「社外製のリアサペンション ユニット、車種専用仕様で販売しているのだからいいのでは?」
「あんなに高くて調整機能が満載だから、高品質で間違い無いはず!」と信じている人達へ告げます。
その絶大な信奉を裏切ってしまうので、このページは読むべからずだ!
『 一番のお気に入りは 』
長く様々な車歴の中で、多くのユニットを実際に使用してきた。
国産のKYBに始まり、オランダのKONI、そして 当時はオランダの WPが長く続き、2002年からは米国の製品を使用していたが、この製品(米国娘)が一番のお気に入りだ。
特に、オーバーホール(分解整備)直後の低フリクション感と高荷重域まで靱性高くしなやかに支える上質感はロールスロイス級だ! と 本物に乗った事も無いのに思える程だった。
それは当然だろう、米国ではNASCARとINDY CAR の両カテゴリーへ常にエントリーして、特に INDY CAR では 出走4台がトップ4を占めそうな程に有力で有名なチームを抱える会社の製品だ。
ピストン径とピストンロッド径は共に最も太く、各部品の材質と工作精度も最上級だ。
しかし、それを知っていながら、トラ君が来た時に別なメーカー製(英国娘)に“浮気”したのが 2007年。
そして今回、2016年、“ヨリ”を戻そうとして、精一杯気遣い、ピッタリなのを新調してあげようとしたのに、“ 社外品の事情 ”で涙を飲んだのだった。
『 社外品の事情 』
“社外品”は “ 純正部品 ”とは違って、特定の車両専用に設計して製造されるわけではない。大きさや長さが異なる幾つかのピストンやシリンダー本体、エンドピースなどの部品を組み合わせて、その車両に“ 装着が出来る製品 ”を作り、それを“ 専用品 ”として販売するシステムだ。
だから、純正品の様に、車体設計者からの要望に合わせた仕様の製品を作り、その後に車両に装着してテストと修正を繰り返してから採用されているのとは違う。
車高調(ユニット全長の調整機構)は、アライメントを左右するユニット全長を、純正品と全く同じにする為には必要な機構で“逃げ”。で、数多くのダンピング調整機構は、数多くあればどれかが合うからだ。
そんなレベルだから、“お気に入り” の米国娘のメーカーへ、細かな仕様を指定して製造を依頼したら、要求したストローク長 54㎜ は出せないとの返信。訊けば、ストローク長は 49 ㎜程度になるとの事。
待ってくれ!
それでは、トラのリアホイールトラベル(ストローク)量は 130 mm で設計されているのに、装着しても 120 mm 程度しかストロークしないよ!
残念、この縁談はご破算だ。
以前使用していた “社外品”(英国娘)は、純正とは作法が違うけど、ストロークを確保できそうなので、とりあえず戻るしかない。
『 気を取り直して 』
強く憧れ、長いお見合いの末、暴露した欠点を許せずに別れ、すぐに元の“サヤ”に戻ろうとする男心。
かと言って、以前と同じ“サヤ”には戻りたくない。
何故なら、“ 低速時フリクション ”が大き過ぎるからだ。
つまり、ユニットが伸縮するストロークの速度が低い時、低速・低荷重域から一気に荷重をかけていく時にユニットにツッパリ感があり、タイヤのグリップ(トラクション)が得られないのだ。
この英国娘は、米国娘と較べて、ピストンロッド が 一回り細くて、シリンダーボディは 一割近く細い。細いロッドは 高荷重が加わった時にたわみ易く、ピストンとシリンダー間のフリクションを生み易く、一割程細い ボディという事は ピストン面積が 二割程度狭い事で、繊細なダンパーシム設定は難しくなりフリクションは生み易い。
それに、部品の加工精度は 二回りほどレベル差がある。
でも、それら生まれつきの事には目をつむって、他のトコで何とかしてみようと、オーバーホール作業(分解整備)を依頼する時に合わせて三つの修正を加えた。
下の図は、そのオーバーホール作業から戻ってきたユニットだ。
1. 基本ダンピング設定の変更
トラ(ストリートトリプル)の姉妹車:デイトナ675 の 車体アライメントへ変更するのに合わせて、ユニットも “ デイトナ675 ”用を購入したが、デイトナ675純正スプリングと同じレート ( 675 lbs/inch )のスプリングが入っていて、これが酷く高いレートなのだ。
実際に、ノーマルのディトナ675も所有しているが、675 lbs/inch (ポンド / インチ)は一般道の走行では全く楽しめない程に 高いバネレートなのだ。( ストリートトリプルは、525 lbs/inch )
だから、より低レートのスプリンづを幾つか一緒に購入し、交換しつつ試して、575 lbs/inch のレートのスプリングに落ち着いてはいたが、675 lbs/inch に合わせてセットされている本体内部の基本ダンピング設定では、それより数段低いレートのスプリングと特性が合う筈はない。
本体のオーバーホール(分解調整)に合わせて、本体内部の基本ダンピング設定を 低いレートのスプリングに合わせて調整を依頼した。
※ 調整ダイヤルで行なうダンピング調整は、ピストン速度が中間域の一定の範囲しか行なえず、基本特性は内部のダンピング機構(シムの組み合わせ)によって決まっている。ここ、よく誤解があるトコロだ。
2. 低速域ダンピング仕様変更
基本特性はシムの組み合わせで変更するから、上記の スプリングレートに合わせた設定変更の上で、更に低速域で 5% 程度 基本ダンピング を下げる依頼をした。
以上の結果が 下の 2枚のグラフではっきりと見えるだろう。( 上が変更前、下が変更後 )
3. スプリング交換
多くの人は サスペンションユニットの事を「ショック」と呼び、スプリング以外のダンパーが乗り味を変えると信じているが、サスペンションの基本はスプリングだ。
米国娘についていたスプリングは品質の高さで定評のあるブランド製品だったから、あの絶妙な味わいの一端はそのお蔭かも知れない・・・・ と考え、スプリング単体を購入して装着する事にした。
ちょっと雑な英国娘でも、あのドレスを着せれば ・・? のココロだ。
『 最後に 』
以上がリアサスペンションユニットで行なった試行錯誤だ。
一般的には、リアサスペンションユニットを交換して、スプリングイニシャルを適正値に調整し、伸び側と縮み側のダンピングの基本調整値出しをすれば終了だと思われているだろうが、それでは宝の持ち腐れ、真の実力を発揮させているとは言えない。
十分な走行試験がされていない社外品だからこそ、自身で走行確認試験を行ない、適正なレートのスプリングを選択し、基本ダンピング特性の調整・変更を行なってこそ、その価格に見合った実力を発揮させられるのだ、
今回、様々な仕様変更を加えたけれど、どういう結果になるかはこれからの楽しみだ。
それから、サスペンションユニット、低荷重域からの動作フリクションを減らす試みを他にした事を発表する。
それは、スプリング事態が伸縮する時に付随的に発生しているフリクションを取り除く処理装置だ。
この件は試行中なので、別の機会に報告の予定。
うまくいくと・・ 良いけど。
「あんなに高くて調整機能が満載だから、高品質で間違い無いはず!」と信じている人達へ告げます。
その絶大な信奉を裏切ってしまうので、このページは読むべからずだ!
『 一番のお気に入りは 』
長く様々な車歴の中で、多くのユニットを実際に使用してきた。
国産のKYBに始まり、オランダのKONI、そして 当時はオランダの WPが長く続き、2002年からは米国の製品を使用していたが、この製品(米国娘)が一番のお気に入りだ。
特に、オーバーホール(分解整備)直後の低フリクション感と高荷重域まで靱性高くしなやかに支える上質感はロールスロイス級だ! と 本物に乗った事も無いのに思える程だった。
それは当然だろう、米国ではNASCARとINDY CAR の両カテゴリーへ常にエントリーして、特に INDY CAR では 出走4台がトップ4を占めそうな程に有力で有名なチームを抱える会社の製品だ。
ピストン径とピストンロッド径は共に最も太く、各部品の材質と工作精度も最上級だ。
しかし、それを知っていながら、トラ君が来た時に別なメーカー製(英国娘)に“浮気”したのが 2007年。
そして今回、2016年、“ヨリ”を戻そうとして、精一杯気遣い、ピッタリなのを新調してあげようとしたのに、“ 社外品の事情 ”で涙を飲んだのだった。
『 社外品の事情 』
“社外品”は “ 純正部品 ”とは違って、特定の車両専用に設計して製造されるわけではない。大きさや長さが異なる幾つかのピストンやシリンダー本体、エンドピースなどの部品を組み合わせて、その車両に“ 装着が出来る製品 ”を作り、それを“ 専用品 ”として販売するシステムだ。
だから、純正品の様に、車体設計者からの要望に合わせた仕様の製品を作り、その後に車両に装着してテストと修正を繰り返してから採用されているのとは違う。
車高調(ユニット全長の調整機構)は、アライメントを左右するユニット全長を、純正品と全く同じにする為には必要な機構で“逃げ”。で、数多くのダンピング調整機構は、数多くあればどれかが合うからだ。
そんなレベルだから、“お気に入り” の米国娘のメーカーへ、細かな仕様を指定して製造を依頼したら、要求したストローク長 54㎜ は出せないとの返信。訊けば、ストローク長は 49 ㎜程度になるとの事。
待ってくれ!
それでは、トラのリアホイールトラベル(ストローク)量は 130 mm で設計されているのに、装着しても 120 mm 程度しかストロークしないよ!
残念、この縁談はご破算だ。
以前使用していた “社外品”(英国娘)は、純正とは作法が違うけど、ストロークを確保できそうなので、とりあえず戻るしかない。
強く憧れ、長いお見合いの末、暴露した欠点を許せずに別れ、すぐに元の“サヤ”に戻ろうとする男心。
かと言って、以前と同じ“サヤ”には戻りたくない。
何故なら、“ 低速時フリクション ”が大き過ぎるからだ。
つまり、ユニットが伸縮するストロークの速度が低い時、低速・低荷重域から一気に荷重をかけていく時にユニットにツッパリ感があり、タイヤのグリップ(トラクション)が得られないのだ。
この英国娘は、米国娘と較べて、ピストンロッド が 一回り細くて、シリンダーボディは 一割近く細い。細いロッドは 高荷重が加わった時にたわみ易く、ピストンとシリンダー間のフリクションを生み易く、一割程細い ボディという事は ピストン面積が 二割程度狭い事で、繊細なダンパーシム設定は難しくなりフリクションは生み易い。
それに、部品の加工精度は 二回りほどレベル差がある。
でも、それら生まれつきの事には目をつむって、他のトコで何とかしてみようと、オーバーホール作業(分解整備)を依頼する時に合わせて三つの修正を加えた。
下の図は、そのオーバーホール作業から戻ってきたユニットだ。
1. 基本ダンピング設定の変更
トラ(ストリートトリプル)の姉妹車:デイトナ675 の 車体アライメントへ変更するのに合わせて、ユニットも “ デイトナ675 ”用を購入したが、デイトナ675純正スプリングと同じレート ( 675 lbs/inch )のスプリングが入っていて、これが酷く高いレートなのだ。
実際に、ノーマルのディトナ675も所有しているが、675 lbs/inch (ポンド / インチ)は一般道の走行では全く楽しめない程に 高いバネレートなのだ。( ストリートトリプルは、525 lbs/inch )
だから、より低レートのスプリンづを幾つか一緒に購入し、交換しつつ試して、575 lbs/inch のレートのスプリングに落ち着いてはいたが、675 lbs/inch に合わせてセットされている本体内部の基本ダンピング設定では、それより数段低いレートのスプリングと特性が合う筈はない。
本体のオーバーホール(分解調整)に合わせて、本体内部の基本ダンピング設定を 低いレートのスプリングに合わせて調整を依頼した。
※ 調整ダイヤルで行なうダンピング調整は、ピストン速度が中間域の一定の範囲しか行なえず、基本特性は内部のダンピング機構(シムの組み合わせ)によって決まっている。ここ、よく誤解があるトコロだ。
2. 低速域ダンピング仕様変更
基本特性はシムの組み合わせで変更するから、上記の スプリングレートに合わせた設定変更の上で、更に低速域で 5% 程度 基本ダンピング を下げる依頼をした。
以上の結果が 下の 2枚のグラフではっきりと見えるだろう。( 上が変更前、下が変更後 )
3. スプリング交換
多くの人は サスペンションユニットの事を「ショック」と呼び、スプリング以外のダンパーが乗り味を変えると信じているが、サスペンションの基本はスプリングだ。
米国娘についていたスプリングは品質の高さで定評のあるブランド製品だったから、あの絶妙な味わいの一端はそのお蔭かも知れない・・・・ と考え、スプリング単体を購入して装着する事にした。
ちょっと雑な英国娘でも、あのドレスを着せれば ・・? のココロだ。
『 最後に 』
以上がリアサスペンションユニットで行なった試行錯誤だ。
一般的には、リアサスペンションユニットを交換して、スプリングイニシャルを適正値に調整し、伸び側と縮み側のダンピングの基本調整値出しをすれば終了だと思われているだろうが、それでは宝の持ち腐れ、真の実力を発揮させているとは言えない。
十分な走行試験がされていない社外品だからこそ、自身で走行確認試験を行ない、適正なレートのスプリングを選択し、基本ダンピング特性の調整・変更を行なってこそ、その価格に見合った実力を発揮させられるのだ、
今回、様々な仕様変更を加えたけれど、どういう結果になるかはこれからの楽しみだ。
それから、サスペンションユニット、低荷重域からの動作フリクションを減らす試みを他にした事を発表する。
それは、スプリング事態が伸縮する時に付随的に発生しているフリクションを取り除く処理装置だ。
この件は試行中なので、別の機会に報告の予定。
うまくいくと・・ 良いけど。