名乗るほどの者ではない

2018年02月20日 | 日記
ハアー…お金が欲しい。


ストレートに言ってみた。



ダンナが無職な上に長期入院中。

先日も入院費を払ってきた。

家のローンも毎月容赦なく引き落とされている。

ダンナがちゃんと働いている頃組んだローンだから、ボーナス月は普段の5倍も引き落としになる。

そうして長年払い続けているこの家だが、あっちもこっちも修繕が必要になってきた。

だがもちろん、そんなお金あるわきゃない。

屋根の色も剥げてボロいから、しょっちゅう塗装の業者がピンポン鳴らし、塗装を勧めに来る。

あるいはチラシを入れていく。

そりゃあね、キレイに塗り直したいよ。

外壁だって黒カビみたいなのも出てきてみっともないよ。

でもそんなお金どこにあるっていうんだい。

着て食べて住んで、それだけで精一杯の人生さ。

ハアー…

そんなことを考えながら、今日は久々に通帳の記帳をして見て、そこのATMの機械の前でため息が出た。

ん?

え?

そのATMの機械の上にカードがあった。

ちょ、キャッシュカードじゃないか!

誰よこんなおもむろに忘れて行って。

で、どうすればいいの?

警察に持っていく?

えー、めんどくさいなあ。

でも知らんぷりして置いたら、誰か悪人が持って行っちゃうかもしれない。

あ、この電話で言えばいいのかな?

と、機械のとこにある受話器をとった。

「はい、ATMセンターです」

「あのぉ、ここにキャッシュカードの忘れ物があるんですけど」

「ご連絡ありがとうございます。それではカード番号と、そこについてる名前をお願いします」

え?なんかそんなもん?私の用事で電話してるんじゃないんだけどな。こっちは忙しいんだけど。

まあでも長たらしい番号を伝えて、名前の印字を見た。


あ。企業名だ。


この会社の人がお金おろしてカードを置いたままにして行ったんだなあ。

会社のカードをなくして焦ってるだろうなあ。あるいは会社の上司に怒られてるかも。

どこのどなたか知らないけど、ちゃんと預けますからね、ここで忘れたことを思い出してくださいね。

電話の向こうの人からの指示で、連絡箱という鍵がかかったポストのような入れ物にカードを入れた。

電話の向こうの人が、

『もし差し支えなければお名前と連絡先を教えていただけますか?」

と聞いてきた。


も、もしやそれってお礼に金一封でももらえるってこと?

いやしい考えが浮かぶいやしいおばちゃん。


いや、いいんだ、当たり前のことをしたまでさ。


「あ、いえ、いいです」

と言って受話器を置いた。


フッ…、あっしゃあ名乗るほどの者じゃございやせんで。どこのどなたか存じませんが、もう忘れるんじゃございやせんぜ。

ヒュルルルル~


↑何者?