自燈明

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十五番 光孝天皇

2014年12月28日 | 百人一首

君がため 春の野に出でて 若菜つむ わが衣手に 雪は降りつつ

あなたのために春の野に出かけて若菜をつんでいる私の衣の袖に、次々と雪が降りかかってくる。

君がため 「君」は、若菜を贈った相手。万葉時代の「君」は、天皇・主君・敬意の対象となる男性などをさすことが一般的であったが、平安時代には、女性にも用いられるようになった。この場合の相手は、不明。女性と解するのが通説。「が」は、連体修飾格の格助詞。「君がため」で「君のため」の意。
春の野に出でて若菜つむ 八音で字余り。「若菜」は、春の七草。正月に食べると、邪気をはらうことができるとされた。
わが衣手に雪は降りつつ 天智天皇の「わが衣手は露にぬれつつ」と類似の表現。天智天皇の歌は、作者不明の歌が変遷して御製となったものであるが、この歌は、光孝天皇が皇子であった時の作品で、正真正銘の御製。降りつづく冷たい「雪」を、「君がため」「春の野」「若菜」という温かな表現が解かすかのような、やさしく穏やかな印象の作品になっている。天智天皇の御製が、理想的な君主像を象徴している一方で、光孝天皇の御製からは、温厚な人柄をうかがい知ることができる。

こうこうてんのう (830~887)
 在位884~887 第58代天皇。藤原基経により廃位された陽成天皇に代わって55歳で即位。
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十六番 中納言行平

2014年12月28日 | 百人一首

たち別れ 因幡の山の 峰に生ふる まつとし聞かば 今帰り来む

あなたと別れて因幡へ赴任して行っても、稲葉山の峰に生えている松ではないが、待っていると聞いたならば、すぐに帰ってこよう。

たち別れ 「たち」は、接頭語。
いなば 「往なば」と「因幡(稲葉・稲羽)」の掛詞。「往なば」は、「動詞ナ変の未然形+接続助詞“ば”」で順接の仮定条件。「(仮に)行くとしても~」の意。「いなばの山」は、「因幡の山」で、「稲葉(稲羽)山」の意。鳥取市東部にある。
まつとし聞かば 「まつ」は、「松」と「待つ」の掛詞。上を受けて「峰に生ふる松」、下に続いて「待つとし聞かば」となる。「し」は、強意の副助詞。「聞かば」は、「動詞四段の未然形+接続助詞“ば”」で順接の仮定条件。「(仮に)聞いたならば~」の意。
今帰り来む 「今」は、「ただちに・すぐに」の意。「む」は、意志の助動詞。「~よう」の意。

ちゅうなごんゆきひら (818~893)
在原行平 (ありわらのゆきひら)  平城天皇の孫。業平の兄。一門の子弟を教育するため、奨学院を設立。因幡守・太宰権帥・民部卿などを歴任。
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