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封印された不法妊娠 ~引き揚げ 70年に刻む墓標~

2015年09月04日 19時12分46秒 | 取材の周辺

 北海道旅行から帰ってくると、郵便物の中に福岡放送局のプロデューサーから送られてきた2枚のDVDが入っていた。

一つは、番組名「封印された不法妊娠 ~引き揚げ 70年に刻む墓標~」で、終戦記念日に福岡放送局で60分番組で放映されたらしい。もう一つはNNNドキュメント、「極秘裏に中絶すべし~不法妊娠させられて~」で、30分番組になっていた。こちらは8月9日、全国放送で深夜に放送されたらしい。

 このタイトルを見て、違和感を拭えず、「不法妊娠」は「不法中絶」の間違いではないか、と、思った。しかし、DVDを見て納得した。ソ連兵などによる性被害を受け、望まぬ妊娠をしたケースを当時「不法妊娠」と呼んでいたのです。

 拙稿「年表:中国帰国者問題の歴史と援護政策の展開」15頁に以下のような記述がある。

「(注4)コロ島を出港する船の中には女性専用の相談室が設けられていたという⑮。 『引揚援護の記録(続・続々)』(昭和25・30・38年)では、検疫所内に特殊婦人相談 所があったことへの言及がある。「上陸地患者状況調」の傷病名欄の妊娠の名目で 診察を受けた者6,386名、内入院したもの2,157名。別の資料「引揚婦女子医療救 護実施要領」によると、6つの上陸港の最寄りの国立病院及び診療所に第1次婦女子病院が設けられ、600床を越える受け入れ体制が整えられて「諸種の事情のため 正規分娩不適切者には、極力妊娠中絶を実施すること 」とされていた⑮。しかし、当時は堕胎罪が存在していた。」

この論文を書いていた当時、このことをもっと調べたくて、大学院に聴講生でいらしていた日本看護師会会長さんに伺ってみた。彼女は広尾日赤病院の図書室(資料室?)に行ってみたら何かあるかも知れないと教えてくれた。資料をあさったが、「上陸地患者状況調べ」「引揚婦女子医療救護実施要領」で数字を示すことしか出来なかった。このことがずっと気になっていたので、福岡放送局のプロデューサーからの問い合わせに、私なりにどんな番組が出来上がるのか、多くの期待を寄せていた。

 やっと日本に帰れた引き揚げ地で、何故そのようなことが行われたのか、誰の命令で、誰が、どのようにして行ったのか?知りたいと思っていたことが、ご健在の方の証言ビデオと今は亡き方の証言ビデオ、現存する隠れた資料なども駆使して、概ねよい番組になっていたと思いました。

 もし、可能であれば(不可能であることはわかっているのですが)、医師や看護師、相談員(の遺族の証言と相談記録)だけでなく、当事者へのインタビューがあったらいいと思いました。当時の価値観では、仕方のなかったことなのかも知れませんが、「大和民族の純血を守る」という考えに、否応なく従ったのか、あるいは、今後の生活再建のために決断したのか、それは本人の意思に基づいてのことなのか、または、自分の意思に関係なくすべての妊婦は中絶手術をさせられたのか。事実は何処にあるのか、知りたいところです。テレビ局の調査力に期待したいところでもあります。

 佐世保や福岡だけでなく、舞鶴、新潟、神戸、横浜などでも当時の事情を知るご存命の医師や看護師さんがいらっしゃるかも知れません。そしてそこにも多くのドラマが存在することでしょう。しかし、それももう限界に近づいていると痛感します。この事実を伝える生き証人はいなくなってしまって、この事実が歴史の塵と消えてしまうのは、時間の問題です。ギリギリセーフでいい番組ができたととても喜んでいます。同じ女性として、彼女達の悲しみや苦しみに光を当て、多くの方に知っていただき、二度と戦争に加担することのない未来を希求したいと思います。

 


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1 コメント

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NNNドキュメント (藤沼敏子)
2015-09-13 10:38:51
このページを読んだ友人から、DVDを見たいという問い合わせがありました。外付けのハードディスクを落として修理中なので、ネットで調べてみましたら、ありました。

以下で見られます。ただし、何時消えるかわかりませんので、アドレスを二つ記しておきます。

「NNNドキュメント 2015年8月9日 150809 極秘裏に中絶すべし 不法妊娠させられて」

https://www.youtube.com/watch?v=qYzaf4mubTY

http://bit.ly/1JTzlNB
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