おはようございます。
『女にされたジョージ』のご紹介も今回で終了です。
女にされたジョージ③
――女装。
ジョージ・F・シナモンは、その隠れ家で、その密かな愉しみを知った。、
いや、そればかりではない。
彼は、リズの亭主であるグリーンから、他人には云えない快感を教わったのだ。
グリーンは、ギャングのくせに、いわゆる両刀使いであった。
夜遅く、山小屋に戻って来たグリーンは、二階の寝室へ入って来て、女装しているジョージをみると、
「こりゃあすげえ! 別嬪さんだ・・」
と舌なめずりし、いきなり、彼を抱いて唇を吸いつけたのだ。
生まれてはじめて、踵の高い女の靴をはいた彼は、よろけまいとするのに精一杯で、そのうち息を詰まらせそうになる。
グリーンは、
「お前、まだ男の味を知らねえだろう」
と云い、ベッドの上に彼を押し倒したのであった。
ジョージは抵抗した。
しかし、抵抗しながらも、なぜか自分でも合点がゆかないくらいに、昂奮してしまったのだった。
グリーンは、パンティを引き剥いだ。
そしてやにわに、ジョージの繁みに顔を埋めたのだ・・・・。
彼は、途方もない恍惚境を彷徨った。
ジョージは、そのときまで、オナニーすら知らない初心な子供であったのである。
グリーンは、着ているものをぬぎ捨てて、隆起した部分と、ジョージのアナルにクリームを塗りたくった。そして彼におおいかぶさったのである。
苦痛のー瞬が訪れた。
ジョージは、のけぞった。
グリーンは唇を吸いつけながら、ジョージの火のように熱くなった部分を、ゆっくり愛撫するのだった。
苦痛と洗惚とが、混ざり合って、十六歳の少年に襲いかかる。
やがて苦痛の方がうすらぎ、恍惚の旋律が高鳴りはじめた。
少年は、自分がー匹の胡蝶に、化身して行くのを知った。
瞼の裏に、華やかな幻想模様が浮き上り、ぐろくると渦巻きはじめて行く。
少年は、低く呻いた。
と同時に、背筋を刺すような、鋭い快感が走り抜けて行き、すべては終った。
グリーンは微笑し、
「さあ、これで、お前は俺の女になったわけだ・・・・」
と云い、今度は優しく接吻して来る。
ジョージは夢中になって、接吻に応えたのである。
グリーンはその夜、情婦のリズを放ったらかしにして、ジョージを愛しつづけた。
「いいか。女に惚れるんじゃねえぜ。それよりも、女になって、男に可愛がられた方が、どんなにましか知れやしない」
グリーンはそう云いつづけた。
ジョージが微睡んだのは、夜明け近くである。
リズは、自分の亭主から、ジョージが愛欲の対象にさせられたことを、百も承知しているくせに、平然として、昼どろ目覚めたジョージに、
「さあ、お風呂に入って・・・・」
と、昨日と同じく、まめまめしく仕えて呉れたのだった。
昨日とーつだけ違うことは、パンティをはく前に、
「痛むんじゃないかい?」
と云って、薬品をたっぷり塗り込んだ脱脂綿を、ある部分にあてがって呉れたことだけである…。
グリーンは逃避行の五日間のあいだ、夜はジョージを独占した。
ステーション・ワゴンで移動するのだが、大胆にもグリーンは、女装したジョージを連れて、田舎町のレストランに入ったりしたものだ。
誰も、彼が男であるとは思わなかった。
可愛らしいハイティーンのお嬢さんと思って呉れたようである。
この五日間の体験は、ジョージ・F・シナモンの人生を、すっかり狂わせてしまったのであった。
第一に、女性に対する欲望を、すっかり喪わされてしまったのだ。
逞しい男性に、荒々しく抱擁されてみたいとか、エレクトした部分に入念な接吻をしてみせたいとか、考えるような人間に改造させられてしまったのである。
次に、男性の着る物に対して、なんとなく嫌悪感を抱くようになったことであろうか。
父親の命令で、大学に進んだころから、ジョージは最速、その欲望に耐えきれなくなったのだった。
髪の毛を、女性のように伸ばしはじめたのは、そのためである。
ちょうど、ビートルズの影響で、男性の長髪は流行しはじめていたから、逆の意味で好都合だった。
そして、髪の毛が長く伸びると、ジョージはパーマをかけ、化粧をし、上から下まで女性の衣類を身に纏って、完全な女になりきったのだ。
そして父親に買って貰ったビバリー・ヒルズの家で、女として暮しだしたのだった。
この家の中で、ジョージはー人の女性であった。そして同棲する相手の男に対して、妻の形で献身的に仕えたのである・・・・。
梶山季之著「男を飼う<鞭と奴隷の章>」(集英社1969年刊) から引用
苦痛のー瞬が訪れた。
ジョージは、のけぞった。
グリーンは唇を吸いつけながら、ジョージの火のように熱くなった部分を、ゆっくり愛撫するのだった。
苦痛と洗惚とが、混ざり合って、十六歳の少年に襲いかかる。
やがて苦痛の方がうすらぎ、恍惚の旋律が高鳴りはじめた。
少年は、自分がー匹の胡蝶に、化身して行くのを知った。
瞼の裏に、華やかな幻想模様が浮き上り、ぐろくると渦巻きはじめて行く。
少年は、低く呻いた。
と同時に、背筋を刺すような、鋭い快感が走り抜けて行き、すべては終った。
このシーン描写はロマンチックですね。
梶山季之先生の筆力の深さを改めて感じます。