蒲田耕二の発言

コメントは実名で願います。

余裕

2012-04-27 | 社会
連休前の一日、都心に出て芝居を観る。開場までの時間潰しに、劇場そばのカフェに入った。隣席に4歳ぐらいの少女とその母親がいる。少女の前に、イチゴミルクのグラスがある。少女が飲もうとして、グラスをひっくり返した。幼い手が支えきれなかったのだろう。

母親は動転して娘を叱るばかり。少女は呆然と固まっている。すると、若いウェイターがおしぼりを手に現れ、少女の服からテーブル、椅子、足下の床まで、濡れたところを嫌な顔一つせずに拭いていった。

そこまでは、まあ普通かもしれない。だがしばらくすると、驚いたことに、新たなイチゴミルクのグラスを持ってウェイターが戻ってきた。店の方針なのか、バイトとおぼしいウェイターが気を利かせたのか。

どっちにせよ、こういう光景って東京でしか見られないよなあ。

たとえばパリじゃこういう場合、ここを先途とウェイターが苦情をつけてくる。店を汚した掃除が大変だとさんざん嫌味を言った挙げ句、多額のチップを要求する。客がこぼした飲み物のお代わりを持ってくるなんて、絶対にありえない。

日本が貧しくなりだして久しい。すでにGDPで中国に抜かれ、20年後だか30年後には韓国にも抜かれるそうだ。『ホームレス歌人のいた冬』(いい本だ)には、若いころ菅直人と一緒に市民運動をやり、現在は路上で暮らす元良家のお坊ちゃんが出てくる。

それでも日本人て、心にはまだ余裕があるんだね。遠い繁栄の名残なのか、大震災後の日本に充ちる癒し合いムードの一端なのか。

このせめてもの社会的財産を無策無能な政治家が窒息させてしまわないよう、切に祈るよ。
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