○ 「アルツハイマー型認知症」の症状を発現させている真犯人は誰なのか
インターネットで「アルツハイマー型認知症」と入力し、検索してみてください。いろいろなサイトがあって、様々なレベルでの説明がなされています。私達は、脳の司令塔の「前頭葉」(前頭前野のことを言うものとする。以下、同じ)を含む脳全体の働きのメカニズムとその働き方(機能レベル)について判定できる「二段階方式」と呼称する手技を開発し、脳機能データ(脳の機能レベルとその機能レベルに対応する症状に関する極めて多数のデータ)を集積し、解析してきました。「二段階方式」を活用した神経心理機能テストにより、「前頭葉」を含む脳全体の機能レベルを精緻に測定し、同時にその脳の機能レベルで発症している認知症の症状の有無及び症状の重症度について、各々3段階に区分し総合的に判定してきたのです。
その極めて多数に上る脳機能データの解析結果に基づいて、対象を「アルツハイマー型認知症」に特化し、その発病のメカニズムを追及し、早期診断の方法を開発し、1995年以来市町村での「地域予防活動」を実践指導してきたのです。そうした知見及び体験から、ただ鵜呑みにするしかない皆さん方とは違って私達は、様々なブログの内容の程度の判定もできるのです。その結論から言うと、それら様々なブログの内容は、「どれもこれも、いい加減なものばかり」と言う他ないのです。自分の体験や考えに基づかないで、世間で権威があるとされる他人の説の受け売りか或いはその引用でしかないのです。
その代表的なものをまとめて説明すると、概要次のような内容になります。それらの解説では、「アルツハイマー型認知症」は、脳の神経細胞の減少、脳の委縮、老人班及び神経原線維変化の出現を特徴としていること。脳の中に、アミロイドベータと呼ばれる蛋白質が沈着すること(老人斑の生成)が原因で(「アミロイドベータ仮説」)或いは、タウタンパクと呼ばれる蛋白質の蓄積による神経原線維変化が出現すること(タウタンパク仮説)が原因で、神経細胞を変性させ或いは脱落させることにより、脳の機能が障害され、認知症の症状が発現してくると説明しています。
ところで、(「A」という原因が存在しなかったならば、「B」という結果は発生しなかったことが証明できた)時に限り、「A」が原因で[B]が発生したこと、つまり「A」という原因と「B」という結果との間に「因果関係」が認められることになるのです。ところが、上記2つの仮説はいづれもその「因果関係」を証明できていないのです。つまりは、単なる「仮説」にすぎないのです。要求される因果関係の証明が無い限り、大手を振ってまかり通るような代物ではないと言わざるを得ないのです。
この2つの仮説は、解剖所見を基礎とした「仮説」にすぎないのです。然もその仮説の基礎とされる解剖所見なるものは、「アルツハイマー型認知症」を発病して、何年間もの長きに亘って重度の症状が確認されていた人達(具体的には、失語や失行や失認という末期段階の「重度認知症」の段階の更にはその後半にならないと発現してくることがない極めて重い症状を何年間も発現させていた人達)の死後にその脳を解剖して得られた「解剖所見」にすぎないのです。その解剖所見を基礎として、それらの「仮説」が打ち立てられているだけなのです。同様の問題を抱えるものとして、「DSM-4」の規定があります。「アルツハイマー型認知症」の診断基準として世界で最も権威があるとされている米国精神医学会の診断基準である「DSM-4」の規定が、失語、失行、或いは失認を第二の要件として掲げていることの重大な誤り(及び問題点)については、このブログの中で、これまでに何度も指摘し、問題提起してきたとおりです。
これも以前このブログで説明に使用したことがあるのですが、上記の問題点を分かり易くするために、再度ここで取り上げて説明します。それは、「空気ポンプ」を例にした話です。自転車のチューブに空気を入れる「空気ポンプ」という機器があります。「アルツハイマー型認知症」は、空気をチューブに運ぶ紐状のゴム管の部分(脳で言えば、情報を伝達する神経細胞)がアミロイドベータやタウタンパクに侵されたことにより神経細胞が変性或いは脱落を起こし、脳機能に支障が起きてくることが認知症の症状を発現させている原因だというのが、アミロイドベータ説やタウ蛋白説の考え方です。この考えに立脚しているのが、ゴム管の部分を繕って空気が漏れる量を少しでも抑える効果を期待できることを目的に開発され、現在販売されている4種類の薬ということになります(これらの薬は、治療の効果は期待できないので、「症状」の進行を遅らせる効果を狙うものとされている)。
私達は(廃用性の脳機能低下説)、ゴム管の部分に支障があるからではなくて、ポンプを押して空気を押し出してやる部分(脳で言えば、情報を処理・発信してやる「前頭葉」を含む脳全体の機能)に支障が起きてきて(「廃用性の異常な脳機能レベルの低下」)、脳が正常に働かなくなったことが「認知症の症状」を発現させている原因だと考えているのです(私達が集積してきた多数のデータは、「前頭葉」を含む脳全体の機能レベルのアウトプットが症状だということを示している)。いくらゴム管を繕っても(編成或いは脱落したと主張される神経細胞の修復)、そもそもポンプを押す作業をしない限り(脳の機能がちゃんと働かないのでは)、空気は流れない(情報の処理も発信もない)のです。
組織や細胞が変形、変性あるいは破壊され、元の形に戻らなくなるように変化することを器質的変化といいます。「アルツハイマー型認知症」は、アミロイドベータの作用によりもたらされる「老人斑の生成」やタウ蛋白の作用によりもたらされる「神経原繊維変化」という器質的変化が本質の疾患とするのが専門家達の多数説ですが、私達は、廃用性の異常な機能低下(機能の退化)が本質の疾患だと考えているのです。
極めて多数に上る「脳の働き具合」(「前頭葉」を含む脳全体の機能レベル)とリンクした「症状」(段階的症状)のデータの解析結果から、「アルツハイマー型認知症」は、加齢による脳の老化を「第一の要件」とし、「前頭葉」を使う機会が極端に減少するナイナイ尽くしの「単調な生活」の継続による廃用性の機能低下を「第二の要件」として、両者の相乗効果により、「脳機能の加速度的な機能低下」が惹起され、脳の機能が異常なレベルに低下していく(機能の退化)ことが原因で認知症を発病する病気、廃用症候群に属する単なる「生活習慣病」だと私達は考えているのです。
私達が集積してきた極めて多数の脳機能データの解析によれば、「アルツハイマー型認知症」の場合は、「前頭葉」を含む脳の機能の衰え方の程度にリンクして、脳の異常な機能レベルが「認知症の症状」として発現してくることが分かるのです。アミロイドベータ説やタウ蛋白説を唱える人達が言うように、神経細胞の変性或いは脱落による脳内での「情報の連絡」の不具合が、認知症の症状となって発現してきているわけではないのです。(「アルツハイマー型認知症」の場合は、「前頭葉」を含む脳の機能の衰え方に規則性がある)ことを証している私達の脳機能データについて、アミロイドベータ説もタウタンパク説も共に説明できない(整合性がとれない)と思うのですが。
○ 「アルツハイマー型認知症」の脳機能の衰え方の特徴を権威ある人達
が知らないことの不幸
「アルツハイマー型認知症」の場合は、脳全体の司令塔の役割をしている「前頭葉」から先に衰えていくのが「第一の特徴」なのです。次いで、「前頭葉」のコントロールの下に「前頭葉」と相互に情報のやり取りをしている「左脳」と「右脳」が衰えていきます。その「脳の機能」の衰え方の程度に応じて、症状が段階的に発現してきて、「小ボケ」、「中ボケ」、「大ボケ」へと「認知症の症状」の程度が進んで重くなっていく、重症化していくのです。このとき、何年もかけて徐々に衰えていくとは言え、「前頭葉」を含む脳の機能の衰え方は、直線的ではなくて加速度的なカーブを描きつつ衰えていくのが特徴なのです。
「軽度認知症」(小ボケ)のレベル(かなひろいテストが不合格で、MMSの換算値が24点~30点)では、左脳、右脳と運動の脳の働き具合は未だ正常レベルにあるのですが、脳全体の司令塔の役割をしている「前頭葉」の働き具合だけが、もはや正常レベルにはなくて異常なレベルに衰えてきているのです(「アルツハイマー型認知症」の場合は、このように、「前頭葉」の働きだけが衰えていくことから始まるのが特徴なのです。米国精神医学会の診断基準である「DSM-4」の規定のように、「失語」、「失行」、「失認」という末期の段階にならないと発現することがない「重度の症状」とリンクした「記憶の障害」を診断の要件としていたのでは、このような「初期の段階」を見逃してしまうことになるのです)。但し、この「軽度認知症」(小ボケ)のレベルでは、器質的変化は未だ起きていなくて、「機能レベルの異常な低下」(機能の退化)が起きてきているに過ぎません。理由は、この初期の段階で発見できれば、脳のリハビリによって、脳の機能は「正常レベル」に比較的容易に回復させることが出来るからです。
「中等度認知症」(中ボケ)のレベル(かなひろいテストが不合格で、MMSの換算値が15点~23点)では、左脳と右脳の働き具合も異常なレベルに衰えてくる上に、司令塔の「前頭葉」の働き具合は、「軽度認知症」(小ボケ)のときに比べて更に異常なレベルに衰えてきているのです。但し、このレベルでも、MMSの換算値が20点以上を確保できている「中等度認知症」(中ボケ)の前期までの段階であれば、器質的変化は未だ起きてきていなくて、機能レベルの異常な低下(機能の退化)が起きてきているに過ぎないのです。理由は、この段階で発見できれば、集団生活レベルでの「脳のリハビリ」でも、脳の機能を正常レベルに回復させることが未だ可能だからです。更に、MMSの換算値が15点から19点までの「中等度認知症」の後期レベルに衰えてくると、個別での頻度と密度の濃い「脳リハビリ」を取り入れることにより、回復させることが未だ可能なのですが、家族を含めた支援態勢と相当な条件下での脳リハビリの実施という困難が伴うことになります。
そして、「重度認知症」(大ボケ)のレベル(かなひろいテストが不合格で、MMSの換算値が14点以下)では、左脳、右脳と運動の脳の働き具合が「中等度認知症」のときに比べて更に異常なレベルに衰えてくる上に、司令塔の「前頭葉」の働き具合が、「中等度認知症」のときに比べ更に加速度的に機能が衰えていくので、殆ど機能しなくなってきているのです。その上、MMSの換算値が14点から11点へと低下してくるにつれ、徐々に器質的変化が現れてきて、10点以下のレベルでは、顕著な器質的変化が起きてきていると考えられるのです。理由は、この末期段階の「重度認知症」の段階では、脳のリハビリによる機能の回復の効果が期待できなくなるからです。「アルツハイマー型認知症」の専門家といわれる研究者や医師たちは、前述した「DSM-4」の規定に依拠して診断を行う為に、この末期段階の私達の区分で言う「重度認知症」(大ボケ)の段階だけを捉えて「アルツハイマー型認知症」であると診断しているのです。そのため、本来は廃用性の機能退化が本質なのに、器質的変化を起こしていることが「アルツハイマー型認知症」の本質であると本質を見誤っているのです。
「アルツハイマー型認知症」は、「脳の働き具合」のアウトプットが「症状」の程度・態様として発現してくるだけなのです。脳の機能レベル(小ボケ、中ボケ及び大ボケ)に対応して、機能レベルに特有の「段階的な症状」(小ボケの症状、中ボケの症状及び大ボケの症状)が発現してくるだけなのです。「脳の機能レベル」が「症状」の程度態様とリンクしているわけですから、脳の機能レベルの異常な低下(機能の退化)がもっと軽い段階から、且つ症状の進行を段階的継続的に変化移行していくものとして理解し捉えていき、データを集積し分析することが、的確な判定や診断に必要不可欠となるのです。
米国精神医学会を含めて世の中で権威があるとされる機関や人たちが、本質を見誤らなければ、私達の区分で言う「軽度認知症」(小ボケ)や「中等度認知症」(中ボケ)の段階の症状にも目が向くこととなり、「アルツハイマー型認知症」を発病しても、回復させることが可能になるのです。ところが、(器質的な変化が本質の病気)だとする本質を見誤った考えが世の中を支配していて、末期段階の「重度認知症」(大ボケ)でも後半になって初めて発現してくる極めて重い症状である失語や失行や失認等の症状にしか目が向かないでいるがために、回復させることができなくなってしまうのです。その結果、(「アルツハイマー型認知症」は、発病の原因もわからないし、治すこともできないし、予防することもできない病気)にされてしまっているのです。
権威づけられているために、専門家とされる医師達を含め世の中の誰もが信じて疑うこともなく、この誤った見解が世の中の隅々にまで行き渡ってしまっているのです。失語や失行や失認等の末期段階にならないと発現してこない極めて重度の症状を診断の基準(「DSM-4」が定める第二の要件)にして、回復が容易な「軽度認知症」の段階だけでなくて回復が未だ可能な「中等度認知症」の段階さえも見逃して、回復させることが困難な「重度認知症」の段階になって初めて「アルツハイマー型認知症」だと診断する(見つける)ことに何の意味があるのか、その見識が不思議でならないのです。
(コーヒー・ブレイク)
世界最高の権威とされる米国精神医学会が定める「アルツハイマー型認知症」の診断基準である「DSM-4」が近々改訂され、『DSM-5』として公開されると聞いています。但し、『DSM-4』の規定で第一の要件とされていた「記憶の障害」の要件を取り払うだけでは、正しい(的確な)診断基準とは言えないのです。「前頭葉の働きのメカニズムとその機能レベルに対応する症状」という視点を持つようにならない限り、権威だけがあって内容が伴わない現状を変えることには繋がらないのです。
注)本著作物(このブログA-87に記載され表現された内容)に係る著作権は、(有)エイジングライフ研究所に帰属しています。
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機能からみた認知症の初期の見わけ方(IEでないとうまく表示されません)
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