Light in June

文学やアニメ、毎日の生活についての日記。

初めてロシア文学を読む君へ(1)

2008-10-14 23:26:02 | 文学
これからロシア文学を本格的に読んでみよう、と思っている人向けに書きます(いるのか?)。想定年齢はだいたい18歳前後。そうではない年齢の人でも、ロシア文学に不案内だったら、ぜひ参考にしてみてください。ただ、小学生にはちょっと難しいかも…

まず何から読むべきか、と迷ってしまう人は多いはずです。知っている名前はドストエフスキーとかトルストイとかで、二人ともものすごい大長編を書いているから、どうしよう…

そこで、試しにドストエフスキー『罪と罰』を読んでみることをお薦めします。まず、ロシア文学の空気に慣れることが肝心です。この小説はたしかに長いですが、一般の人がロシア文学に対して抱くイメージをほぼ完全に備えており(長さの点でも)、「ロシア文学を読んだ」という気にさせてくれるので、これからどっぷりロシア文学につかる準備になるのです。

次へのステップは、実は二つあります。
まず、『罪と罰』にすっかりはまってしまって、ドストエフスキーの小説をもっと読みたい、という人のためのステップ。そういう人は、もうどんどんドストエフスキーを読んじゃって下さい。ただし、どうせ読むのなら、順番にこだわった方がいいでしょう。最初に『貧しき人々』を読みます。それから『二重人格』、『死の家の記録』、『地下室の手記』を読みます。そして『白痴』『悪霊』『未成年』『カラマーゾフの兄弟』を、なるべくこの順番通りに読みます。もっとも、『未成年』は入手しづらい場合があるので、そのときは飛ばして構いません。『虐げられた人々』『永遠の夫』『賭博者』は、『貧しき人々』と『カラマーゾフの兄弟』の間だったらいつ読んでもいいでしょう。もっともっと読みたい人は、福武文庫の『ドストエフスキー短編集』(上下)を読みます。それでも足りない人は、全集を読みます。そこには「作家の日記」が収められています。なお、『白夜』はコーヒーブレイク程度とみなし、いつ読んでもいいでしょう。
念のために言っておきますが、この順番で読まなくてはいけない、という規則はありません。上記はあくまでぼくのお勧めの順序です。

さて、『罪と罰』にピンと来なかったという人のためのステップ。ドストエフスキーを読み終えた人のためのステップでもあります。プーシキンはいかがでしょう。ロシア最高の文豪です。とりあえず『オネーギン』を皮切りに、『スペードの女王・ベールキン物語』『ボリス・ゴドゥノフ』『大尉の娘』と読み進めていきます(いずれも岩波文庫)。新潮文庫の『スペードの女王』はあまりお薦めできません。というのも、「スペードの女王」以外の収録作品は、物語としてそれほどおもしろくないからです(おまけに未完)。また、岩波文庫の『プーシキン詩集』が入手できれば、それを読んでおくのもいいと思います。更に、群像社から出ている『青銅の騎士』はぜひ読んでおきたい本です。「青銅の騎士」はプーシキンの代表作だから、というのもありますが、ここで群像社という出版社を知っておくことも大事だからです。早く知るに越したことはないでしょう。群像社は、ロシア文学専門の出版社で、これからロシア文学を本格的に読んでいくのなら、いずれとてもお世話になるところです。

さあ、プーシキンを読んだ後は――
でも、これ以上書くと長くなりすぎてしまうので、また次の機会に。今度はトルストイとチェーホフ、ゴーゴリについて書くと思います。

最後に蛇足で付け加えておきますが、一人の作家をこんなに読み込むのは、彼らがロシア文学において非常に重要な作家だからです。また、この記事はロシア文学を「本格的に」読んでいくことを目指している読者を想定して書いているので、ちょいちょいロシア文学を齧る、という読者を念頭には置いていないからです。でもそういう読者向けのロシア文学案内があってもいいですけどね…

ジーニアス・パーティ・ビヨンド

2008-10-14 00:42:00 | アニメーション
見てきました。『ビヨンド』は前作『ジーニアス・パーティ』の続編的映画。
妄想炸裂の激しいアニメーションでした。

『ビヨンド』は、前作同様オムニバス形式のアニメーションで、「GALA」「MOONDRIVE」「わんわ」「陶人キット」「次元爆弾」の五編から成ります。

前作よりも楽しめました。また、アニメーションの表現がパワーアップしている気がします。まあ、監督はダブってませんけど。

「GALA」は、少し物足りない気もしますが、なんでもないことを音楽も含めた演出で力任せに乗り切っている、という印象を受けました。最後にオチが付きます。

「MOONDRIVE」はダークなタッチで、話としては今回の五作で一番まとまっているのですが、全体的にまあ可もなく不可もなく、といった感じ。

「わんわ」。この作品はまさしく妄想が爆発していて、色彩の洪水で、酔いそうになります。ほとんど直線というものがなく、ぐにょぐにょと曲がりくねった曲線で絵が描かれているため、見ていてなんだか落ち着きません。また、キャラクターに輪郭線がなく、背景のモノに溶け込んでいます。ふつう、黒か茶の輪郭線があるのですが、ないというのは、ずいぶん思い切ったことをやったな、と思います。それに、『ポニョ』で話題になった「絵本のようなタッチ」で描かれていて(曲線の多用もそう)、今作の中でも特に実験的な作品です。なお、曲線曲線と言っていますが、そういう印象だった、ということで、実際に全部曲線だったとは保証しません…あしからず…

「陶人キット」は、まるで長編映画の導入部分のよう。この設定で、2時間を越えるドラマを描けると思います。それだけに、ラストがあまりにもあっけなくて、仕方ない気もしますが、やはり残念。ちょっとホラーちっくでもあり(なんとなく今敏を連想)、「あの奇妙な物体」の質感もよくできていたと思います。

最後の「次元爆弾」は、「天才」と言われる森本晃司の作品ですが、ちょっと言っちゃっていいすか、意味が分かりません。とはいえ、とても印象深いアニメーションです。何がなにやら訳が分からないのですが、人の歩く動作だけで「魅せる」ことに成功しており、映像自体も詩的。ま、意味は分からないんですけどね。

あまり褒めませんでしたけど、『ビヨンド』は全体を通して、アニメーション表現が非常に優れており、傑作と言っていい。個人的には前作よりもはるかにグレードアップしていると感じています。4℃の底ぢから、見せてもらいました。