認知症の早期診断 介護並びに回復と予防のシステム

アルツハイマー型認知症は、廃用症候群に属する老化・廃用型の生活習慣病なので、発病を予防でき、早期治療により治せるのです

アルツハイマー型認知症のチェックリスト(大ボケ)Q/A Room(A-51)

2012-07-19 | 認知症に対する正しい知識のQ&A

Q:67歳になる私の父は、とても几帳面な上に細かいことにばかり目が向く性格。そのため、人付き合いが苦手です。休日もこれといった趣味や遊びを楽しむこともなく、平凡に大過なく地方公務員を勤め上げ、定年退職しました。退職後は、毎日が休日状態の日々を過ごしていました。母が心配して、ゲートボールにでも行って、遊び友達を見つけたらと言っても、「馬鹿とは遊べん」とか言い、耳を貸しませんでした。朝食の後は、新聞を読んで、お茶を飲んだらテレビを見るだけ。昼寝の後は、近所のスーパーで好きな甘いものを買ってきたら、夕ご飯。夕ご飯の後は、水戸黄門などを見て、風呂に入ったら早々と就寝。判で押したような退職後の毎日でした。

母は、持病で膝に痛みがあり、買出しに行くのも少し不便なので、1年前から毎週土曜日には私が買い出しや家事を手伝いに行っています。父は、昨年の夏ごろから言動におかしな点が目につくようになりました。身の回りのことも手を出してあげないとうまくやれません。失禁があるだけでなくトイレもよく汚しますし、服の着方も変で、ズボンを頭からかぶろうとしたりします。昼か夜かは分かっているのですが、今の季節が何なのかわかっていない様子です。先日私が尋ねたら、「いらっしゃい。どちらさん?」と言われて悲しい思いでいっぱいになりました。これってもう認知症ですよね?

              

A:60歳を過ぎた高齢者が、生き甲斐なく、趣味なく、交遊なく、運動もせず、目標もない毎日、ナイナイ尽くしの「単調な生活」が継続する日々を過ごしていると、出番が極端に少なくなった脳の機能が、廃用性加速度的機能低下を起こしてきて、「アルツハイマー型認知症」を発病します。但し、廃用性の機能低下が原因で発病する老年性の「アルツハイマー型認知症」は、遺伝子の異常が原因で発病し極めて短期間に症状が進行していく若年性の「アルツハイマー病」とは異なり、症状が何年もかけて、徐々に段階的に進んでいくのが特徴なのです。

最初に回復容易な「小ボケ」の段階があって、次いで回復可能な「中ボケ」の段階があって、最後に回復困難な「大ボケ」の段階がくるのです。昨日まで正常だったお年寄りが、一晩寝たら、突然自分の家が分からなくなったり、同居している孫娘の顔も分からなくなったりはしないのです。「キッカケ」を契機にして、ナイナイ尽くしの「単調な生活」が日々継続するようになって、「小ボケ」の期間が「キッカケ」の発生から0.5~3年、「中ボケ」の期間が4~5年、6年経つと「大ボケ」になるのが大原則なのです。だからこそ、東日本大震災を経験した高齢者の状況を、私たちはとても心配しているのです。「不活発病」などと言う訳の分からない病名などつけて、放置しないで欲しいのです。(「キッカケは、ここをクリック」

5月2日のブログ(N-35)の解説で、大量且つ構造的な発病を予告した通りに、東日本大震災の主たる被災地である岩手県、宮城県及び福島県の高齢者を対象として、極めて多数のアルツハイマー型認知症の発病(新規の発病と症状の重症化)が確認されていることが、新聞でも大きく取り上げられるようになってきました。但し、その新聞に登場した専門家は、それを異常な現象だと捉えていて、構造的なもの言い換えれば、アルツハイマー型認知症発病のメカニズムにかかわるものだと言う認識を持っていないのが極めて残念なことです。アミロイド・ベータやタウ・蛋白が発病の主犯であるとする「学説の主張」は間違っているのです。東日本大震災の被災地の高齢者の状況について、今後数年間にわたって大規模な調査を実施すれば、その実態から私達の説が正しいことが、「疫学的に証明」されることになるはずです。(N-35は、ここをクリックしてください

              

認知症の末期の段階であり、私達の区分で言う回復が困難な「重度認知症」(大ボケ)の段階は、「前頭葉」(前頭前野を言うものとする。以下、同じ)を含む脳全体の働きが「中ボケ」(N-50で説明)のときよりも更に異常なレベルに加速度的に衰えてきています。然し、衰えてきて司令塔の「前頭葉」の認知機能が殆ど働かなくなっているとはいえ、左脳と右脳と運動の脳の働きは未だある程度残っています。

重度認知症(大ボケ)の段階になると、脳全体の司令塔の役割をしている「前頭葉」が寝たきり状態になって殆ど機能していないのです。前頭葉の「三本柱」の意欲、注意の集中力及び注意の分配の機能が殆ど働かないので、いろいろな場面で要求される「認知機能」自体が殆ど働いていない状態なのです。そのアウトプットが、「大ボケ」の症状となって現れてくるのです。直前に食事をしたことさえ覚えていない「重度の記憶障害」の症状などは、その典型です。脳の機能レベルは3歳児以下のレベルであり、これまでの人生で何度となく体験して体に浸み込んでいるようなテーマや会話には、或る程度の対応ができるのですが、体に浸みこむほどの経験がないテーマや通常レベルでの会話には殆ど対応できなくなっているのです。

       

但し、4歳児以下のレベルといっても、症状が進行するにつれて、「脳機能年齢」は急速に0歳に向かって衰えて行くことになり、同時に「症状」が重くなっていきます。アルツハイマー型認知症は。脳がもたないのに、身体がもつのが特徴なのです。そのため、症状が進行するにつれて左脳も右脳も機能が急速に衰えて行くのに対して、身体だけは持つのです。重度認知症(大ボケ)は、MMSの換算値で14点~10点迄の人と10点を切った人とでは、全く別の視点からの介護対応が必要になると考えてください。

認知症の専門化が気づかず見落としていて、施設の職員も理解していないのが、「脳の機能レベル」のアウトプットが「症状の程度」として現われてくるものだという点です。状況に応じた会話ができないと言うことは、相手方の話の内容を理解できていないと言うことなのです。施設の職員が、「大ボケ」レベルのお年寄りに、話が一向に通じないのに、一生懸命話しかけている姿をテレビでよく見かけますが、この点を理解していないからだと思います。

             

脳の司令塔の「前頭葉」が殆ど働かなくなる結果、意欲、注意集中力及び注意分配力が殆ど機能しないので、思考にかかわる認知とその保持及び想起が極めて不完全なレベルでしか機能しない「重度認知症」(大ボケ)は、自分の身の回りのことをする「セルフケア」にも支障が出てきます。

食事をしたり、服を着たり脱いだり、お風呂に入ったり、トイレの後始末をしたりといった、身の回りのことも自分でできなくなり、日常生活に介助が要るようになるのです。「大ボケ」レベルになると、下図に見るように、「前頭葉」は殆ど働かなくなってきているのがお分かりだと思います(横軸が、「前頭葉」の働き具合を示しています)。

              

認知症の専門家と言われる精神科医達は、「DSM-4」の規定を金科玉条と考えているので、この段階にまで「脳の働き」が衰えてきて(その結果として、重度の記憶障害や失語や失行や失認などの重い「症状」が出てくるようになって)、「重度認知症」の段階になって初めて、「アルツハイマー型認知症」だと診断しているのです。それより軽い段階、私達の区分で言う「軽度認知症」や「中等度認知症」の段階は、「不活発病」や「老化現象」として見落とされ、放置されているのが現状なのです。

               

 「大ボケ」レベルでの「中核的な症状」の特徴を挙げると、次の3つです。

「時の見当識」:今日が何年何月何日なのか、今の季節は何なのか、今の時刻はいつ頃なのか(朝なのか、昼なのか、夜なのか)が分からなくなるので、夜中でも歩き回ったり、騒いだり、外に出て行こうとしたりするようになります。

「所の見当識」:自分が今居る場所がどこなのかが分からなくなるので、自分の家であることも分からなくなり、自宅に居ても落ち着かなくなります。何かの拍子に家の外へ出ると、自宅がわからないので、徘徊し迷子になります。

「人の見当識」:「大ボケ」の初期のころは、家族の名前を正確には言えない程度ですが、中期には対面している家族の顔も分からなくなります。それを過ぎると、同居している家族の名前も顔も分からなくなります。

               

以下に、「二段階方式」の判定基準である「大ボケ」に特有の症状を列記しておきます。同居のお父さんに該当する症状がいくつあるか、チェックしてみてください。3つ以上に該当していると、「大ボケ」であることが疑われます。基本的に、症状が軽いものから重いものへと並べてあるので、この先出てくる症状の参考になるはずです。

□ 着ている服を脱ぎたがらず、便で汚れた下着をそのまま平気で着ている

□ 風呂に入るのを嫌がる

□ 服を正しく着られず、ズボンを頭からかぶったり上着に足を通したりする

□ 家族の名前を間違えたり、子供を配偶者と間違えたりする

□ 食事やあいさつをしたことなど直前に起きたことをすぐに忘れてしまう

□ 家庭生活に全面的な介助が必要(食事、入浴、排泄)

□ 自宅に居ても落ちつかず、出て行きたがる

□ 大小便を失敗しても、後の処置ができない(大小便で汚れた下着を、押し入れなどに隠すようなこともあります)

□ 自宅の方向が、たびたびわからなくなる

□ 同居している家族の名前も顔もわからない(家族かどうかも分からない)

□ 今は昼なのか夜なのかがわからなくて、夜中に騒ぐ(夜中に起きてくる、家中の電気をつけて回る、会社に行くとか田んぼに行くとか言い張る)

□ 痛んだものを平気で食べ、食べ物でないものを口にする

□ 独り言や同じ言葉の繰り返しが目立つ

□ 誰も居ないのに「人が居る」と言ったりする

             

 注)本著作物(このブログA-51に記載され表現された内容)に係る著作権は、(有)エイジングライフ研究所に帰属しています。

    エイジングライフ研究所のHPここをクリックしてください)

 脳機能からみた認知症の初期の見わけ方(IEでないとうまく表示されません)

 

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