さて 久し振りに新作をご紹介します。
お伽草子シリーズ あるいは昔話シリーズに属する作品です。
この作品の構想を想い至った動機は ある日突然来ました。
頭の何処かにしまい込まれていたデューラーの銅版画「Melancholia」と
「かぐや姫」が 何の前触れもなく 無理なくぴったり重なったのです。
「これはいける!」
鳥肌が立つ程のわくわく感
何かの啓示のごとく 向こうからイメージが近づいて来た感じでした。
では 順に説明してみます。
「Melancholia」 (wikipediaからお借りしました)
ドイツの画家・版画家アルブレヒト・デューラーが1514年に製作した銅版画
多分エングレービング(直刻技法)と思います。
かなり知れ渡った作品なので 版画好きの方なら見覚えがあるんではないでしょうか。
wikipediaの解説には
<「憂鬱」をテーマにしたもので、天使が憂鬱に沈んでいる。
魔方陣をはじめとして、寓意的な画題がいくつも描かれており、様々な解釈がある>
この版画のテーマ「憂鬱」を本歌取りとして
かぐや姫の「憂鬱」と 現代の私の「憂鬱」を描き込んでみよう というのが私の目論みです。
とは言っても この想いを具体的なイメージに変換するのには だいぶ手こずりましたが.....
そして仕上がった作品がこちら
「Melancholy KAGUYA2014」 540×440mm ED70 28色35回刷り
天使の頬づえポーズと同じく かぐや姫も頬づえを付いています。
天使の様な深刻な憂鬱ではなく 姫はどこか遠くを見つめて 想いに沈んでいる表情です。
近々不本意ながら 月に帰らなければならない 気持ちの整理が付かない そんな目線です。
「憂鬱」というより「物思い」感の方が かぐや姫には合っている様に思います。
半分開いた丸窓の外には キノコ雲が月を隠さんばかりに わき上がっています。
この部分は右下の和歌と連動して 今の私の憂鬱を出してみました。
歌は逆さまなので読みづらいですが 抜き書きしますと
天(あま)かくす
くも立ちのぼる迷乱古里(めらんこり)
早や 忘れいる
様ぞ うらめし
(もちろん自作です 和歌と云うより狂歌ですかね)
和歌の左には 何か漢数字が書かれていますが これは篠笛の譜面です。
曲は「さくら」
かぐや姫が右手に握っている赤い笛と連動しています。
(Melancholiaでは天使の右手にはコンパスの様なものを持っています)
三毛猫が赤とんぼを狙っていますが 多分捕まえる事は出来ないでしょう。
その奥には「火蝋燭」が夜の時を刻んでいます。
この三点はかぐや姫の「物思い」の時間の長さを感じさせる道具として 描きました。
いかがでしょうか。
「Melancholia」のような寓意性はありませんが
ふっとすると 気が沈み込んでしまいそうな 現代の気分を かぐや姫を借りて表現してみました。
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