好きだよ 大好きだよ
分かっているから
もう行かなきゃ
決して変わる事のないハズのものが
終わった
頑張り抜いた人の言葉だからこそ───重く
強い男ヒトの涙だからこそ───・・・イタイ
だけどもう 君は行くよ
私は行くよ
つないだ手 ほどけてく
見慣れた背中
お疲れさま?ありがとう?
たくさんの気持ちがケンカするから
泣き声にしかならなくて
仕方ないヤツだと 君は笑う
いつの日か二人 離れた分だけ
強くなったと言えたなら
一枚の写真
大切な人
赤い目と
優しい 笑顔───
風の詩
譲れないのは 肩越しに揺れる未来
振り返らずまっすぐ進む貴方だけど
いつも後ろに差し伸べた手
繋げば風が走り抜ける 身体の中
小さな竜巻忘れずに抱えて
変わらずにいたいのは
大切な人守る気持ち
振り注ぐ陽光に
涙しか残らないなんてこと ない
ささやかでいい あと少しの真実
私は弱いという事
貴方も弱いという事
それでも二人ならきっと 生命は目覚める
全てを信じる なんて 逃げない
貴方に委ねるのではなく 私も歩む
閉じた瞳開き どこか聞こえた懐かしさ
そっと微笑みを時に刻み
両腕一杯 月の光溢れて
優しく在る 強く在る───
まぼろし
視線を上げてガラス越し
軒を叩く雨の音
揺れ踊る葉の緑 鮮やかに
在りし日のピアノの音
声を掛けようと振り向いて
動く空気の影
気付く静かな部屋
あなただけがいない
思い出す ただ一人
雨の昼下がり
月世界
砂上の模様
波音を引き寄せて
艶やかに浮かび上がる
青白の世界
密やかに膨らむ蕾
時を追いかけて 囲まれた
小さなものたち
鐘の音に揺られ
ことりと 砂一粒が
月のエナジーは
隠れ家さえも捜し暴いて
内まで染み透り
中から壊しゆく
なんて切なく 剥がれる身体
月よりの道
この世の裏へと足音導く
捨てられた星々 玉座に集め
月へと差し出せ
開き始めた花から
周り広がる宇宙の中心
闇夜の虹は 昼を凌ぐ程に
霧に包まれ
階下ではうごめく青の精
海底で波打つ草原が
風の移ろいを捉え始めてる
ここでなら行き先 見つけられる
雲の中にもう一つの月
その中にもう一人の私
会えたから手を取って
螺旋階段 渦巻いて
降りてらっしゃい
貰った結晶 心に落とす───
石川賢治「月光浴」展に寄せて
Call
君があれほど送り続けた心に
僕は気付いてあげられなかった
流れることに
流されることに
慣れてしまった僕は
気付く事を恐れてしまった
けれどもし
君が僕を
それでもまだ僕を
求め続けてくれるなら
今一度 君の手を取ることが
叶うのだろうか・・・
瞬く
ざわめきの中
一瞬だけくっきりと見えた世界が
真実
かちりと鍵がはまり込むように
次のまばたきで 再び揺らいで
その瞬間 つかむ何かで
全てが決まるから
油断しないで 目をみはっていて
満月が冴え渡り
目は醒め切って
扉が薄く開く
鈴がかすかに震え
小さく音を出した
湧き上がる泉に沈みゆけば
逆らわないで その引力に
そこから私は
私を探す旅に出る
身体は溶けて
意識は流れ着き
寄せ返す波に包まれて
明るい夜
私は散り広がり
深呼吸と共に イメージは糸を紡いで
繭となり 私を暖める
突き上げる衝動が
言の葉 書き綴り
私は私を求める
何処で途切れ
何処へ続くのか
真白なノートは次々と捲られ
私の瞳は
何処を映すのか
絶え間なく訪れる欲求のまま
私は私を探しあぐね
大きな箱を覆い隠す靄の蔓を
手で探り そっと掻き分ける
『私の鍵は
私の手で開けるわ』
心地よい疲れを連れて
月の光から浮上する
長い夜
私だけの時間
静かな夜
そこにあるのは私だけ
喉につかえた意識の断片を
自分の手で連れ出して
ページも終わりに近付く頃
私は安堵の溜息を小さく洩らす
私が私に
回帰する瞬間
穏やかな眠りの森へと誘われて
夜明けには密かに息づく私の足跡
It's my secret voyage…