車での取引先周りの途中、下着女装の管理職はIショッピングモールに立ち寄った。
食事をするためだ。
誰でもトイレでショーツとパンティストッキングを履き替えた。
外勤の時は、昼にショーツとパンティストッキングを変えるようにしている。
「汗をかくので...」と自分に言い訳してみるが、これは何の役にもたたない。
食事に向かう途中、専門店街を歩く。
W社のランジェリーショップは通路から眺めているだけでも楽しい。
すると店頭でワゴン特別セールをしているではないか。
色とりどりのW社のショーツが3枚1000円。
これは破格の値段だ。
「欲しい....」
「穿きたい...」
下着女装の管理職は衝動を押さえられなかった。
ワゴンのなかのショーツを手に取って9枚くらいは買いたかった。
しかし、今の自分はカジュアルな私服でさえない。
スーツとネクタイをしたビジネスマンだ。
それに平日だから大丈夫だとおもうが、自分を知っている誰かに逢うとやっかいだ。
それでも、管理職はランジェリーショップに入っていった。
そして堂々と女性店員に声をかけた。
「今度の日曜日に行うゴルフコンペの景品にするんで、表のワゴンセールのものを12枚、小分けの袋にして用意してくれるかな」
その子は20才くらいのアルバイトらしい。
管理職の堂々とした言い方に何の疑念も持たないようだ。
「はい、かしこまりました。ただ、お時間は30分くらいいただけますか。包装するので」
「いいですよ。これから食事だから、その後によるから。それと領収書、上様でいいから切っておいてくれる」
「はい、わかりました」
「じゃ、よろしく.....」
管理職はうれしくなって飛び上がらんばかりになったが、そんなことはできない。
ゆっくりと通路の方に歩き出したところ、彼女から声をかけられた。
「あのう、色とかはどうしますか? それとサイズはLですか、Mですか」
おおっ、鋭い質問だ。
一瞬、答えに詰まったが、そこは機転のきく管理職。
「サイズはそうだな、どっちでもいいんだけど、Lにしてください。色は適当にバランスよくまぜてください」
「はい、わかりました.....」
1時間後、食事を終えた管理職はランジェリーショップにに立ち寄った。
「お待ちしてました。出来上がってます」
ほほえみながら、12枚の紙袋に入ったショーツを渡すアルバイト嬢。
「ありがとう...」
お金を支払い、上様と書いた領収書を受け取る管理職。
アルバイト嬢はコンペの景品ということに疑念はもっていないようだ。
「コンペ、天気がいいといいですね」
丁寧なお辞儀をして、管理職を見送る。
いい店員にあたったなと管理職は思った。
『でも、お嬢さん。コンペは僕一人だけでおこなうんだ。景品も僕が独り占めだ』
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