車椅子で自由に行動できるようになった頃、南側が見える病棟の共用スペースから基礎工事だけできていた集合住宅の建築工事は、退院する頃には三階の屋根まで載せられてしまいました。
変なタイトル。病室の南北の話です。リゾートホテルにあるオーシャンビューという語に倣ってタウンビューと目隠しビュー。病棟の中で北向きの病室と南向きの病室のことです。
他の季節なら何も感じずに退院してしまったかもしれませんし病院の立地にもよります。私がお世話になった病院の場合、北向きの病室と南向きの病室ではまず見晴らしが違います。北向きの窓の外はマンション。プライバシーの関係から病室の外には目隠しのガラスが嵌められています。後付けのようなのでマンションのほうが後からできたのでしょう。上のほう、庇との間に70センチくらいの開口部があって横に長い北の空とマンションの最上階の部屋が少しだけ見えます。一方南向きの病室は丘の上から町を見下ろすように町の景色が目に入ります。道路を歩く人や自動車、人間の活動が見えます。もちろん目隠しはありません。遠くは50kmくらい離れた高い山の稜線も見えます。
この季節ですから、日の出から日没まで、その後の空の色の変化まで見えるのが南向き。一方の北向きは3時ごろからわずかに見える北の空が心細くなって4時ごろには薄暗くなる。枕元灯のお世話にならないと本も読めなくなります。そのころ廊下から南向きの病室を覗くと夕方の暖かで穏やかな光が差し込んでいます。朝は夕方同様に早くから力強い光を受け入れているのです。午後には窓を開いていたりする景色も見えました。
こういう環境が患者の気分や、ひいては病、怪我の回復に影響を受けないのだろうか。いわば南向きの部屋はタウンビュー、北向きの部屋は目隠しビューというわけです。私は目隠しビューの病室です。
病室の中には個室もあって差額を払えば誰でも個室に入れます。ホテルでいうとスイートルームとかスーペリアルームとか、船や列車でいうと一等寝室とかグリーン個室というものですね。いっそのこと病室も南向きの病室をすべて個室にしてお金で明確に区別してもらえたら納得もできるのですが。
ところで、4人部屋というものは窓側が二人と廊下側が二人です。私は窓際なので空も少しは見えますが、廊下側のベッドはまったく外が見えません。昼間でも枕元灯が必要なのだろうなと思っていました。最近になって気づいたのですが実は窓側のベッドと廊下側ベッドではわずかに仕様が異なる。廊下側には酸素の出るジャックと吸引のジャック?が壁に標準でついています。私のほうを確認したらそんなものはない。同じ部屋でも看護の重要度が高い人が少しでもナースセンターに近いところに住まいさせられているのではないかと考えました。私もこのベッドでの生活が長い。入院患者たちの様子を見ていると、なんとなく私の下手な考えも外れていないのではないかと思われます。
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