ぶろぐのおけいこ

ぶろぐ初心者は書き込んでみたり、消してみたり…と書いて19年目に入りました。今でも一番の読者は私です。

宇津ノ谷峠2  行き行きて駿河の国に至りぬ(6)

2021-01-06 20:22:41 | PiTaPaより遠くへ

 宇津ノ谷トンネルの岡部口には、ハイカー用に歩道橋が作られています。歩道橋で大動脈を渡り、岡部口側の道の駅まで歩きます。

 この辺りが岡部町岡部。岡部どまんなからしい。静岡口の道の駅までは別のルートで帰ろうと、県道208号線を歩き始めました。

 静岡ナンバーのVitzが、行き先に迷っているのか県道の真ん中で停まっています。すると、ドライバーのおじさんが私に近づいて、ここに行きたいのだが…と地図を私に差し出すのです。こちらだって、生まれて初めてここを歩いているのです。こちらが道を聞きたいくらいです。おじさんは焼津市の人で、山に関わってこちらに用事があると言います。「1号線ではなく、県道208号線を走れ」と教えられたとも。しかも、道路の真ん中にクルマを停めたまま、地図をもって歩き始めます。おいおいクルマ!と内心でつぶやきながら、私はおじさんの地図を眺めて、この方の行くべき先が分かったのでした。少し戻って1号線の廻沢口交差点を渡ればいいのです。1号線の交差点を右折しても行けるのですが、何しろ流れの速い大動脈です。この方には難しいだろうと、208号からこの交差点を突っ切れとアドバイスされたのでしょう。ところがそのアドバイスが却っておじさんの理解を邪魔したようです。教えてあげました。おじさんはお礼を言ってクルマをバックさせて、行ってしまいました。県道とはいえ、クルマを道路の真ん中に停めてクルマを離れる。なんて長閑なことでしょう。この道路は今でこそ大動脈にその称号を譲ったものの、かつてはトップナンバー、国道1号線だったのですから。私もうれしくなります。

 県道にはほとんどクルマの通行はありません。下方にある岡部バイパスのスピード、交通量と対照的です。ジーンズの裾に、恐らくタウコギとヌスビトハギでしょう、ひっつき虫がついている。「昔男」も、蔦の細道を歩くとき、狩衣にひっつき虫がついただろうか。いや、「昔男」がこの辺りを通過したのは、夏だったはず。ひっつき虫はないだろう。また、この山道は「つたやかえでは茂り…」とありますが、夏のことであるはず。紅葉はしていないはずです。江戸時代に描かれた深江芦舟の「蔦の細道図屏風」では、秋の風景に描かれているように見えますが、それは本文と合致しないはずです。一方、俵屋宗達の「蔦細道図屏風」はほぼ緑色で、紅葉はしていません。

 現代の大動脈、国道1号線宇津ノ谷トンネルを中心にみると、トンネルがくぐっている山の南東側を通るルートが蔦の細道、トンネルの北西側を通るのが江戸時代の東海道、明治以降の車道ということになります。クルマが通るわけですから、傾斜も緩い。

 ほどなく明治のトンネルに到着。自動車やバイクは通行禁止です。レンガの装い、車一台が通る幅のトンネルは天井にガス灯を模した電灯。明治時代は、このトンネルで間に合ったのでしょう。

 静岡口に出たら、今度は大正のトンネルを歩いてみます。これは自動車もトンネル内ですれ違えるだけの広いトンネルです。現在の県道が通るトンネル。しかし、現代の大動脈を通すには容量が足りない。そこで、岡部バイパスは片側2車線のトンネルを2本ぶち抜き、供用しているのですが、このトンネルが昭和と平成に完成している。ここは、明治、大正、昭和、平成のトンネルがすべて通れる状態で生きている、博物館のようなところなのです。とすると…、令和のトンネルも掘ってもらわねばなりませんね。

 静岡側から蔦の細道で岡部側へ、明治のトンネルで静岡側へ戻り、大正のトンネルで再び岡部側へ、昭和、平成のトンネルを歩く勇気はないので、大正のトンネルで静岡側へ戻りました。もう少し時間があれば、東海道で帰ることもできたのですが、今回はパスしました。宇津ノ谷集落の旧東海道を下っていきます。この集落は人々の生活と、旧東海道の雰囲気がうまくマッチしているように思えます。評判らしい蕎麦屋さん、それにこの集落では令和の今でも屋号が生きているようです。

 歩いていたら、なんと!知り合いが。

 それは、蔦の細道で立ち話をした3人組の方々。私も慌ててマスクをつけ、懐かしい人々とまた立ち話。つまり、私は静岡口からスタートをして、静岡口に戻る。お3人は岡部口をスタートして岡部口に戻るコースだったのです。

「どうでした?蔦の細道の下りはきつかったでしょう」

「その通りでした」

 お互いに「ありがとうございました。お気をつけて」と言い合って遠ざかる。まさか、「東下り」同様に、「見し人」に会えるとは思ってもいませんでした。

 集落のはずれ、看板のあるところで、親子連れに道を尋ねられました。

「明治のトンネルへはどう行けばいいのでしょう」今日はよく道を尋ねられる日です。「この道をまっすぐ行けばわかりますよ。どうぞ、お気をつけて」

 道の駅に戻り、お土産を買って、帰途についたのでした。

(つづく)

 

 ご参考にどうぞ

静岡県自然観察ガイドブック26 つたの細道』静岡県自然観察指導委員会中部支部 著 静岡教育出版社 発行

宇津ノ谷あるき』宇津ノ谷地区美しいまちづくり協議会 静岡市都市局建築部建築総務課 発行

 

 


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