【パプリカ】着色に適したスパイスの代表格であるパプリカは、甘唐辛子ともいうが、最近のスーパーマーケットでもピーマンよりちょっと大振りで光沢のある赤、橙、黄色をした野菜を見つけることが出来る。英語ではベルペッパー。形からするとベルのようである。
主産地はスペインとハンガリーである。赤いシチューであるハンガリアングラーシュは有名である。国内でも生産されているが米国カリフォルニア産の輸入品が多い。香りや辛みは弱く、生を薄くスライスしてサラダ料理や、彩りとしてどのような料理にも使える。
外国料理の紹介番組で、果肉の部分を直火であぶり、焦げた表面を取り除いてステーキ風に調理したものを見たことがある。たぶん大きめのパプリカをそのように調理すると甘みがあり、肉厚なので食べ応えがあると思う。香辛料としては乾燥して粉末にしたものを利用する。白色系の料理にはアクセントに使える。
なす科の多年草、トウガラシ属で、唐辛子、シシトウ、ピーマンと親戚である。カプサイシンの辛みを突然変異で含まない種である。ビタミンCが豊富で加熱によっても壊れない。
色づけに利用されるスパイスは、パプリカの他に黄色ではターメリックやマスタード、サフランは黄金色、等植物が持つ天然の色素が調理にも使われる。植物が持つ色素は食用ばかりではなく、化粧品、草木染めの原料として多くの種類があるが、合成の着色剤とは異なる安全性が特徴で、色合いは優雅で美しい。
サフランライス、パエリアなどピラフの色合いは、食欲を誘う。カレーといえば黄色。黄色はターメリックの色合いで、ブレンドされたカレー粉の色合いがなければ食欲がわかない。(次回へ続きます)
縮図は生活の場で大変重要な役目を果たしており、中でも地図は全世界から居住地周辺の地名や建物まで詳細な情報を得ることが出来る。最近の自家用車には精巧なカーナビゲーションが完備し、地名や建物等の情報を入力すれば、目的の場所へ連れて行ってくれる。
海図もしかりで、海上を運航する船舶は、海水が澄んでいたとしても、海底にある岩礁は目視では発見しづらく、座礁などの海難事故を起こしやすい。しかしGPS(グローバル・ポジショニング・システム 全地球測位システムの略称)による情報で現在位置が確定でき、海図によって、安全に運行することが可能である。カーナビの原理といえば、同じくGPS情報を使って、ハードディスクに保存された地図情報を画面で表示している。
地図情報は最新版を使用しないと新たに開通して道路情報が表示されず、海の中や田圃の中を車が走っているような表示となる。画面に表示される地図は、縮尺によって拡大や縮小が、可能である。長距離の場合には縮尺倍率(例えば1:20000)を小さくし、広域を表し、目的地近くでは縮尺倍率(たとえば1:5000)を大きくする。目的地近郊では50m~100m位が画面に表示されると良い。
最近の携帯電話の機能にGPSを利用してカーナビと同様に位置情報を発信さえすれば目的地までの道路地図が示され、目的地へ誘導してくれる優れものがある。しかし、方向音痴の方は画面の東西南北が把握できないとせっかくの機能も使いこなせないようだ。林立したビルに囲まれた場所では受信機能が悪くなるが、縮小された地図を実際に見る風景と一致できないことで、混乱すると思われる。その原因は携帯電話のGPS機能の理解ではなく、縮尺された地図は二次元画像(平面)で、実際に目にする風景が三次元(立体)であるための、平面から立体に変換することが頭の中で出来ていないようである。何度か同じ場所へ行く場合でもそのたびに迷い、目的地に行き着かないこともあるようで、このことは直接縮尺と関係はないが、目標のとらえ方が固定されていないものを記憶していると聞いたことがある。
拡大も多くの考慮しなければならないことがあり、別稿に譲ることにしたい。(このシリーズ最終回です)
生活の周りには多くの縮小された情報が散乱している。実在の物体や、情景、景観、物事の考え方や行動等伝達を目的とする場合には地図や写真やカタログなどを用いている。
コミュニケーションの殆どはこうした情報の縮小物を利用する。世界のグローバル化時代を迎え、現実と遊離しても、忠実に再現するビデオや写真は、視野を広げることばかりではなく発掘や冒険、旅行などへ誘い、興味をかき立てるには都合の良い格好なメディアである。通常では当たり前と思っていても、これら縮小されたメディアは全てを表しているわけではなく、人工的に加工された情報であり、我々は無意識のうちに現実と同化させている。
何故に縮小というテーマを取り上げたかといえば、最近破綻した投資詐欺事件があったことによる。現実との違いを認識できるかというと、むしろ仮想の世界が先入観として定着することにより、誤った情報を鵜飲みし、あたかも実際にあるかのように記憶し、現実をゆがめているのではないかという疑念をもつ必要がある。金子みすずの詩の中で、「昼のお星は見えねども、見えぬものでもあるんだよ」と同様に、縮小されることにより、見えなくなってしまうことの危うさである。
辞書によると縮小とは、地図や設計図などの縮図をいう場合と、社会や人生などの縮図をいう。反対語である拡大との間に、ある基準点が置かれている。地図の場合には、原寸を基準にしている。カメラのレンズを通して映し出された写真は、デジタルカメラが殆どで、編集用ソフトを使うことによって、容易に加工が可能であるため、基準を設けるわけにはいかず、真実は隠されたままである。トリミングをすることや印刷条件を変えることによって、縮小も拡大も自在である。芸術性や、意外性の追求によって、また、撮影のテクニックやフィルターの効果、撮影条件の選択等によって、実体とかけ離れた表現も可能である。例えば、店の門構えやショーウインドウの写真を示したとしても、同様な店は他にもあるし、昼間と夜間では見え方も異なる。意外性ではスカイツリーを手のひらに載せた写真等もおもしろい。(次回へ続きます)
【マスタード】和名はからし(芥子、加良元、可良志)で、和からしとも呼ばれ、おでんに付き物なので、さほど目新しくはないが、古くから民間薬として、リューマチや神経痛に湯に溶いて貼付薬として用いられてきた。皮膚刺激があるため長時間の貼付は炎症を起こすため避けるべきと思われる。食欲増進や防腐、乳化作用でマヨネーズ、サラダドレッシングなどにも欠かせない。サンドイッチにからしバターとして用いると、野菜の水分や食材からででる油を遮断しパンが何時までも水っぽくならない。ツンとした辛みはバターとの相性も良く一味違うサンドイッチになる。
最近は焼いたまたは茹でたソーセージを食する機会が増えているが、つぶつぶのマスタードが添えられている。さほど辛くはないが、若干酢味に加工されている。マスタードは香りも優しく、辛みも弱い。アブラナ科のカラシナの種子を香辛料にする。大根やザーッァイ、タカナと同属で、辛みの主成分はアリルイソシアネートである。カラシナは葉や茎も食用となるが、香辛料は種子である。
【ホースラディッシュ】わさびの項目で若干ふれたが、和名は西洋わさびである。わさび大根とも呼ばれる。からみ大根は別の種類である。ラディッシュは大根の意味で、ホースラディッシュは、根の部分をすり下ろし、生牡蠣、ローストビーフやステーキに添えられているので食された方も多いと思う。日本のわさびほどツンとした辛みはないが、大根おろしとわさびを混ぜたような香りと味がする。根の部分を乾燥し、粉末にしたホースラディッシュは粉わさびの原料に使われている。
ホースラディッシュはアブラナ科の耐寒性がある多年草で、我が国では北海道で野生化している。原産地は東ヨーロッパであるが比較的新しい香辛料である。葉や茎も食用に利用され、グリーンサラダには刻んだ葉や茎を用いる。興奮剤としてヨーロッパでは薬用に利用されていたようである。栽培は簡単で、地下茎を地中に埋めるだけで繁殖する。
建物が経時変化で老朽化することや、居住者のライフステージによって、家族構成が変化するのは、自然の成り行きである。団地は個人住宅と異なり、立替えや、改修は居住者全員の同意を得て、取りかかることになる。共有部分については、階上と階下とでは、利害関係が異なるため、改修工事にかかる負担金割合は、同額とはならない。また、設置当初から居住している者と、築後年数がたって入居した者との負担額割合も、異なるであろう。
団地には管理組合があり、耐震補強、エレベーターの設置など、専門家を交えての改修計画や、細かい規定が決められていると思うが、誰もが負担金を支払える能力が継続するかといえば、そうではない。
高齢社会となり、不幸にも、障害を持つ者も発生する。実際、5階に居住しているが、エレベーターがないため、特殊な電動昇降車いすを使い、階段を上下しなければならない方の、福祉車両を使用した、移送のボランティアを経験した。
雨天時は、電動昇降車いすと階段との接触部分がゴム製のため、濡れていると使用できない。通院やリハビリ、緊急時の昇降等の必要性を考えると、階下への移転、もしくは、別の居住先を探すことになる。管理組合へ、外付けエレベーターの設置を要望しているが、居住者の承諾が得られていないため、実現性は薄いと聞く。
居住者はそれぞれ事情が異なるし、管理組合ができる範囲を超える案件については、区や市の相談窓口で相談することになるが、関係部署を含めた横断的対応が必要であろう。
人生をどのように過ごすかの選択は、個人の自由意志で行うとはいえ、選択肢が多いことに越したことはない。ライフステージにあわせた間取り、可変できる機能性も必要であろう。更には、バリヤフリー等居住空間が持つ機能性を高める設計や、階上から階下へ移転可能な対応がとれることによって、事例で上げた障害者世帯との共生が可能となるような再生策の弾力化を期待したい。
【ローレル】ローレルはベイリーブス(英語)、ローリエ(フランス語)と呼ばれているが、月桂樹の葉である。
月桂樹は常緑樹で、クスノク科に属する。古代オリンピックの優勝者には月桂樹の葉で作った冠を与えたといわれている。すがすがしい香りを持ち、矯臭目的で多くの料理に用いられる。特にマリネ、ピクルス、ローストビーフやポーク、シチューやカレーなどの煮込み料理に使われている。通常は乾燥した葉をそのまま用いる。粉末も市販されているが若干苦みが強い。強い香りを出したいときは、ローレルの葉を手のひらでたたき、葉脈を折ると良い。長時間煮込むと苦みがでるので、途中で取り出すか、煮込んだ後は鍋から取り出す。原産地は小アジアで、その後地中海沿岸の諸国(イタリア、ギリシャ、トルコ、フランス等で栽培されるようになった。我が国にも邪気を払うとのことで玄関に植えられることがある。蛇足であるが、ある生理用品に月経と月桂樹をかけて製品名としたものがある。主成分はリナロール、オイゲノール、シネオール等の精油で、抗菌性を持つ。葉を乾燥するだけで香辛料が出来るので、月桂樹の木があれば是非チャレンジされたい。
【ローズマリー】シソ科に属し、低木の常緑樹、最近はハーブティーでも有名である。清涼感の強い香りで、長時間匂いが保たれる。肉料理には好んで用いられる、肉の臭みを隠す作用が強い香辛料である。消臭作用ばかりではなく、主成分の精油は抗菌性や抗酸化性を持つため、肉類の鮮度を保つために用いられる。名前の起源は「マリア様のバラ」という意味だそうである。主成分のカルノシン酸は記憶力を高める効果があり、アルツハイマー型痴呆症患者の病状改善に役立つとの報告がある。
日経新聞の土曜日に付録ではいるプラスワン健康生活の中に「辛さで夏バテ予防」の記事が掲載されており、読まれた方も多いと思うが、なぜ辛い香辛料を夏の暑い時期に取るのがよいのかという内容であった。香辛料を食べると自律神経の交感神経を刺激し、一時的に発汗する。汗の蒸発で体温が下がり、すっきりした気分になるそうである。暑い時期に辛い食事を取ることも頷ける。しかし、既にスパイスの世界で申し上げたように、辛いものは胃の粘膜に負担を与えるため、量を少なめに摂取するのがよいとも書かれてあったので参考までにご紹介する。
【サフラン】和名は蕃紅花。アヤメ科の多年草である。クロッカスと同類で、乾燥しためしべを利用する。原産地は西南アジアである。染料や薬品にも利用されており、独特なスパイシーさ、刺激のある香りと快いほろ苦さがある。水に溶けると黄金色に発色する。この黄金色の着色性は香料というより、食材の着色に利用する。例えば、ピラフやブイヤベースには欠かせないスパイスである。また魚介類のスープや、酪農製品(チーズやバターなど)の着色にも用いられる。
小さな一つの花に3本のめしべを利用するので、その採取量は僅かで、1グラムのサフランでは150本以上を要し、価格も1グラム1000円以上する高級な香辛料である。
古くから利用されているが、ギリシャではロイヤルカラーとして王族だけが使用を許された時代もあった。医薬品として、珍重された。
サフランは高級品であるため、代用品はターメリック(うこん)を用いるが、サフランを使用した料理にはパエリア、リゾット、クスクス、インド料理のサフランライス、サフランティーも有名である。
主成分はアルファ、ベータ、ガンマカロテンであり、精油もとれ、サフラン香水やアロマセラピーとして香りを楽しむ場合もある。生薬としては鎮静、鎮痛、通経等に効き目がある。最近の臨床実験では抗ガン剤としての効果があると報告されている。
【ターメリック】ウコン(鬱金)の方が日本人にはなじみが深い。黄色い色素(ポリフェノールのクルクミン)を持つターメリックは、カレー粉の色を出し、ジンジャーのような香りと辛みを持っている。着色した食材は、たくわん、ピクルス、ピラフ、フレンチマスタード、練り辛子等である。サフランの項でも述べたが、廉価のため、サフランの代用品として用いられる。健康医薬品として、整腸剤や二日酔い止めなどの人気は高い。ターメリックは将にショウガ科の多年草で、香辛料には根の部分を乾燥し、粉末にして使用する。
インドネシアでは女性の化粧品として顔に塗っている。原産地はインドなどの熱帯地方である。ターメリックの薬効はまだ十分研究されたとはいえず、副作用もあり、大量に摂取するのは控えた方がよいようである。