トヨタの豊田章一郎氏が97歳で亡くなったというニュースがありましたが、かつてのテレビ番組『新車情報』の三本和彦氏が2022年夏に亡くなっていたようです。ウィキペディアによると2022年7月16日、90歳で亡くなったと書かれています。
テレビ神奈川で追悼番組を放送したものがYou Tubeで公開されているのをたまたまみつけた(今は見られなくなっている)ことで知りました。
私がよく見ていたのは、豊田規柴子さんがアシスタントをしていた頃ですから、88年から96年ごろだったようです。歴代のアシスタントが何人もいる中で一人しか記憶にないのは、この時期にしか見ていなかった証拠でしょう。今から思い返してみても、かなりこの番組が好きだったようで、ネット局の放送を録画して見ていました。試乗レポートも気に入っていたみたいで、いつぞや、遠くに住んでいる家族にICから自分の家までの道案内をするのに、クルマにビデオカメラを積んで、三本氏のようにレポートをしながら走るのを録画して、郵送でビデオテープを送ったことがあったというのを思い出しました。ビデオテープ。郵送。隔世の感があります。ま、それくらい『新車情報』や三本氏のクルマを評論する姿勢が気に入っていたということでしょう。
この度知ったことですが、あの有名な、日産のスカイラインを称して「羊の皮を被った狼」という言葉を作ったのも三本氏らしい。
「ぶしつけな番組で…」と、自動車会社の担当者にズバスバと質問を浴びせるのは、当時、意地悪なおじさんだなと思っていましたが、今、改めて眺めるのと(You Tubeに番組が何本も上げられている)評論家ではなく、まさにユーザー視点での質問なのだと納得します。番組中に使われる用語も難しいカタカナ語ではなく、平易な素人にわかりやすい言葉でした。
「安くていいクルマを作ってくださいよ」という三本氏の言葉を何度も聞いたような気がして、他の評論家たちとは少し違う立ち位置の人なのだと思ったものです。クルマを趣味の道具、遊びの道具として語らない、実用の視点から評価するという姿勢だったのではないかと思います。
『新車情報』を見なくなった後に、三本氏の本を一冊読んだはずですが、本棚を探しても見当たりません。処分してしまったんでしょうか。覚えているのは、クルマを語るとき、クルマだけでなく取り巻く社会を同時に見つめなければならないということ。もうひとつは、評価するセオリーには「七分褒めて、三分けなす」という、多めにホメて、残念な点を3割ほど入れると恰好がつくという話も三本氏の本で教わりました。こういう定番ルールを三本氏は嫌っていたと思いますが、そういうパターンがあるのだと教わった私は、それ以降に仕事で役に立ちました。
『おぎやはぎの愛車遍歴』に三本氏が出演していた様子もYou Tubeにありました。2013年1月のオンエアだそうです。この時点で杖をついていますから、それから10年近く存命だったわけです。長い自動車評論家生活お疲れ様でした。ありがとうございしましたという気持ちになります。
You Tubeの連続再生で、『新車情報』の「スズキアルト」、続いて「カプチーノ」の回を見ました。私はこの番組を見て、カプチーノという珈琲用語がお坊さんの法衣の色から由来したものであると教わったのです。番組の進行につれて思い出してきました。記憶通り、番組の最後にその部分が出てきて、何十年も前のことを覚えているものだと思いました。
(つづく)
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