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近くの多摩川に飛来する野鳥の連続写真を中心に、日頃感じた出来事を気ままな随想でご紹介し、読者双方との情報を共有したい。

イボタの木

2020年05月20日 01時00分07秒 | 紹介

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 時期的には五月の初旬から中旬にかけて開花する。白い小花をつける落葉低木で、日本中どこでも見られる植物のようであるが、木材としての利用は爪楊枝ぐらいで、多くないため、広く知られていない。今回は、ワイフが多摩川で撮影したスマホ写真を見せられ、木の名称を尋ねられた。筆者は知る由もなく、インターネットで検索してようやくたどり着いたのは、イボタの木(モクセイ科)とその開花した小花であった。この木には、カイガラムシが寄生し、ロウを出す。このカイガラムシは、カメムシ目カタカイガラムシ科イボタムシが正式名称で、通常、イボタ蝋(ろう)ムシと呼ばれている。イボタ蝋ムシはイボタガの幼虫で、オスが分泌したものがロウである。現在では、わが国でのこの虫からのロウ採取はないようで、製品化されたロウのほとんどは中国産である。価格は他のロウに比べ高めである。

イボタの木の漢字名は「水蝋(いぼた)の木」と書き、古くは、木材の磨きに使ったイボタロウは墨筆になじみやすく、にじみやはじかないため、他の蝋(蜜蝋、ハゼろう等)やワックスとは異なる特徴を持つ。実際の用途は、桐ダンスや桐で製作された木工品の艶出しに使われていた。また、ふすまや障子と敷居との摩擦を滑らかにし、つまり、滑りやすくするために用いられた。
効き目は定かでないが、干した昆虫を疳(かん)や肺結核の薬として煎じて飲むことも行われていたようである。また、ロウソクの代用として用いられたとの記録もある。天然の素材なので、丸薬の艶出しにもこのロウが用いられていた。

イボタの木に寄生したイボタ蝋ムシのオスが分泌したものを木から剥がし取り、容器に水を沸かし、ロウ分を溶かす。水面に浮かんだロウ分を型に流し込んで常温まで冷やし、結晶化させる。沈殿したものもフィルターにかけて不純物と分離させ、前述と同様に熱でロウ分を溶かす。

 記憶違いかもしれないが、古くは漆工製品の仕上げの磨きにイボタロウを使っていたとのことであったが、現在では、植物油と砥の粉を混ぜたコンパウンドが粒子の大きさによって各種製品化されている。ワックスにおいても、シリコーン系や、水溶性のものまで各種あるので、高価なイボタロウを使うことはほとんどないと思える。

 不思議に思うことの一つに、ロウの漢字は虫偏が使われているのは、古い時代からそうであれば、産業に寄与していたと思われるイボタ蝋ムシはロウソクや磨き材料でもあり、工芸品等に貢献していたのであろう。また、鋳造に使われるロウ鋳型は、多分蜜ロウかイボタロウを使ったのであろうか。古き世界に思いを馳せ、一匹の虫が誘う不思議が見え隠れするのもよいものである。