくれ。
みーらい。future
わたし、どこへも行かない。
わたし、ここにいる。
ときどき、さるく。
さるく・・・散歩ですか。
イェーイ、アイ テイク ア ウォーク.
長崎の訛りがうまか。
そう言って、栄之助は笑った。
ときどき、モリヤマ会う。English教える。ずっと、ずっと教える。
感慨深い表情でそれを聞いていた栄之助だが、
アメリカから迎えの船が来ました。
そう言って、彼との別れの日が来ることを伝える
あさって、あなたを出島に送ります。
今までまことにー
それ以上言葉を続けることができず、栄之助は手をついて頭を下げ
ラナルドへの感謝の気持ちを表す。
ラナルドもこの日を待ち望んでいたが、栄之助と会話を重ねる日々に友情のようなものを感じ
言葉を続けることができない。
ただ、
よか。
というだけであった。
桜町牢に戻った男
抑留者たちのいる牢に、頭にカイの帽子をかぶった14人目の男が帰って来た。
牢番や役人たちが、鍵をかけて帰って行くと
男に向かって、気の荒い船員が声をかけて近寄ってくる。
カイ、捕まったのか
しゃべれよ、このクソ野郎
そう言って近寄って来た男の腕を掴んでねじり上げ、抑え込む。
黙れ
入って来た男が、カイ(カリマ剛ケアリイオカラニ)ではないことに驚く乗組員たち。
それは、置屋「柳屋」に居候の男:神頭有右生(こうず ゆうせい)髙嶋政宏と会っていた謎の男:吉次(きちじ)サンディー海 だった。
沖合に停泊するアメリカ軍艦プレグル号
抑留されていた漂流民が、引き渡される日となった。
艦長:ジェームス・グリンは船首でその様子を見ていた。
柳屋では
表を掃く壮多に、塩頭がボーロを買ってきて欲しいとお使いを頼む。
戻ろうとすると、柳屋の男衆が慌てて飛び出してくる。妊娠していたアヤカが産気づいたというのだ。
オランダ人と日本人のハーフ女医:えま- 浦浜アリサ を呼びに駆け出して行った。
桜町牢
漂流民たちはまず長崎奉行所に向かい、帰国の通達を受けねばならなかった。
牢から出る漂流民の様子を見に来ていた栄之助。
その中に、見たことのない男がいることに気づく。
栄之助が役人を見ると、役人は困った顔をしていた。
陣痛が激しくなるアヤカ
置屋・柳屋を束ねる女将:しず(紅壱子)と芸妓見習いの少女:トリ(都麗)久保田紗友 が出産の近づいたアヤカの手を握り、仲間たちもはげましている。
女医:えま も 大丈夫やけん、息ばゆっくり。 そう言ってアドバイスする。
男二人は部屋の外でうろつくが、お湯を沸かすよう指示され働く。
奉行所
乗組員たちが、ぞくぞくと籠から降ろされて奉行所に入って行く。
お使いに出た壮多がそれを眺めていたが、カイの帽子を被った男が奉行所に入って行くのを目撃する。
あの帽子は神頭に渡して、それをカイが死んだものとして使うはずだったのに、なぜカイの帽子を被った男が奉行所に入って行くのか。
その頃、栄之助は「14人目の男は偽者ではないか」と長崎奉行所の船掛:白井達之進(しらい たつのしん)宮川一朗太 に伝える。
牢に戻っている者が入替っていると申すか。
はい。
なにをくだらぬことを、自ら牢に入る者などいる訳がない。
そう言って、栄之助の話をとりあおうとしない。
脱走者は一度は身を隠していた。
アメリカ艦の到着を知って戻って来た。そうでしたね。
そうだ、父親の形見という帽子を持っていた。それが証だ。
(ぇ)それだけで?
奉行所前でカイのふりをした男が、壮多の方を振り返る。
壮多は塩頭にカイはどうなってしまったのかを確かめたくて、柳屋へ戻って行った。
その頃、奉行所の廊下では白井に栄之助がくい下がっていた。
居なくなった男の代わりに、誰かがあの中に潜り込んだとです。
私は通詞として、何回も何十回も彼らを間近に見てきました。(廊下の奥に大田崇善がやってくる。)
言葉も交わしました、間違えるはずがなかとです。頭数が揃うとっても、あん男は・・・白井さん。
森山、森山ぁぁぁ~。
そう言って、崇善は栄之助を白井の前から引きはがす。
ばってん、あれは確かに・・・白井様っ!
もぅおりやまぁぁぁぁぁぁ~っ。
すると、その声を聞きつけたのか井戸家家老:周田親政(すだ ちかまさ)武田鉄矢が供の者を連れて様子を見に来た。
(白井たちが、伏して控える。)
引き渡しの漂流者は14名、何の支障もない。
そう言って、周田は去って行く。
白井も逃げるようにその場を去る。
周田様っ!
追いかけようとした栄之助の腕を掴む。
森山ぁぁっ!
たとえ、たとえそうだとしても。奉行所がよしとしていることば、我らに糺す(ただす)力はなかっ!
それは、ワシら通詞の分ではなかっ!
奉行所白洲にて
ラナルドと他14名が、奉行所白洲にて沙汰を受ける。
みぎてい品々不法に及び候だん不届き至極に尽き、きっと取り計らうべきなれども、此度は格別の猶便を以て~
長崎奉行:井戸対馬守覚弘(いどつしまのかみさとひろ)石黒賢 は漂流民たちに、出島からアメリカ軍艦に乗船させると申し伝えた。
~以来、我が国へ再び参ることを許さず
対馬守の言葉を英訳する栄之助。
その栄之助を見つめるラナルド。
だが、栄之助はカイに成りすました吉次を見据えていた。
すると、海から吹いてくる風を感じたカイと同じ島から来た漂流者たち3人が、自国語で話し始める。
エィア アイ アホイ エホラホウ イムンア(隣の男に話しかける。)
イムンア(隣の男、左手の拳を胸の辺りで握る。)
イムンア(その隣の男も、拳を握る。)
イムンア エナ ポォキーィ!(聞き覚えのあるその言葉に、栄之助は驚く。)
男たちは、風を受けて勇壮に歌い始める。
栄之助の隣に座る会所の男がつぶやく。(その前には、杉原・大田の大通詞2名がいる。)
オアフ島の漁師たちばい。(栄之助がそちらを見る。)
自分たちば鼓舞する掛け声や。「明日を信じ、前へ進もう。」っていう。
栄之助は、伊嶋壮多(いじま そうた)永瀬廉 が出島でモーニッケ医師に尋ねていた言葉を思い出していた。
教えてください。
「イ・ムア・エ・ナー・ポーキッイ」
聞いたことはありませんか?
気持ちが高ぶったのだろう。今度は、アメリカ人漂流者たちがその場で自国の歌を歌い始めていた。
栄之助は奉行所を飛び出し、どこかへ駆け出していった。
本日は、ここまで。
ラナルドが覚えた長崎弁「さるく」が出てきました。
「さるく」は、ほっつき歩く みたいな意味で使われています。
数年前に「長崎さるく博」がありましたね。
長崎市中心部は、観光のみどころがコンパクトにまとまっており
歩いて観光するのにはもってこいの場所です。
歩き疲れたら「ちんちん電車」に乗るのも楽しいですよ。