鳥!連続写真!掲載中!

近くの多摩川に飛来する野鳥の連続写真を中心に、日頃感じた出来事を気ままな随想でご紹介し、読者双方との情報を共有したい。

ぬえ

2020年05月15日 01時00分08秒 | 緑陰随想

  最近の報道紙面で米国の傘にある我が国にとっての対中安全保障を内容とした論調の中で気になった文章があったので紹介することにする。その部分を引用すると、

コロナ危機以降、米中関係の悪化は決定的となり、米国は中国を主敵としたインド太平洋重視戦略に大きく舵を切る。 この際、米国とその同盟国は、中国と対峙せずして自国の安全や利益を守ることはできないのであり、わが国は、中国との経済関係が深いことを理由に、米国と中国の間を渡り歩くコウモリ的振る舞いや鵺(ぬえ)的態度は許されない(以下 省略)


 注目いただきたいのは、鵺(ぬえ)的態度である。「ぬえ」を国語辞典で調べると①渡り鳥であるトラツグミの古称とあり、②夜、不気味な声で鳴き渡った怪鳥とある。さらに語源として、「源頼政」が禁中で射た怪獣は、頭はサル、からだはタヌキ、手足はトラ、尾はヘビ、鳴き声は「ぬえ」に似ていたところから、後世、正体不明の存在を指した。用例として「ぬえ的存在」。つまり、トラツグミは現実に存在するし、その鳴き声も聞くことができる。論者が言いたいのは、正体不明になってはいけないし、どっちつかずのコウモリ的振る舞いを避けるという意味であろう。しかしながら、「ぬえ」という用語が一般に使われているのであろうか?一般的な用語ではないはずである。


 子供のころに両親から聞いた言葉を思い出した。時々、月が出ない夜空で、不思議な鳴き声を聞くことがあった。それを「ぬえ」が鳴いているといわれ、早く寝なさいと怒られたものである。トラツグミの鳴き声は知らないが、今でも鳥は鳥目(とりめ)で、夜は見えないと思っていたが、夜見えなくなるのは鶏(にわとり)ぐらいで、多くの鳥は夜暗くなっても目は見えるようである。夜に多摩川に近い住宅地で鳴く鳥は、ほとんどがコサギかアオサギである。


 「ぬえ」の漢字は夜偏(へん)に旁(つくり)は鳥である。つまり「鵺」。夜の鳥で、ヨタカ(夜鷹)がいるが、これは鵺とは異なる。中形の夜鳥である。名前の通り夜に行動する。昆虫を捕食する。余談であるが、夜歩きする人の例えである。また、江戸時代、夜間に、街頭で客を誘った下級の遊女すなわち辻君のことも夜鷹である。


「しゅうそく」の誤用

2020年05月09日 01時00分06秒 | 緑陰随想

 最近はパソコンやスマホによるメールでの受発信が多くなり、同音異句の誤用が目立っている。自らも注意しているし、自らも間違ったまま発信しているのかもしれない。キーボードから、かな-漢字変換機能を用いて、入力するのであるが、変換キーを押すことによって、パソコンソフトの記憶しているいくつかの表出した候補となる漢字群から適切な漢字を選択し、確定する。この一連の動作は、熟練によって一瞬のうちにできるようになり、便利の反面、誤用のミスも発生する。ミスを回避するには必ずチェックが必要であろう。

 今回は、今年の正月明けから猛威を振るっているコロナウイルス関連で、某社の新聞記事であった。コロナウイルスの発生から約半年が経過したが、安倍首相が発出した緊急事態宣言をどのような理由で、いかなる時期に、撤回するのであろうか、興味津々であるのは誰しも同じで、コロナ感染が治まることを願う気持ちに他ならない。

 「しゅうそく」はこのような場合に使うのであるが、意味からすると「終息」が正しいのであろう。ほかにも「収束」を用いる場合がある。もう一語、「集束」があるが、この語は刈り取った稲を束ねることや、物理で、光の束が一か所に集まる場合に使用する。では、「収束」はどうであろうか。収斂の改称で、数学では数列が先に行くにしたがって、ある数に限りなく近づいていくことを指す。グラフでいう漸近線(ゼンキンセン)のことである。また、ストライキがようやく収束に向かったなどの用例のように、それまでまとまらなかったものの間に、次第に関連付けや歩み寄りが見られ、最後に一本化が実現する場合に用いる。

 終息は、やんでほしいと思っていた混乱したような状態がすっかり終わりになる、終わりやむ、終わることで、「戦火が終息した」という用例で使われる。

 某新聞社では、ただ単純なミスではなく、収束という意味で使ったのかもしれない。真実は闇であるが、その底辺には、いつとも知れないコロナウイルスの発生原因追及や、感染の対策がばらばらで、それこそ収束できていない現在の為政者に対する状況を皮肉ったのかもしれない。