昨年の6月下旬に撮ったコチドリです。今年は殆ど見かけません。
蒔絵の紛蒔と同様に、螺鈿を撒くこともある。美しい貝が見せる色合いは、単なる色彩ではなく、貝が形成する真珠層にある。層というだけあって、積層しているが、厚みは、0.1mm以下で、総ての貝が持つわけではない、螺鈿という名称からして、螺鈿は、螺旋状の貝を埋めるという意味で、厚貝を嵌入(かんにゅう)したり、貼り付けて研ぎ出す手法をいう。象牙やべっ甲が併用される場合もあり、それを含めて螺鈿と呼んでいる。奈良時代の正倉院には既に中国から渡来した螺鈿を施した多くの宝物があり、それを現代に至るまで、保存し、受け継がれてきた。平安時代には日本的な図案にも取り入れられ、漆工にも影響を及ぼしている。
使用する貝は夜光貝が金粉にはよく合うが、アワビ、メキシコ貝、白蝶貝、黒蝶貝等もあり、使用する厚さも様々である。塗面を削って埋め込む方法や、薄貝にして切り取り、貼り付ける方法等が行われている。厚貝は、厚さが1.2mm程度で4cm四方の物が多く、ヤスリで形を削る。平らにしたら、美濃紙に線引きした下図をのりで貼り付ける。紙が乾けば、糸鋸を使って切る。
薄貝は、厚さ1mm以下の物で、市販されているのは、0.1~0.3mm程度の物である。切り取って貼り付けて後、1~2回塗料を塗って研ぎ出す。貝が薄いため、腐食法、張り切り、打ち抜きによって加工する。腐食法は、貝に漆で模様を描き、乾かしてから希塩酸をブラシでこすりつける。漆は酸に溶けないため、模様が残る。形が出来れば水洗し、酸を除去する。針切り方は縫い針を利用する。薄貝に切り跡を付けた後、線に沿って折る。
打ち抜きは、ノミの先に打ち抜き型を作り、金槌で強く打って型どおりの貝を得る。薄貝は伏せ彩色といって、予め、薄貝の裏に胡粉や、朱顔料と膠を塗っておき、透かして色を見せる。金箔を貼る場合もある。通常上塗りは1回に止め、薄貝の上に付いた塗料は乾燥後竹べら等で剥がす。
打ち抜いた残りの薄貝を微塵青貝として市販されているが、大きさがマチマチで均一でないため、使用に当たっては自らが各種のふるい目でふるい分けしておくことがよい。必要ならば、彫刻等々で四角や多角形に切りそろえることが行われている。
8月もそろそろ終わる。今年も2/3が過ぎたことになる。以前の職場の後輩と久しぶりに顔を合わせ、小宴会を立川で行うことになり、出向いた。電車で40分ぐらいかかったが、帰宅する学生やサラリーマンで満員の状態であった。最近は快速電車が走るようになり、停車する駅を間違えると各駅停車を利用するより時間がかかる。出がけに女房から注意を受けた。立川駅は改築が行われ、以前と違うことは知っていたが、最近は殆ど利用していなかったため、構内の改造は便利な物になっていた。
以前は駅の北側から南側へ移動するには長いトンネルがあり、狭くて、湿っぽく、薄暗いトンネル内は余り好きな場所ではなかったが、階段を上ると広い改札口に直結されていて、駅ビル内の商店街へ続いていた。同僚2名は既に改札口周辺に来ていて、直ぐに合流出来たが、暫く合わなかったせいか、時間の経過は、それなりの年齢を外見に現わせていたが、そういう自分も高齢者の部類、おそらく昔のイメージは消えていたであろう。
今回は後輩がよく利用しているという居酒屋が会場であった。3人ぐらいの席の確保は、時間が早かったせいか、容易であった。てきぱきとした店員の応対は、非正規社員かアルバイトであろう。よく訓練されていると思った。宴会の開始はお定まりの生ビールでの乾杯、日頃のご無沙汰を詫び、直ぐに各自の体調の話となる。高血圧、メタボ、糖尿病と、境界線を行ったりきたりの話は、嘗てのような勢いはない。ツマミの注文を聞かれたが、自分は余り食べない方なので後輩に任した。ツマミもそれなりの健康食、現代病を意識した選定であった。
家族の状況、嘱託の仕事、最近の出来事等に話が及んだが、いつか、若かりし頃の武勇伝に及び、それぞれの人生経験での苦労話も良いツマミであった。瞬く間に2時間が経過し、またの再会を約束して帰途についた。最近は外で飲む機会も少なくなり、次第に億劫になってきたこともあるが、仕事を持っていないことも出不精になるのかも知れない。たまには同僚や、後輩との再会はよい刺激となり、忘れかけていた人の名前や、自分がしてきたことを思い出す良い機会でもある。
現職の時は連日の飲み会は普通で、会を掛け持ちしたこともあった。仕事の憂さ晴らしや、愚痴の聴き合いだったようである。それなりの楽しさもあったし、お陰で酒が取り持つ縁で、多くの人と知り合うことが出来た。今回改めて感じたのは、経過した時間が昔に返ることの楽しさを実感したことであった。
圧縮熱による発火について触れておく。コンプレッサーは圧縮空気をを作り出す機械であるが、ガスは断熱圧縮すると熱エネルギーが発生し、温度が上がる。逆にガスを膨張させるとエネルギーを吸収するから周囲と断熱されている場合は自ら冷却する。したがって、ガスの着火温度が低い場合には圧縮することにより発火しやすくなる。この顕著な例は、アセチレンで、2気圧以上に圧縮すると爆発する。この性質が分からなかった時代があり、大災害が続いた。現在では正しく管理されている。広く溶接や化学原料として、アセチレンは利用されている。
次ぎに燃焼温度であるが、燃焼熱は物質が完全燃焼する際に発生する熱エネルギーの総量のことで、工学的には発熱量(Cal/Kg)ともいう。燃焼熱が大なることと、燃焼温度の高いこととは意味が異なる。燃焼温度は燃焼の方法によって異なる値で、空気と酸素の相違、空気との混合又は接触状態、熱の放散状態によって異なり、エネルギーの強度を表す。一例として、燃焼温度は、木材で600℃、木炭700℃、コークス1000℃、石油ランプ800℃、石炭ガス1500℃等で、固体は低く、ガスは高い。
爆発燃焼は、今回の化学物質火災で記事にもなった。可燃ガスと空気(又は酸素)を混合し、密閉容器中に入れて点火する場合燃焼熱のためにガスが膨張し、著しい高圧を生じ燃焼は異常になる。点火しないで、加熱するだけで発火させた場合は非常に高温を必要とする。これを自然発火温度という。
燃焼ガスは燃焼熱のために容積が膨張し、未燃ガスを断熱圧縮させ、未燃ガスは圧縮熱によって高温となる。これによって、燃焼速度は速まる。燃焼波面が音速に近い速度になると燃焼音を発して燃焼に至る。この状態を爆発燃焼という。このことは通常の燃焼であり、他の物質の燃焼の範疇である。これに対して、轟爆燃焼(デトネーション)がある。
轟爆燃焼は、火焔伝播速度は音速をはるかに超え、毎秒数千メートルに達し、極めて衝撃的な圧力で混合ガスを圧縮し、そのエネルギーは音波の数倍以上である。燃焼波面は不完全燃焼で、引き続いて燃焼波面が通過する。強い圧力波が壁面を叩くので、高い爆音を出す。一般にガスと酸素の混合気はデトネーションを起こしやすく、空気との混合気であれば高圧下で起こりやすくなる。また、デトネーションの濃度範囲は燃焼範囲よりかなり狭く、轟爆燃焼はこの爆発範囲で起こる。
燃焼は可燃物に点火しただけでは継続しない。可燃物の一部に点火し、燃焼が開始したとすると、そこに燃焼熱を生じ、その熱は周囲の可燃物に伝わり、これを発火点まで加熱するとその部分が燃焼を始め、燃焼が拡大していく。伝熱によって発生した熱以上に熱を奪い去れば、隣接部は発火点に達しないため、燃焼は起こらない。太い薪をマッチで点火できないのは焔があたった部分で発生した熱が隣接部を発火点まで加熱されないためである。
可燃物が小形やチップ状になると、燃焼熱に比べ伝熱損失が少ないので、容易に燃焼することになる。ガスでは、分子状となっているので燃焼が起こりやすい。つまり、燃焼しやすくなる。このときの点火エネルギーが大きいから燃焼が容易となるのではなく、燃焼熱が大きく、形が小さいと容易に燃焼する。
次ぎに機械的発火である、摩擦熱、打撃熱、圧縮熱について概要を述べることにする。
摩擦熱はよく知られている。長距離を車で走ると接地面との摩擦でタイヤが熱くなっていることに気づく、古くから発火は木材同士の摩擦で火を起こしていた。ヒノキの語源は着火しやすい木であったからといわれる。炭塵爆発なども微細となった石炭が空気中に浮遊し、コンベアのベルトと回転軸との摩擦によって着火し、爆発となる。摩擦静電気による発火と混同しやすい。
金属や石などを打ち合わせると火花が生じる。粋な儀礼として、火打ちを行って出勤する職人の姿を見る事もあったが、今では古い映画でしか見られない。火打ちには条件があり、打ち合う物質の一方は硬くてもろく、打撃によって、微小片が剥がれること、金属は単体で、破断しないため、合金が使われる。打撃は強く、面積が小さいこと(先を尖らせる)、異種の物質の方が火花を出しやすい。有機溶剤は蒸発すると空気より重いため、床面に蓄積しやすく、机上に置いた金属がコンクリート床面に落ち、打撃着火が起こり爆発した例もある。
革靴の靴底に金具を打ち込むことで、底の保護を目的としていたことがあったが、極めて危険なことである。粉塵が舞う環境では打撃熱に十分気を付けなければならない。普段気が付かなくても、加熱の原因を調べることで、原因を除去出来る。家電製品でも繰り返される摩擦で高熱となり発火する事例も多くあるので、日頃から煮炊き等火を使うことが多いため、燃焼のことをもっと深く考えてみたい。
熱と光を発する酸化反応のことと定義されているが、酸化反応ばかりではなく化学反応熱が大きく、反応が高温高速で行われ、発光を伴うときは一般に燃焼といわれる。酸化反応でも発熱はするが発光しない場合があり、このことを緩慢燃焼という。自然発火はその原因が緩慢燃焼に基づくことが多い。
燃焼が起こるためには、酸化されやすい物質である可燃物と酸素を供給する物質、すなわち酸素供給源があり、これが反応を開始するために必要な、点火エネルギー(活性化エネルギー)が必要である。燃焼の三要素と呼ばれている。この三要素の一つがかけても燃焼は起こらないから、燃焼を止める消火は、可燃物を取り去るか、酸素供給源を遮断するか、火点の温度を下げればよいわけである。
酸化する物は総てが可燃物となりうる(分子燃焼熱100kcal以上の物を可燃物という)が、大きな活性化エネルギーを必要とし、酸化熱の小さい物は燃焼を継続することは困難となり、これらを難燃性物質という。しかし、難燃性物質も、特別な条件の下では、燃焼するので、注意する必要がある。例えば、高温度であるか、酸素気中にあり、容易に燃焼が起こる状態では可燃物となる。
燃焼は一般にガス化が行われ、重油などの液体か、石炭のような固体でも燃焼に先立って、蒸発又は熱分解によってガス化し、空気中の酸素と混合して燃焼する。ガスが燃える状態が焔(ほのお)である。これに対して固体が直接燃焼する場合もある。木炭は炭素であるが、固体である。この場合では焔はない。炭火で火力が強いときに出る焔は炭酸ガスが一酸化炭素に還元され、このガスが燃えるためである。
空気中には酸素が21%も含まれていて、他の成分は総て酸素の希釈剤であり、燃焼を妨げる。従って酸素濃度の高い場合には、空気中とは異なり、烈しい燃焼が起こる。黒鉛(グラファイト)や鉄線も、空気中では安定しているが、酸素中では容易に燃焼する。また、強力な酸化剤の存在は、酸素濃度を高めるため、酸化剤と可燃物の混合は大変危険である。つまり、空気が無くても燃焼が起こる。
点火エネルギーは可燃物の性質によって異なるが、加熱、焔、電気スパーク、摩擦熱、反応熱、圧縮熱など、様々な形でエネルギーが与えられる。可燃物とはこの活性化エネルギーの小さいものであり、特に小さい物を引火性物質と呼んでいる。更に、火薬類はちょっとした刺激(エネルギー)によっても爆発を起こす。
つぼみの状態も美しい形です。神殿に続く橋の欄干にある擬宝珠、灯籠の頂上に置かれる宝珠は、ハスのつぼみから来たようです。
イチジクジャムは以前このブログで紹介したことがあったが、今回は果物そのものがジャムになるとどれだけ目減りするのか、成分の殆どは水分であるので、水分の蒸発量に注視して作ってみた。結果は生のイチジク5~6個で計500gのものが、完成品300gのジャムとなった。ジャムは乾燥したものではなく、流動性のある食品に変わる。ゲル状になるのは砂糖と果物が持っているペクチンの効果である。
では材料であるが、イチジク500g、白砂糖300g、レモン果汁30ml、ブランデー30mlであり、水は一切使わない。イチジクの薄皮を包丁でそぎ取り、1cm幅に輪切りにする。鍋に白砂糖300gと一緒に入れて混ぜ合わす。やや強火で、火にかけ、焦がさないように、常時、しゃもじで混ぜるとイチジクから水分が出て液状に変わる。沸騰してきたら中火にする。
アクが出て浮いてくれば、お玉で掬い取り捨てる。この状態で水分を飛ばし煮詰めていくが、その加減は、しゃもじで回すと粘度が上がってきて、底が見えるぐらいまで、詰める。レモン汁とブランデーを入れて香りを付ける。弱火にして5分、泡が小粒となれば出来上がりである。出来上がり状態が若干緩い状態でも冷めると丁度良い堅さになる。出来上がりのチェックは、透明の容器に水を入れ、しゃもじから1~2滴ジャムを落とすと玉状のジャムがゆっくり水に溶け出すぐらいがよい。
ジャムを入れる空瓶の煮沸消毒を行う。別の深い鍋に入れ、水を被るぐらいに入れて加熱する。この分量であれば、砂糖の分量が入るので、600㌘のジャムが出来上がる。その大きさの瓶か、同量が入る2つの瓶であればよい。
余分なことであるが、150gの市販品は350~400円ぐらいするので、4倍量が出来上がるため、イチジク500㌘が500円とすると材料費は600円足らずで1000円ぐらいのお得となる。
ジャムとなる果物は完熟した物がよい。市販品は完熟前に販売されるため、売れ残って特価品になったイチジクで十分である。ブランデーは入れなくても十分イチジクの香りは楽しめる。イチジクジャムは簡単で、癖がないジャムで、砂糖の量を加減することによって甘さの調整は可能である。仕込みから完成までは1時間半ぐらいである。是非、この時期の果実を使うジャム作りに加えてみては如何であろうか。
寝苦しい夜が続き、漸く熱帯夜も峠にさしかかったようである。早めに就寝したが、寝付かれず、TVチャンネルを回すとNHKBSでETV特集を放映していた。「よみがえる超絶技巧 輪島塗・貝桶プロジェクトの2年」という標題であった。1時間の番組で、2年間の漆製品制作にまつわる番組であった。
石川県輪島市在住の漆芸家北村辰夫氏率いる50名の漆職人が繰り広げる、毛利家ゆかりの嫁入り道具を複製するというプロジェクトを撮影した内容であった。漆芸の世界は伝統工芸として生き残りをかけ、他の伝統産業同様、暗中模索の状態にある。今回取り上げられたテーマでは、一つの方向を示唆するものであったが、コンセプトとしては理解出来ても、継続性や、業界全体に影響を与えるわけではない。しかし、何らかの糸口となるであろうし、特異な分野とされるかも知れない。受注対象が限定され、莫大な費用を背景とする工芸は存続出来る可能性も否定出来ない。
制作対象は八角形の桶(現代風にいえば一種のキャリーバッグで、輿入れ時に使用されたと思われる小型タンスのようなものである)複製品として2台を海外の富豪である方の注文品である。北村氏によれば、江戸時代に絶頂を期した漆芸技法が、途絶え、その復興を試みること、制作集団は現在でも健在であるが、製作工程毎に分業化されている。漆工では木地師、塗り師、蒔絵師、沈金師等がいるが、分業化のため、自分の専門以外のそれぞれの作業についてはよく知らないとのことであった。
制作に当たって、古くは棟梁のもとで各職人が一堂に会し、仕事をしていたとのことであり、今回のプロジェクトではその形を踏襲する。現代の進歩した技術を取り入れることで、ただ単に、複製品を古くからの技法をそのまま再現するのではなく、新たな視点に立った技法にしていく。特に、伝統技法では蒔絵と沈金とは別の仕上げ方法であり、一つになることはなかったが、今回、合体させた新たな挑戦を行う等のことであった。
北村氏の工房での職人集団が、仕事を通じて、双方向の技術を開示することで、今まで見えなかった世界が繰り広げられたこと、蒔絵後に沈金刀で、仕上げ面に刃を入れる沈金師の挑戦等よく表現されたTV内容であった。完成後の引き渡し時の感動的な場面もあり、漆芸世界の奥深さは十分に視聴者に伝わったことであろう。
再放映が8月29日NHKBSで午前0時~1時まで予定されている。