蒔絵の紛蒔と同様に、螺鈿を撒くこともある。美しい貝が見せる色合いは、単なる色彩ではなく、貝が形成する真珠層にある。層というだけあって、積層しているが、厚みは、0.1mm以下で、総ての貝が持つわけではない、螺鈿という名称からして、螺鈿は、螺旋状の貝を埋めるという意味で、厚貝を嵌入(かんにゅう)したり、貼り付けて研ぎ出す手法をいう。象牙やべっ甲が併用される場合もあり、それを含めて螺鈿と呼んでいる。奈良時代の正倉院には既に中国から渡来した螺鈿を施した多くの宝物があり、それを現代に至るまで、保存し、受け継がれてきた。平安時代には日本的な図案にも取り入れられ、漆工にも影響を及ぼしている。
使用する貝は夜光貝が金粉にはよく合うが、アワビ、メキシコ貝、白蝶貝、黒蝶貝等もあり、使用する厚さも様々である。塗面を削って埋め込む方法や、薄貝にして切り取り、貼り付ける方法等が行われている。厚貝は、厚さが1.2mm程度で4cm四方の物が多く、ヤスリで形を削る。平らにしたら、美濃紙に線引きした下図をのりで貼り付ける。紙が乾けば、糸鋸を使って切る。
薄貝は、厚さ1mm以下の物で、市販されているのは、0.1~0.3mm程度の物である。切り取って貼り付けて後、1~2回塗料を塗って研ぎ出す。貝が薄いため、腐食法、張り切り、打ち抜きによって加工する。腐食法は、貝に漆で模様を描き、乾かしてから希塩酸をブラシでこすりつける。漆は酸に溶けないため、模様が残る。形が出来れば水洗し、酸を除去する。針切り方は縫い針を利用する。薄貝に切り跡を付けた後、線に沿って折る。
打ち抜きは、ノミの先に打ち抜き型を作り、金槌で強く打って型どおりの貝を得る。薄貝は伏せ彩色といって、予め、薄貝の裏に胡粉や、朱顔料と膠を塗っておき、透かして色を見せる。金箔を貼る場合もある。通常上塗りは1回に止め、薄貝の上に付いた塗料は乾燥後竹べら等で剥がす。
打ち抜いた残りの薄貝を微塵青貝として市販されているが、大きさがマチマチで均一でないため、使用に当たっては自らが各種のふるい目でふるい分けしておくことがよい。必要ならば、彫刻等々で四角や多角形に切りそろえることが行われている。
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