天ぷらの語源はポルトガル語の四季斉日の意味。四季の初め事で、水・金・土曜日の三日をいう。カトリックではこの三日間は鳥獣の肉を食べないという。quatro temporas を耳で聞いてそのまま天ぷらとなったようである。一般には野菜・魚肉・貝類などに小麦粉を付けて油で揚げたものをいう。天ぷらは我が国の代表的な調理法として、にぎり寿司と並んで、日本料理の一つとして発展してきた。何時の時代から高級化路線を歩み出したのであろうか、自分はむしろ手軽な料理としての位置づけである。
食材は小形のサイマキと呼ばれる車エビを最上とするが、新鮮な魚介類を用いることから、にぎり寿司と歩調を同じくしてきたのかも知れない。春になると野草を天ぷらにする。独特なえぐみが消え、春を満喫できる。ツクシ、フキ、タラノメ、ヒメチク、セリ、ウドなどを天ぷらの具に使う。
最近は天つゆを使わずに塩とレモン汁で頂くことが多くなった。籠に乗った揚げたての天ぷらはそれ自体高級感がある。天丼は冷めた前日に残った天ぷらをおいしく食べるために、煮汁で煮て食していたが、食堂で天丼を注文するとその場で揚げた天ぷらに、秘伝というたれをかけて饗される。熱い衣とたれにご飯とのマッチングは何ともおいしい。
天ぷらの揚げ方は特に説明するまでもないが、カラッと揚げるには、小麦粉の溶き方と水に拘る必要がある。油の温度は180℃と一定にし、温度を保つ。小麦粉は冷蔵庫に入れておき常温より温度を下げておく。水は氷を入れて冷やした水に小麦粉を入れるが、このとき、かき混ぜないことである。かき混ぜるとグルテンが発生し、粘ってしまうからである。優しく上下に太めの箸で馴染ませる。回数は出来るだけ少なくし、玉が残る程度でよい。
準備した具材は、水気を取り、揚げる直前に小麦粉をまぶす。小麦粉の付いた具材を冷水と混ぜた衣に沈め、余分な衣を落とし、熱した油の中に投入する。1回に投入する量は油面に対し半分以下の量にする。油に投入後は衣が安定するまで箸で動かさないようにし、片面が上がれば反転する。油の泡が小さくなり、落ち着いてくれば天ぷらが揚がったサインであり、油を切って取り出す。完全に揚がるまで追加の具は入れない。
卵を冷水に割り入れることもあるがこの場合は白身を使う方がよいようである。勿論、卵を入れなくてもカラッと揚がるので敢えて入れていない。特に注意することは、天ぷらを揚げているときにはその場を離れず、火災に注意が必要である。火傷しないよう慎重に行って欲しい。天ぷらは、具材・衣の温度と油とに温度差を持たせた調理といえる。