(きの)「琵琶湖が見たい」
娘が日曜に滋賀県に用事があるというので、ついでに行ってみようと思った。
シジミはいるのか。どんな大きさの湖なのか。
見てみたい。
しかし計画を練っている途中で(予報)「災害級の大雨」 これはどうしたものか。
電車は動いているようだが、朝になって迷いながら出発。
JRの比叡山坂本駅に着いて案の定、大雨。
娘は用事のある鳥居の向こうの家へ。
その間に湖を見に行こうっと。
まったく見えない。
灰色の視界にけむる暗い水平線が、かろうじて見えるだけだった。
山にも白い霧がかかり、どれが比叡山かわからない。
10:10 am
強風で傘があおられ逆さまに。
戻そうとして力をこめたら、はずみで右手の親指が鼻の穴に「グサァッ!!」
非常に痛い。
後でこすったらザクロ石の結晶のような粉が取れた。
鼻血だ。
去年は地震、豪雨、猛暑、台風にもれなく遭遇し、災害がこっちに来ているのか、
それとも自分から災害に向かって行っているのかわからなかったが、
どうやら、半分ぐらい向かって行っているらしいということがわかった。
10:30
気を取り直して山の方へ。
やみくもに歩いていると、雨で何もすることがない観光客達が、
宿の傘を借りて土砂降りの中ぶらり街歩き。
ヒマなのか話しかけてくる。
(男)「日本人ですか?」
なぜそう思った!!
最初に聞くことがそれかい。
11:00
京阪・比叡山坂本駅に到着。
典型的な山の登山口のような小さな駅だ。
券売機の屋根の下に陣取り、雨が吹き込むホームやレトロな電車の発着を眺める。
と、そこへ大急ぎでやってきた(変な虫)「カサカサカサ・・・」
ロータリーの方から猛スピードで改札に入って行った。
(きの)「乗客?」
何だったのだろう、今のは。
初めて見た。ものすごく大きかった。
たとえて言うなら、この世で最も苦手なム〇デが怒ってバカっと変身し、
変な独特のヘビ革の模様入りミノカサゴになって、
走行用に胴体を Lift up して走り出したような姿。
あまりに恐ろしかったので、見間違いではないかと思い込もうとしていたら、
雨が増して駅から出れなくなった。
地獄もかくやという気分で、旅のお供に持ってきた残り少ないM&Msクリスピーを少しずつかじる。
ここには、あのエイリアン装甲車がうじゃうじゃいるのだろうか。
このまま電車に乗ったら、あいつも乗っているのか。
ふと足元を見ると、普通のダンゴムシでさえ独特のあの模様入り。
お前も仲間か!
11:30
一人でパニックになっていると、電車が着いて乗客が降りてきて、
大きな荷物を持った小柄な婆さんが、
駅員に「電話を貸してくださいませんか」 聞いている。
(駅員)「電話はありません」
駅に電話がないわけないだろう。ケチケチしないで貸してやれよ。
客が順々に出て行き、誰もいなくなった構内で(婆)「メソメソ」 (雨)「ザアァァァ」
(きの)「どうしました」
大津で旦那さんを入院させた後で車を修理に預けて、
娘さんが住む比叡山までやってきたが、気が動転してどこかで携帯を落としてしまったと。
娘さんに連絡が着けば、迎えに来てもらえるらしい。
スマホを貸したら、やたらに恐縮しているので
(きの)「自分も旅先で人に親切にしてもらったことがあるから。いいのですよ」
できるだけ虫以外のことを考えていたい。
(きの)「今日は雨で琵琶湖が何も見えなかった。はっはっは」
などと話していると迎えが来た。
別れ際に、電話代と言って千円札を小さく畳んだものを握りこませてきて
(きの)「ちょっこんなに話してないでしょう!!」
(婆さん)「ううん。ダメ」 飛ぶようにして走り去った。
用事も終わり(娘)「お待たせ」 (きの)「長かった」
この2時間にいろいろあった。
その後、なぜか急に空が晴れ、JRで遠回りしてくっきりとした琵琶湖を見て帰った。
京阪は、なんだか色々な理由で乗る気がしなかった。
落語風に言うと、あの婆さん仙人だったのかな。
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