「さんまい谷」の「さんまい」は「三昧」と書くのでしょうか? 仏教用語のようです、、、。
水上勉さんの「生きるということ」(講談社現代新書299)より、、、
粗末な木の橋のこと
小さい頃、母はよく、谷の奥に私をつれていって、蓑(みの)一枚ぐらいしかない小
さな田の畦(あぜ)にすわらせ、自分は胸までつかる汁田(しるた)で苗を植えていた。
この谷は暗くて、一日に陽が三時間ほどしか射さなかった。村でもきわめて貧しい谷
であった。そんな谷の口に私たちの家があった。谷には畑もあった。そこで、母は芋
や大根をつくった。ここへゆくのに、深い川が一つあった。木橋がかかっていたが、
大水のたびによく流失したので、母はよく橋普請(はしぶしん)した。自分だけの働く
谷だから、村の衆にたのめる工事ではない。宮大工の父がその日はかならずどこから
か帰ってきて、山から丸太を二本伐(き)ってきて、せまい川にさしわたし、その上へ
栗材のコロをならべて、流土を積むと、私たち兄弟にも踏ませて赤土の固い土橋にし
た。一年ほどすると土橋は古ぼけてわきに草が生え、草の下に、神社の軒タルキを
みるような、栗材の切口が白くならんだ。また、これが古くなると、栗材はくさって、
橋の裏には椎茸がいっぱいできた。母はこれを穫って私たちの弁当のサイにしてくれ
た。母は、自分一家の収穫のために谷田にわたされた橋を、その生涯に何ど架けただ
ろう。若狭はずいぶん台風のすぎる土地だから、おそらく十回ぐらいは架けたと思う
。いつ架けても、この橋は丸木の切り口の上に土のもられた、椎茸のみのる橋であっ
た。
私は、九歳でこの母に別れた。
水上勉さんの在所は、福井県若狭本郷の岡田集落です。この文章の中の「村でもきわめて
貧しい谷」のことを、水上勉さんは「さんまい谷」とも書いているのですが、集落からは離
れているようなのですが、私は現地では確認できませんでした。
調べてみましたら、関西電力のウェブサイトに、小さいのですが、生家の跡の写真を見つ
けました。(200%に拡大したので少しボケます。)
中央の平地が生家の跡だそうですが、「そんな谷の口に私たちの家があった。」とある、
「さんまい谷」の入り口の感じは、この写真からは判りません、、、。(日当たりも良さそ
うですし、、、。)
岡田集落です。
岡田集落の南のはずれ(岡田集落から見て若狭湾の反対側)にある水上勉さんの記念館
「若州一滴文庫」
「さんまい谷」その2 につづきます、、、。
追記 どこが『さんまい谷』なんでしょうか?
水上勉さんの「生きるということ」(講談社現代新書299)より、、、
粗末な木の橋のこと
小さい頃、母はよく、谷の奥に私をつれていって、蓑(みの)一枚ぐらいしかない小
さな田の畦(あぜ)にすわらせ、自分は胸までつかる汁田(しるた)で苗を植えていた。
この谷は暗くて、一日に陽が三時間ほどしか射さなかった。村でもきわめて貧しい谷
であった。そんな谷の口に私たちの家があった。谷には畑もあった。そこで、母は芋
や大根をつくった。ここへゆくのに、深い川が一つあった。木橋がかかっていたが、
大水のたびによく流失したので、母はよく橋普請(はしぶしん)した。自分だけの働く
谷だから、村の衆にたのめる工事ではない。宮大工の父がその日はかならずどこから
か帰ってきて、山から丸太を二本伐(き)ってきて、せまい川にさしわたし、その上へ
栗材のコロをならべて、流土を積むと、私たち兄弟にも踏ませて赤土の固い土橋にし
た。一年ほどすると土橋は古ぼけてわきに草が生え、草の下に、神社の軒タルキを
みるような、栗材の切口が白くならんだ。また、これが古くなると、栗材はくさって、
橋の裏には椎茸がいっぱいできた。母はこれを穫って私たちの弁当のサイにしてくれ
た。母は、自分一家の収穫のために谷田にわたされた橋を、その生涯に何ど架けただ
ろう。若狭はずいぶん台風のすぎる土地だから、おそらく十回ぐらいは架けたと思う
。いつ架けても、この橋は丸木の切り口の上に土のもられた、椎茸のみのる橋であっ
た。
私は、九歳でこの母に別れた。
水上勉さんの在所は、福井県若狭本郷の岡田集落です。この文章の中の「村でもきわめて
貧しい谷」のことを、水上勉さんは「さんまい谷」とも書いているのですが、集落からは離
れているようなのですが、私は現地では確認できませんでした。
調べてみましたら、関西電力のウェブサイトに、小さいのですが、生家の跡の写真を見つ
けました。(200%に拡大したので少しボケます。)
中央の平地が生家の跡だそうですが、「そんな谷の口に私たちの家があった。」とある、
「さんまい谷」の入り口の感じは、この写真からは判りません、、、。(日当たりも良さそ
うですし、、、。)
岡田集落です。
岡田集落の南のはずれ(岡田集落から見て若狭湾の反対側)にある水上勉さんの記念館
「若州一滴文庫」
「さんまい谷」その2 につづきます、、、。
追記 どこが『さんまい谷』なんでしょうか?
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