認知症の早期診断 介護並びに回復と予防のシステム

アルツハイマー型認知症は、廃用症候群に属する老化・廃用型の生活習慣病なので、発病を予防でき、早期治療により治せるのです

アルツハイマー型認知症の症状が進行(悪化)する原因とその特徴 (B-05)

2014-03-01 | アルツハイマー型認知症の進行とその特徴

    

  日も月も 季節も知らぬ わが妹は

    明日は我が身と じっと手を見る(5)  

                                                                     By  kinukototadao

 ○アルツハイマー型認知症の症状の悪化と脳が衰えていく順序

「アルツハイマー型認知症」の場合は、昨日まで正常で、趣味や遊びや人付き合いを楽しめていたお年寄りが、一夜明けたら「服を自分で着られなかったり」、「自分の家が分からなかったり」、「家族の顔が分からなかったり」は、しないのです。ここに取り上げたような「症状」は、「アルツハイマー型認知症」の(回復が困難な)末期の段階のみに見られる症状(私たちの区分で言う「重度認知症」の段階の症状)であって、ここまで症状が進んでくる(悪化してくる)もっと前の軽い段階があるのにそれが見逃されているのです(回復が容易な「小ボケ」の段階及び回復が未だ可能な「中ボケ」の段階を認知症の専門家とされる人達が見落としているだけ)。

 認知症の大多数90%以上を占めていて、専門家達から、「原因も分からないし、治らない」とされている「アルツハイマー型認知症」(「老年性アルツハイマー病」とも言う)というタイプの認知症は、「何年もかけて、症状が徐々に、段階的に進行していく」(「段階的症状」を示す)のが特徴なのです。特定の遺伝子に生まれつき異常がある人だけが発病する「狭義のアルツハイマー病」とは、進行度合いが全く違うし、発病のメカニズム自体も全く異なるものなのです。

精神科医が「アルツハイマー型認知症」の「初期の症状」と言っているものは、私たちの区分で言う「重度認知症」(大ボケ)の段階の中での初期の症状(MMSの換算値で14~10点のレベル)のことなのです。本当の意味での初期の段階(「小ボケ」と「中ボケ」)ではなくて、「大ボケ」の段階の中での初期のことを言っているに過ぎないので、そこまで「前頭葉」を含む脳の機能レベルが衰えてきていると、「せっかく見つけても、治らない(脳の機能を正常なレベルに回復させることができない)」ことになるのです。治らない段階で見つけて何の意味があるのかと言いたくなるのです。回復させることが可能なもっと軽い段階の「小ボケ」や「中ボケ」の段階の症状(本当の意味での「初期症状」)については、「認知症のレベルと回復の可能性」に関する脳の機能レベルとリンクしたデータの開示も含めて、これまでのこのブログで既に、詳細な説明をしています。

    

「前頭葉を含む脳全体の働き具合」(脳の機能レベル)とリンクした「認知症の症状」(段階的症状)についての極めて多数に上るデータの解析結果から、「アルツハイマー型認知症」は、加齢による脳の老化(60歳を超える年齢の「高齢者」であること=正常老化による「前頭葉」の機能低下)を「第一の要件」とし、「前頭葉」(前頭前野のことを言うものとする。以下、同じ)を含む脳を使う機会が極端に減少するナイナイ尽くしの「単調な生活」の継続による廃用性の機能低下「第二の要件」として、両者の「相乗効果」により、「脳機能の加速度的な機能低下」が惹起され、「前頭葉」を含む脳の機能が異常なレベルに低下していくこと(機能の低下と退化)が直接の原因で認知症の症状が発現し、或いは重症化していく病気だと私たちは考えているのです。

言い換えると、「アルツハイマー型認知症」というタイプの認知症は、60歳を超えた年齢の「高齢者」だけを対象として発症する「廃用症候群に属する単なる生活習慣病」であると私たちは考えているのです。なお、ここで私たちが言う「生活習慣」とは、脳の健康という視点、「脳の使い方」という視点と意味での「生活習慣」を言うことに注意してください。従来型の、運動や食事という視点で言う身体の健康を維持するための生活習慣とは全く異なる視点と意味で使っている、皆さんに新たな視点を提供し、問題を提起する意味で使っているのです。

           

私たちが区分する「軽度認知症」(小ボケ)の段階(私たちの基準で言うところの「かなひろい」テストが不合格で、MMSの換算値が24点~30点)では、左脳、右脳及び運動の脳の働き具合は未だ正常なレベルにあるのですが、脳全体の司令塔の役割をしている「前頭葉」の働き具合だけが、もはや正常なレベルにはなくて「異常なレベル」に衰えてきているのが特徴なのです。「アルツハイマー型認知症」の場合は、このように、「前頭葉」の働きだけが衰えていくことから認知症の初期の症状が発現してくるのが特徴なのです。

米国精神医学会の診断基準である「DSM-4」の規定のように、「失語」、「失行」、「失認」という末期の「重度認知症」の段階の更に終盤の段階にならないと発現することがない極めて「重度の症状」及びそれとリンクした極めて重度の「記憶の障害」(ex.直前に食事をとったことさえも忘れている、覚えていられないような症状がよく挙げられます)を診断の要件としていたのでは、このような「本当の意味での初期の段階」の症状を見逃してしまうことになるのです。

  

なお、この「軽度認知症」(小ボケ)の段階では、脳の器質的な変化は未だ起きてきていなくて、「機能レベルの異常な低下」(機能の低下)が起きてきているに過ぎないのです。理由は、この初期の段階で発見できれば、「脳のリハビリ」(脳の活性化を目的とした、脳の使い方としての「生活習慣」の改善)によって、脳の機能は「正常な機能レベル」に比較的容易に回復させることが出来るからです。

更に、「中等度認知症」(中ボケ)の段階(私たちの基準で言うところの「かなひろい」テストが不合格で、MMSの換算値が15点~23点)では、左脳と右脳の働き具合も異常なレベルに衰えてくる上に、司令塔の「前頭葉」の働き具合は、「軽度認知症」(小ボケ)のときに比べて更に異常なレベルに衰えてきていることに注意が必要です。なお、このレベルでも、MMSの換算値が20点以上を確保できている「中等度認知症」(中ボケ)の前期までの段階であれば、脳の器質的変化は未だ起きてきていなくて、機能レベルの異常な低下(機能の低下)が起きてきているに過ぎないのです。理由は、この段階で発見できれば、個別の周密なものではなくて集団生活レベルでの「脳のリハビリ」によってでも、「前頭葉」を含む脳の機能を正常なレベルに回復させることが未だ可能だからです。

ところが、MMSの換算値が15点から19点までの「中等度認知症」の後期レベルにまで脳の機能が衰えてくると、個別での頻度と密度の濃い「脳リハビリ」を取り入れることにより、回復させることが未だ可能ではあるのですが、家族を含めた支援態勢と相当な条件下での脳リハビリの実施という困難が伴うことになるのです。

  

そして末期の段階である、「重度認知症」(大ボケ)の段階(私たちの基準で言うところの「かなひろい」テストが不合格でMMSの換算値が14点以下)では、左脳、右脳と運動の脳の働き具合が「中等度認知症」のときに比べて更に異常なレベルに衰えてきている上に、司令塔の「前頭葉」の働き具合は、「中等度認知症」のときに比べて更に加速度的に機能が衰えてきていて、殆ど機能しなくなっているのです。従って、MMSの換算値が14点から10点へと低下してくるにつれて、徐々に器質的変化が現れて来ると考えられるのです。特に、失語や失行や失認などの症状が発現するようになる段階、MMSの換算値が9点以下のレベルでは、顕著な器質的変化が起きてきていると考えられるのです。その理由は、この末期の「重度認知症」の段階では、脳のリハビリによる機能の回復の効果が殆ど期待できなくなってしまうからです。  

「アルツハイマー型認知症」の専門家といわれる学者や研究者や医師たちは、前述した「DSM-4」の規定に依拠して判定(診断)を行う為に、回復させることが困難なこの末期段階の「重度認知症」(大ボケ)の段階だけを捉えて「アルツハイマー型認知症」であると判定(診断)しているのです。そのため、本来は機能レベルの異常な低下(~退化)が本質なのに、器質的変化を起こしていることが「アルツハイマー型認知症」の本質であると本質を見誤っているのです。

  

〇 「アルツハイマー型認知症」の発病原因に関する種々の学説(「仮説」)

「アルツハイマー型認知症」は、「前頭葉を含む脳全体の働き具合」の直接のアウトプットが認知症の「症状」の程度・態様として発現してくるだけなのです。学説が主張しているような、失語や失行や失認などの極めて重度の症状が発現するまでに「前頭葉」を含む脳全体の機能が衰えてしまい、且つそうした期間が何年間も続いた人の死後の脳の解剖所見に挙げられる3つの特徴である「老人斑」の生成と関わりがあるアミロイド・ベータが原因でもないし(アミロイド・ベータ仮説)、「神経原線維変化」と関わりがあるタウ蛋白が原因でもないし(タウ蛋白仮説)、「脳の委縮」が原因でもない(脳の委縮仮説)のです。

私たちが3つに区分する「前頭葉を含む脳全体の機能レベル」(「小ボケ」、「中ボケ」及び「大ボケ」の段階)を発症の直接の原因として、そのレベルに対応して、3つの段階に区分されるその機能レベルに特有な症状としての「段階的な症状」(「小ボケ」の段階の症状、「中ボケ」の段階の症状及び「大ボケ」の段階の症状)が発現してくるだけなのです。

「脳の機能レベル」が「症状」の程度態様と直接リンクしている訳なので、「前頭葉」を含む脳全体の機能レベルの異常な低下(機能の低下/退化)がもっと軽い段階から、症状の進行を段階的継続的に変化移行していくものとして理解し捉えて、データを集積し分析することが、的確な判定や診断に必要不可欠となるのです。この世界では世界で最高の権威があるとは言え、定義の内容自体に重大な誤りがある「DSM-4」の「診断基準」を金科玉条としていたのでは、いつまで経っても、「アルツハイマー型認知症」の原因を解明することも、的確な診断を行うことも、回復させることが可能な本当の意味での初期の症状を見つけることもできないというのが専門家達に対する私達からの問題提起なのです。

   

〇 アルツハイマー型認知症の本当の意味での「初期症状」とは

  「アルツハイマー型認知症」の初期(最初)の段階であり、私達の区分で言う「軽度認知症」(小ボケ)は、左脳と右脳と運動の脳のいづれもが未だ正常な機能レベルにあるのですが、脳全体の司令塔である「前頭葉」の働きだけが異常なレベルに衰えてきているのです。その場合、「前頭葉」の機能のうち最も重要で基礎的な機能である「三本柱」の機能としての「意欲」、「注意の集中力」及び「注意の分配力」の機能が的確に発揮されなくなるのです。この「三本柱」の機能の衰え具合の相乗効果としての「前頭葉」の各種機能の働き具合い、具体的には、自発性、観察、分析、考察、洞察、推理、理解、興味、関心、発想、企画、計画、創意、工夫、予見、シミュレーション、修正、整理、機転、抑制、忍耐、感動及び判断など、「前頭葉」の高度な各種の認知機能が発揮される対象となる情報の処理や思考の際の「認知度」及び「発揮度」が、「三本柱」の機能の衰え具合に左右されているのです(「前頭葉」の各種の機能が発揮される上での「二重構造」の問題)。その結果、「小ボケ」の段階では、この「三本柱」の機能が異常なレベルに衰えてきていることの機能障害を示す症状が「小ボケの症状」として特徴的に現れてくるのです。私たちの意識的な世界での思考や行為や言動や行動はすべて、脳全体の司令塔である「前頭葉」が、左脳、右脳及び運動の脳を支配しコントロールしつつ、常にそれらと協働して実行されているので、左脳、右脳及び運動の脳のいづれもが未だ正常な機能レベルにあろうとも、司令塔の「前頭葉」の機能が異常なレベルに衰えている限り、そのアウトプットは異常なレベルのものになってしまうのです。言い換えると、「小ボケ」の段階で発現してくる症状は、老化現象ではなくて、認知症の症状なのです。

 「アルツハイマー型認知症」としての「認知症の症状」が現れてくる最初の段階である「軽度認知症」(小ボケ)の段階で認められるそれらの症状は、「DSM-4」が言うようなレベルの重度の「記憶障害」の症状とは全く関係が無いのです。「意欲や注意の集中力や注意の分配力」など、「前頭葉」の機能の根幹(基礎)をなしていて、「前頭葉」の各種の高度な機能の「認知度及び発揮度」を左右している「三本柱の機能」が異常なレベルに衰えていることが、「アルツハイマー型認知症」の初期症状として直接現れてくるだけなのです。つまり、私たちの区分で言う「軽度認知症」(小ボケ)の段階では、「前頭葉の「三本柱」の機能ともいうべき「意欲、注意の集中力及び注意の分配力」の機能障害の症状が「認知症の症状」として現れてくるだけということなのです。勿論、「左脳も右脳も運動の脳」も未だ正常な機能レベルにあるこの段階では、「DSM-4」が第二の要件として規定している「失語や失行や失認」などの極めて重い症状は、そのカケラさえも認められないのです。

 「三本柱」の機能が異常なレベルに衰えた影響が、発想や企画や計画や洞察や推理やシミュレーションや判断や機転や感動や抑制といった「前頭葉」の各種機能の「認知度」及び「発揮度」に影響するために、対象となる情報や思考の認知及び記憶(記銘やその保持や想起)並びにそれらの処理の面でも、関係する各種機能の発揮が不的確で不十分なものとなるのです。その結果、的確な状況の判断、発想、計画、創意、工夫、機転といった機能、或いは的確な見通しや意思決定などが要求される、「社会生活」の面で、程度や態様を含む種々の支障が出てくるようになるのです。その結果、「小ボケ」の段階では、「社会生活」面での種々のトラブルが生じてくるようになるのです。

勿論、この段階では、「家庭生活」の面にも「セルフケア」の面にも何の支障も起きてはきません。それぞれの段階で必要とされる「前頭葉を含む脳の機能のレベル」が異なるからなのです。                                                                                                                                             

  

〇 「軽度認知症」(小ボケ)の中核的な症状とその特徴

「小ボケ」レベルでの「中核的な症状」の特徴を挙げると、次の5つの要素を中核とする種々の症状が、「社会生活」のいろいろな面で現れてくるのです。

● 自分の置かれている状況を的確に判断できなくなります。

● 発想が湧いてこなくて、見通しも立たないので、この一日或いは一週間、何をどうするのかという「テーマの発想と計画」が出来なくなります。

● 何かをしようとする「意欲」が出てこなくなり、毎日をボンヤリと過ごして、居眠りばかりするようになります。

● 何事をするにつけても人を頼るようになり、指示してもらわないと動けない「指示待ち人」になります。

● その人らしい「生活態度」が消えていき、「こんな人ではなかったのに」と周りから言われるようになります。

  

〇 「軽度認知症」(小ボケ)の期間

「アルツハイマー型認知症」の最初の段階である「軽度認知症(小ボケ)の段階を「不活発病」などと誤解して、「前頭葉」機能の活性化による機能の回復を図るための対策としての「脳のリハビリ」を何等実行することもなく、ナイナイ尽くしの「単調な生活」がそのまま継続されて居ると、「前頭葉」を含む脳全体の機能が廃用性の更なる加速度的で異常な機能低下を進行させていく結果として、次の段階である「中等度認知症」(中ボケ)の段階に入っていくことになります。この場合、脳の使い方としての「生活習慣」やその生活状況が人それぞれ異なるので、個々人で言えばそれなりの差異は有るのですが、極めて多数の症例による集計を基礎とした通常のケースで言えば、「軽度認知症」(小ボケ)の期間は大体3年間続くのです。脳の使い方としての生活習慣を改善するための対策が取られないままに、ナイナイ尽くしの「単調な生活」が継続されているその先に待っているのが、「中等度認知症」(中ボケ)の段階なのです。「アルツハイマー型認知症」の重要な特徴として、「軽度認知症」(小ボケ)の段階から「中等度認知症」(中ボケ)の段階を飛び越して、いきなり「重度認知症」(大ボケ)の段階に進むことは絶対に無いのです。「アルツハイマー型認知症」は、何年もかけて徐々に、段階的に、症状が進んでいく(重症化していく)のが、特徴なのです。

   

〇「中等度認知症」(中ボケ)の中核的な症状とその特徴

「中等度認知症」(中ボケ)は、脳の司令塔である「前頭葉」の働きが「軽度認知症」のときより更に異常なレベルに加速度的に衰えてきている上に、「軽度認知症」のときは未だ正常だった「左脳」と「右脳」と「運動の脳」の働きも異常なレベルに衰えてきて、「脳全体」の働き具合が異常なレベルになっているのです。三頭建ての馬車の御者だけでなく、3頭の馬さえもが異常なレベルに衰えてきている、それが「中ボケ」の段階なのです。「前頭葉」を含む脳全体の働き具合が異常なレベルに入ってきた「中等度認知症」(中ボケ)のお年寄りの脳の働き具合は、「4~6歳児」相当のレベルと考えると、実態によく合致します。

  自分が置かれている状況の理解や判断も、状況判断に基づく「テーマ」の発想や企画も、「テーマ」を構成する内容の組立或いはそのやり方の工夫も、実行するに際して事前に行われる洞察や推理やシミュレーションも、最終的な実行の決断も、「4~6歳児」相当のレベルの脳が行っているのです。「中等度認知症」(中ボケ)のイメージは、家庭内の簡単な用事程度のことさえもちゃんとできないのに、口先だけは一人前、「言い訳の上手い幼稚園児」が特徴です。家族、特に同居していない家族は、口先にごまかされないよう、中身をしっかりと見極めていただきたいのです。

「中等度認知症」(中ボケ)の段階になると、情報の認知度を左右する三本柱の機能である「意欲、注意集中力と注意分配力」の働き具合が、「軽度認知症」(小ボケ)のレベルよりも更に不十分にしか働かなくなります。その結果、認知それ自体とその記憶(記銘、保持及び想起)の機能の発揮が更に不十分なものとなってしまうのです。「左脳」がらみの論理的思考や計算や言葉に対する理解、或いは「右脳」がらみの色や形や時間や空間などに対する認知、更には「前頭葉」がらみの自分が置かれている状況の理解や判断等にもそうした影響が出てくるので、「家庭生活」を送る上での種々のトラブルが起きてくるようになるのです。

状況の理解や判断、物ごとの理解や見通し等の判断が「幼稚園児」の程度となる結果、「家庭生活」面に支障やトラブルが起きてくるようになります。但し、「中等度認知症」の段階では、「家庭生活」面に支障が出てくるとは言え、衣服の着脱、食事、大小便、入浴など身の回りのこと(所謂、「セルフケア」)は自分で一応できるので、家族に迷惑をかけることは余りないのです。そのため家族も、「アルツハイマー型認知症」を発病しているとは考えもせず、「年のせい」くらいにしか考えないで、悠長に構えているのが普通なのです。

 

「中等度認知症」(中ボケ)の段階になると、食器の片付けや、洗濯物の取り込み、庭の草むしりといった、「家庭内の簡単な用事」程度のこともちゃんとできなくなります(「4~6歳の幼児」がやる程度にしかできないのです)。せっかく洗ってくれたお茶碗はもう一度洗いなおさないといけないし、庭の草取りをしてもらうと花の苗まで抜いてしまいます。この程度にまで脳の機能が衰えてきていても、「DSM-4」が「第二の要件」に掲げている失語や失行や失認等の極めて「重度の症状」及び第一の要件に掲げている「重度の記憶障害」の症状は発現してこないので、家族がせっかく病院に連れて行っても、「アルツハイマー型認知症」とは診断されないのです。

 「前頭葉」の機能が異常なレベルに衰えてきているとはいえ、「軽度認知症」(小ボケ)の段階では、未だ自覚が持てます。「意欲もわかないし、根気が続かないし、てきぱき出来ないし、発想も湧かないし、物事に感動することもないし、どうかしたのだろうか・・・」と自身が感じていて、「以前の自分と比較して、自分のどこかがおかしい」という自覚を明確に持っていて、自分の状態に「不安」を感じてもいるのです。ところが、「中等度認知症」(中ボケ)の段階になってくると小ボケの段階より、「前頭葉」の機能が更にが衰えてきているので、そうした自覚を持つこと自体が出来なくなってくるのです。

自分の状態(軽いとはいえ、れっきとした「認知症」の症状なのですが、、、)に対する自覚がもてないので、不安も全くと言っていい程に感じていないのです(脳の機能レベルの更なる低下が原因で、感じることがもうできないのです)。逆に、家族が、「こんなところが、こんなふうにおかしい」と指摘しても、「そんなことはない。私は、ボケてなんかいない」と感情的になって言い張るのです。その上、自分のおかしな言動についての、一端の言い訳(ヘリクツの類)ばかりを並べ立てるのが「中ボケ」の特徴なのです。

   

〇「中等度認知症」(中ボケ)の期間

上述したように脳の使い方としての「生活習慣」やその生活状況が人それぞれ異なるので、個々人で言えばそれなりの差異は有るのですが、極めて多数の症例による集計を基礎とした通常のケースで言えば、「中等度認知症」(中ボケ)の期間は大体2~3年間続きます。その先に待っているのが、「重度認知症」(大ボケ)の段階なのです。「中等度認知症」(中ボケ)の段階になっても手をこまねいていて(そもそも、本人には自覚が持てないので自覚がない訳なのですが、家族を含む周りの人達にも状況が理解されていなくて)、相変わらずナイナイ尽くしの「単調な生活」が継続されたままでいると、「前頭葉」を含む脳全体の廃用性の機能低下が更に加速度的に進んでいき、回復が困難な末期の段階である「重度認知症」(大ボケ)の段階に入っていくことになるのです。

このブログの〈No-33〉で例示し説明したような「生活状況」の発生が「キッカケ」となりナイナイ尽くしの「単調な生活」が始まって、早い人では半年も経つと「アルツハイマー型認知症」を発病するのです。発病してから通常は3年間が(軽度認知症)「小ボケ」の期間、(中等度認知症)「中ボケ」の期間が2~3年の間続き、発病から5~6年経つと(重度認知症)「大ボケ」の段階になる」というのが大原則であり、「二段階方式」による判定の標準的な指標となります。なお、「アルツハイマー型認知症」が原因で死亡することにはならないので、「大ボケ」の期間は、症状が「大ボケ」のレベルに進んできてから何らかの他の病気が原因で死亡するまでの期間ということになります。従って、その期間は個人ごとに異なり、一定の期間というものはありません。世の中の認知症の専門家といわれる人達は、「大ボケ」のレベルの症状が出てきて初めて認知症であるとの診断をしているので、「大ボケ」の期間だけを取り上げて「認知症の期間」と言っているのですが、正確に言うと、「小ボケ」、「中ボケ」、「大ボケ」の各期間を合計した期間が「アルツハイマー型認知症の期間」なので、ケースによっては相当な長期にわたることになるのです。「脳がもたないのに、身体がもつ」、それが「アルツハイマー型認知症」の特徴なのです。

   

○  アルツハイマー型認知症の症状が進行(悪化)していく原因

「小ボケ」(回復容易)や「中ボケ」(回復可能)のレベルの間であれば、「脳のリハビリ」(脳の活性化を目的とした「生活習慣」の改善指導)により、言い換えると、(前頭葉の「三本柱」である意欲、注意の集中力、注意の分配力の出番が増える生活を極力増やす生活「テーマ」の取り込みを工夫すること)によって、脳の機能レベルの顕著な「改善」が期待できるのです。「アルツハイマー型認知症」の場合は、廃用性の機能低下が起きてきたことの(使われる機会が極端に少ない生活の継続により、脳の機能が異常なレベルに衰えてくること)直接の結果として、低下した脳の機能レベルに見合った症状が発現してきているだけなので(言い換えると、世の中の専門家と呼ばれる人達が言っているような、アミロイド・ベータやタウ蛋白の影響によって神経細胞が脱落してきている直接の結果として「アルツハイマー型認知症」の症状が発現してきている訳ではないので)、「前頭葉」を中心とした脳を使う機会が増えてくる生活が継続される(脳の使い方としての生活習慣の改善)中で、脳の機能が回復してくるのです。

ただし、「アルツハイマー型認知症」の末期の段階である「大ボケ」のレベル(この段階のみをとらえて、世の中の専門家達は、「アルツハイマー型認知症」と診断しています)になると、「正常」レベルへの回復のみならず、「小ボケ」レベルへの回復を期待することも、基本的に困難となります。その「大ボケ」(回復困難)のレベルの中で、運動の脳や右脳を刺激する「生活改善」の継続により、症状レベルでの僅かな改善が見られたり、症状の更なる悪化が抑制され、或いはその進行のスピードが緩やかになる程度の改善がみられることはあるのですが、「中ボケ」レベルへの脳機能の改善(回復)の見込みさえも極めて困難なものになってしまうのです。「大ボケ」のレベルにまで「前頭葉」を含む脳の機能が衰えてしまうと、その脳の機能を回復させることは極めて困難であることを施設を運営している人達さえもが知らないのです。

  

 個々人の実際の生活の場面では、それなりに「プラス要因」となる生活(脳の働きを活性化させ、機能を改善させる生活)が入り込んできたり、逆に「マイナス要因」となる生活(脳の働きを不活発にさせ、機能を悪化させる生活)が入り込んできたりするものなのです。上述した各段階(「小ボケ」、「中ボケ」)の期間の基準に適合しないケースでは、上の図に例示する「プラスの要因」或いは「マイナスの要因」と考えられる種々の要因が入り混じり、或いは重なって起きてくることの日々の現実の生活場面での「生活習慣」の質と量とが脳に働いて、「アルツハイマー型認知症」の症状の更なる「進行」や「回復」に影響を与えているだけなのです。

 エイジングライフ研究所の「二段階方式」を実践活用するときは、「前頭葉」の働き具合及び「左脳と右脳」の働き具合を神経心理機能テストで定期的に測定し、「生活実態」の聞き取りから確認される生活の自立度を判定し(「脳の機能レベル」のアウトプットとしての「症状」の確認)、更に、「生活歴」の聞き取りから、その対象期間中の脳の使い方としての「生活習慣」を具体的にチェックします。その上で、「神経心理機能テスト」により、脳の働き具合の総合的な判定結果を、「改善」、「維持」、「悪化」の三段階に区分して評価し、対象期間中の「生活習慣」を脳の機能レベルの判定結果と照らし合わせるのです。

 「改善」、「維持」、「悪化」の各々のケースについて、その人の脳を活性化させるような「生活習慣」としての生活実態がどうであったのか、「プラス要因」や「マイナス要因」がどのように入り混じっていたのか、或いは、ナイナイ尽くしの「単調な生活」が継続したままだったのか等を詳細にチェックする訳です。そうした評価によると、脳の機能レベルの推移(改善、維持、悪化)と対象期間中の脳の働き具合を支える「生活習慣」としての生活実態とは、必ず合致していることが分かるのです。

  

  〇 脳機能の老化のスピード差をもたらす要因

 そうした極めて多数の事例の分析とデータの積み重ねから、上記「老化のスピード差」の期間が導き出されているので、この「小ボケ」、「中ボケ」の期間が「標準的な指標」として、大多数のケースに合致するのです。この指標となる期間と実際の個別のケースの期間との間に差異があるときは、「プラス要因」と「マイナス要因」とが複合して脳の機能レベルの変化に影響を与えているので、その実態を丁寧に確認する作業がとても重要なのです。

この場合、どのような「生活習慣」が脳の活性化と脳の機能レベルの改善に効果的なのかについては、上述の例示のように標準的なものを類型化して導き出すことはできるのですが、絶対的なものはなくて、あくまで相対的なものだということが留意すべき重要なポイントです。その「生活習慣」を個々の本人の「前頭葉」がどのように評価したのかが、前頭葉の「三本柱」の意欲、注意の集中力と注意の分配力の働き具合に直接影響しているからです。

ところが、「東日本大震災」を被災した地域のお年寄りの場合は、上述したケースとは状況が根本的に異なることに注意が必要だと考えています。未曾有の大災害がもたらした「生活状況」と復興に向けての国や自治体の一向に進まない対応振りという問題とが重なっているからです。今回の被災では、前頭葉の「三本柱」の中核をなす「意欲」自体を大きく阻害してしまう「種々の喪失体験」並びに「マイナス要因」としての生活状況が極めて大きく且つ数も多い上に、脳を活性化させる「プラス要因」となる状況が極めて想定しにくい環境にあるからです。このような環境下では、上述した「進行の標準的な期間」の基準よりも速く「症状」が次の段階に進んで行ってしまう(「小ボケ」が「中ボケ」に、「中ボケ」が「大ボケ」に進む期間が短くなってしまう)のではないかと危惧せざるを得ないのです。

  

 注)本著作物(このブログB-05に記載され表現された内容)に係る著作権は、(有)エイジングライフ研究所に帰属しています。

エイジングライフ研究所のHPを「クリック」してください)

脳機能からみた認知症の初期の見わけ方(IEでないとうまく表示されません

  http://blog.goo.ne.jp/quantum_pianist

 http://blog.goo.ne.jp/kuru0214/e/d4801838dd9872301e0d491cd8900f1a

 

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