Light in June

文学やアニメ、毎日の生活についての日記。

ロシア文学再ブームって本当?

2008-06-15 23:06:41 | 文学
今日、6月15日(日)付けの朝日新聞朝刊に、ロシア文学が今ブームである、というような記事が載った。いちおうロシア文学を勉強している者として、この記事は見過ごせない。

それで、読んでみたのだが、ブームかそうでないかはとりあえずおいといて、取材する相手が間違ってるんじゃないだろうか。ロシア文学の研究者は一人だけで、あとは佐藤優とか、斎藤孝とか、そんなのばかりだ。前者はまだロシアに関係あるが、後者は全く関係ないじゃないか!確かにドストエフスキー関連の本を出してはいるものの、専門家じゃないし、よりにもよってなぜこの人なんだろうか。しかも、彼の発言は素人丸出し。ゴーゴリの新訳について語っているのだが、軽い落語調で訳してしまうなんて、すごすぎる、ということを言っている。ちょっと待ってくれ。ゴーゴリを落語風に訳すのはそれなりに歴史があって、なにも今回だけが突飛だったわけじゃない。ゴーゴリの語りの問題の研究はそれこそ長い歴史がある。それを踏まえてのことなのだ。今回の記事には、専門家に当たっていないから当然なのだが、そういう掘り下げがなかった。

さて、ブームかどうか、という点に話を戻すが、ロシア文学を勉強する空間に身をおいていると、あまり実感がない。確かにカラマーゾフは50万部以上売れたそうだし、他の翻訳も評判がいいらしい。でも、研究室には新入生がほとんど入ってこないし、授業も人数が少ないままだ。これは、今までロシア文学など読んだこともなかった人たちが、たまたま評判になったからという理由で本を買っている、というだけの現象じゃあないだろうか?そこから専門的な関心には結びついていない。それとも、先生の立場からは、学生とは違うものが見えているんだろうか?

もっとも、ロシア文学研究に活気が出てもあまりうれしくないような気もする。今まで通り、マイナー街道を少人数で歩いていくのが気持ちよかったりもするのだ…

雨ニモマケズ

2008-06-15 02:38:58 | 文学
ブックオフで100円で売っていたので、『雨ニモマケズ 宮沢賢治の世界』という小冊子を買った。賢治の研究書というような堅い本ではなく、賢治にまつわる様々なことを紹介してある本だ。だけども、少々記述が簡略すぎるし、突っ込んだ考究もない。満足できる本ではなかった。

ところで、賢治の書いたものでは「永訣の朝」が一番好きだ。実は高校の授業で習ってはじめてこの詩のことを知ったのだが、普段の読書の中で知っていたら、ここまで好きにはなっていなかったかもしれない。やはり、授業という精読を求められる環境の中で、じっくりとこの詩に向き合えたのがよかったのだと思う。

賢治の書いたものはそれなりに読んでいるが、題名でおもしろいのは「ペンネンネンネンネンネネムの伝記」だ。ちょっと声に出して言ってみよう。笑ってしまうから。この題名からも察せられるように、賢治は言葉への感性が人並みはずれたところがあったようだ。下手な人がやれば単調になってしまう自然描写も独特で味わい深い。何より擬態語がうまい。有名なのは「どっどどどどうどどどうどどどう」だろう。

賢治の「銀河鉄道の夜」はアニメ化されていて、そこではカムパネルラやジョバンニが猫の姿をしている。抒情的演出、と言われていて、なかなかよくできている。また、「セロ弾きのゴーシュ」は高畑勲の手によってアニメ化されている。賢治童話というのは、アニメ化したい欲望に人を駆り立てるものなのかもしれない。

ちなみに、賢治のふるさと花巻(岩手県)へ行ったことがあるが、当然、宮沢賢治記念館へも行った。イーハトーブセンターなどもあり、見て回るのにたいそう時間がかかった。バスに乗る都合で、全て見ることができなかったのが残念だ。