1970年代、TBSラジオは25時から「パックインミュージック」という深夜放送を行っていました。
私か受験勉強でよく聞いていた1975-76年ころは、火曜日は小島一慶、水曜日は愛川欽也、木曜日は南こうせつ、金曜日は野沢那智・白石冬美、土曜日は山本コータローだったと記憶しています。
そしてもちろん欠かさず聞いていたのは金曜パック。
なにしろ面白い。
投稿する諸兄の原稿をまた野沢那智が上手に読む。
さすがは劇団薔薇座だ。
「お題拝借」というテーマに沿って、日本全国から腕に覚えの投稿者が手紙を送ってくるんですから面白くないわけがない。
その人気の勢いで『もう一つ別の広場』という人気の投稿を集めた本まで発行されたのです。
今日は古いパソコンのデータを見ていたら、金曜パックで話された「女装はなし」が出てきました。
出所は『もう一つ別の広場』ですが、これが何冊も刊行されていて特定できません。
しかし面白い話なんで、掲載してもいいでやんすよねぇ、天国のナッちゃん・チャコちゃん.....。
ではでは、金曜パック「女装した1日」をお聞きください。
女装をした1日
小生今週のお題を聞き、ペンを取ることにしたしだいであります。これは、小生の人生にとって、とてもいやなことと言うか、うれしいことと言うか、いやらしいと言うかなにしろ変な経験であったんです。
小生は、川崎の小杉という所に所在いたしますある私立大学夜間部の学生で、今年の三月で十九歳になるホットなかわいらしい男の子チャンなんでございますの。あれは今年の一月七日でした。小生の学友の清田の下宿で、同じく学友の岩崎と小田部との四人で新年会をやったんでございます。清田と岩崎と小田部というのは当大学でも有名なホモ三角関係なんでありんす。
その日午前十一時頃から飲みはじめてそろそろしらけた空気が室の中をつつみはじめた午後二時頃、清田が小生にこんなことを言い出すんでございます。小生のいちばん大きらいな女の話なんでございます。
「おいK! おまえほんとにだらしがねぇなアー、スキな女に電話もかけられぬエんだからなア、おまえそれでもチンポコもってんのか?」
本来なら内気な小生でありますから、気がちっちゃくて、チンポコもちっちゃくてとてもそんなだいそれたことはできないのでどざいます。しかし、しかしですよ、この時ばかりは小生酒のいきおいもあってそれらも大きくなり、
「バッキャッローウ! 女がなんでエ、テメェーなぁパパイヤ三つでも四つでもある女にだって電話ぐらいかけられるってんだイ」
「ほざいたなー、オメェ! よしジャ 佐野さんの所に電話してボカァーあなたを愛しています。結婚してくださいって言ってみるい!」
「バッキャロー! ナメルなってんだ。一〇回だって四〇回だって言ってやらーァ」
「テメェ武士の言葉にニ言はネェーナー! できるかどうか五〇〇〇円かけるか?」
「イイじゃねえか、上等じゃーねえか、やったろー!」
と、言ったまではよかったんでこざいますが、それから四〇分か五〇分ぐらいしてから電話ボックスまで四人で歩いて行き、いざかけるという段になると、急にヨイがさめてしまい恐怖のおののきが小生の頭をかすめはじめたんでございます。一秒間に五二〇回のスピードで。
「早く電話をしろよ、五〇〇〇円だろ、五〇〇〇円」と岩崎が好色そうな目つきで、
「グスグス、シュル、シュル、シュル……(小生が鼻水をすする音)できないヨーやっぱりイーー」
「ナニィー! じゃ五〇〇〇円ちょうだい、くれよ五〇〇〇円!」と清田
「五〇〇〇円ないの……オレ」と小生。
「テメェ、男の約束を何だと思ってんだア? できないじゃすまぬエーんだぞ。どうすんだ、テメェこのオトシマィとうつけてくれるんだヨー、エー?」
「たのむよ、今度だけは、ナッ! ナッ! 清田の言うことなら何でも聞くからさ、ナッ! じゃー今日一日、清田の言うこと何でも聞くからさア」
「本当に何でも聞くんだなアー?」と清田はニ、三〇秒考えてなにかとんでもない名案を思いついたらしく、「ウワアー、、ア、ア、フ……」
と大声で笑いながら小生をジロジロと見て、
「よし、これから佐藤の下宿に行こう」。佐藤というのは清田の親しい女友達で、清田同様スケべで、強くて大きくて俗に言うスケ番ふうの女なんでぐざいます。そこで岩崎と小田部がなんだ、なんだと清田に聞くと清田は、ムニャムニャと小声でなにかをささやくと、どうでしょうニ人とも広島の原爆のごとくのすさまじさで笑い出すんでございます。そして佐藤さんの家につくと、清田は佐藤さんにこう言うんですヨ。
「オィ、こいつに化粧させて、女のかっこうをさせてやれ!」
「ええエ? ほんとにやるの? 本気?!」と、おっぴらいた目をした佐藤さん。
「いいから、女にしろってんだ。もちろん、いやだとは言わないよなアー?」
「うん」と、しかたなく小生うなずき、このひどい屈辱の反面に、このカワイコチャンの服を着ることができるということや、ひょっとしたら、このカワイコチャンのパパイヤマスクもつけるのかしらなどという、不安に期待のまざった複雑な気持ちで化粧をし着変えをして、胸と腰をなおしたんでございます。
もともと、小生はやせており、カミノ毛は長く、顔はピーターなどはケツにも及ばぬというほどの美少年でありますから、顔のほうはすぐにでき、服はパンタロンにしようとしたんでございますが、小生のサイズに合わす、ロングスカートにし、コンのパンティーストッキングをはき、のどぽとげが見えないように、トックリの白いセーターを着、マントのようなものを着て出来上がりでございました。彼女ったら、ひどいんですヨ。小生寒がりなのでいつもももひきをはいているんですけど、その時も、ももひきの上からパンストをはこうとしたら、そんなんじゃダメ! と言ってむりやり小生のももひきをひっべがしたんでございます。その時は、もうすこしでパンツもいっしょにひっべがされるところでしたんでございますヨ。エッチですねエ 女性は。
そして、出来上がった小生と言ったら、あまりの美しさに自分で自分にだきつきたくなったほどなんでこざいます。清田も岩崎も小田部も小生の美しさに見とれてしまうほどでしたヨオ。
「K、おまえのチンポコどこかでまちがってくっついて来たんじゃねエーのか?」と言って、小生のナニのあたりをさわるんでどざいます。そして、
「やっぱりあるなァー」とふしぎそうに小生の顔を見かえすんでございます。あのバカどもめが、いっしょにフロ屋に行って見せあった仲だというのにネェー、今さらなくなるはずがあるわけないんでございますヨ。まあそんなことはともかくとして、清田は小生の顔と体をしげしげとながめ、それをおえると、
「おいK、出かけるぞ」と、小生が「このかっこうでかよオ?」と聞きかえすと「あったりまえだよ 男の約束だからな!」
小生は、しかたなくと言うよりは、なんだか自分の美しさを他人に見せてやりたい気分になったので、彼女のゲタ箱から小生の足に合うはき物をさがし、結局小生の足の方がだんぜんと大きかったので、彼女の女もののサンダルをはき、小生と清田、岩崎、小田部は小杉駅へと出かけて行ったのでございます。その途中、いやらしい目つきをして小生を見る男性諸君がおおぜいいらっしゃいましたので、小生は、おもしろそうなので男どもに色目を使ってやったんでございます。そうするとどうでしょう。彼等は立ち止まって小生を見つめるんででざいます。そして小杉の駅につき、小生が清田に
「オィ、どこへ行くんだヨォ?」
「渋谷へ行くんだ、渋谷の町中を歩き回わるんだ、フッフッフッ」 出所:「もうひとつ別の広場」ブロンズ社刊
続く
私か受験勉強でよく聞いていた1975-76年ころは、火曜日は小島一慶、水曜日は愛川欽也、木曜日は南こうせつ、金曜日は野沢那智・白石冬美、土曜日は山本コータローだったと記憶しています。
そしてもちろん欠かさず聞いていたのは金曜パック。
なにしろ面白い。
投稿する諸兄の原稿をまた野沢那智が上手に読む。
さすがは劇団薔薇座だ。
「お題拝借」というテーマに沿って、日本全国から腕に覚えの投稿者が手紙を送ってくるんですから面白くないわけがない。
その人気の勢いで『もう一つ別の広場』という人気の投稿を集めた本まで発行されたのです。
今日は古いパソコンのデータを見ていたら、金曜パックで話された「女装はなし」が出てきました。
出所は『もう一つ別の広場』ですが、これが何冊も刊行されていて特定できません。
しかし面白い話なんで、掲載してもいいでやんすよねぇ、天国のナッちゃん・チャコちゃん.....。
ではでは、金曜パック「女装した1日」をお聞きください。
女装をした1日
小生今週のお題を聞き、ペンを取ることにしたしだいであります。これは、小生の人生にとって、とてもいやなことと言うか、うれしいことと言うか、いやらしいと言うかなにしろ変な経験であったんです。
小生は、川崎の小杉という所に所在いたしますある私立大学夜間部の学生で、今年の三月で十九歳になるホットなかわいらしい男の子チャンなんでございますの。あれは今年の一月七日でした。小生の学友の清田の下宿で、同じく学友の岩崎と小田部との四人で新年会をやったんでございます。清田と岩崎と小田部というのは当大学でも有名なホモ三角関係なんでありんす。
その日午前十一時頃から飲みはじめてそろそろしらけた空気が室の中をつつみはじめた午後二時頃、清田が小生にこんなことを言い出すんでございます。小生のいちばん大きらいな女の話なんでございます。
「おいK! おまえほんとにだらしがねぇなアー、スキな女に電話もかけられぬエんだからなア、おまえそれでもチンポコもってんのか?」
本来なら内気な小生でありますから、気がちっちゃくて、チンポコもちっちゃくてとてもそんなだいそれたことはできないのでどざいます。しかし、しかしですよ、この時ばかりは小生酒のいきおいもあってそれらも大きくなり、
「バッキャッローウ! 女がなんでエ、テメェーなぁパパイヤ三つでも四つでもある女にだって電話ぐらいかけられるってんだイ」
「ほざいたなー、オメェ! よしジャ 佐野さんの所に電話してボカァーあなたを愛しています。結婚してくださいって言ってみるい!」
「バッキャロー! ナメルなってんだ。一〇回だって四〇回だって言ってやらーァ」
「テメェ武士の言葉にニ言はネェーナー! できるかどうか五〇〇〇円かけるか?」
「イイじゃねえか、上等じゃーねえか、やったろー!」
と、言ったまではよかったんでこざいますが、それから四〇分か五〇分ぐらいしてから電話ボックスまで四人で歩いて行き、いざかけるという段になると、急にヨイがさめてしまい恐怖のおののきが小生の頭をかすめはじめたんでございます。一秒間に五二〇回のスピードで。
「早く電話をしろよ、五〇〇〇円だろ、五〇〇〇円」と岩崎が好色そうな目つきで、
「グスグス、シュル、シュル、シュル……(小生が鼻水をすする音)できないヨーやっぱりイーー」
「ナニィー! じゃ五〇〇〇円ちょうだい、くれよ五〇〇〇円!」と清田
「五〇〇〇円ないの……オレ」と小生。
「テメェ、男の約束を何だと思ってんだア? できないじゃすまぬエーんだぞ。どうすんだ、テメェこのオトシマィとうつけてくれるんだヨー、エー?」
「たのむよ、今度だけは、ナッ! ナッ! 清田の言うことなら何でも聞くからさ、ナッ! じゃー今日一日、清田の言うこと何でも聞くからさア」
「本当に何でも聞くんだなアー?」と清田はニ、三〇秒考えてなにかとんでもない名案を思いついたらしく、「ウワアー、、ア、ア、フ……」
と大声で笑いながら小生をジロジロと見て、
「よし、これから佐藤の下宿に行こう」。佐藤というのは清田の親しい女友達で、清田同様スケべで、強くて大きくて俗に言うスケ番ふうの女なんでぐざいます。そこで岩崎と小田部がなんだ、なんだと清田に聞くと清田は、ムニャムニャと小声でなにかをささやくと、どうでしょうニ人とも広島の原爆のごとくのすさまじさで笑い出すんでございます。そして佐藤さんの家につくと、清田は佐藤さんにこう言うんですヨ。
「オィ、こいつに化粧させて、女のかっこうをさせてやれ!」
「ええエ? ほんとにやるの? 本気?!」と、おっぴらいた目をした佐藤さん。
「いいから、女にしろってんだ。もちろん、いやだとは言わないよなアー?」
「うん」と、しかたなく小生うなずき、このひどい屈辱の反面に、このカワイコチャンの服を着ることができるということや、ひょっとしたら、このカワイコチャンのパパイヤマスクもつけるのかしらなどという、不安に期待のまざった複雑な気持ちで化粧をし着変えをして、胸と腰をなおしたんでございます。
もともと、小生はやせており、カミノ毛は長く、顔はピーターなどはケツにも及ばぬというほどの美少年でありますから、顔のほうはすぐにでき、服はパンタロンにしようとしたんでございますが、小生のサイズに合わす、ロングスカートにし、コンのパンティーストッキングをはき、のどぽとげが見えないように、トックリの白いセーターを着、マントのようなものを着て出来上がりでございました。彼女ったら、ひどいんですヨ。小生寒がりなのでいつもももひきをはいているんですけど、その時も、ももひきの上からパンストをはこうとしたら、そんなんじゃダメ! と言ってむりやり小生のももひきをひっべがしたんでございます。その時は、もうすこしでパンツもいっしょにひっべがされるところでしたんでございますヨ。エッチですねエ 女性は。
そして、出来上がった小生と言ったら、あまりの美しさに自分で自分にだきつきたくなったほどなんでこざいます。清田も岩崎も小田部も小生の美しさに見とれてしまうほどでしたヨオ。
「K、おまえのチンポコどこかでまちがってくっついて来たんじゃねエーのか?」と言って、小生のナニのあたりをさわるんでどざいます。そして、
「やっぱりあるなァー」とふしぎそうに小生の顔を見かえすんでございます。あのバカどもめが、いっしょにフロ屋に行って見せあった仲だというのにネェー、今さらなくなるはずがあるわけないんでございますヨ。まあそんなことはともかくとして、清田は小生の顔と体をしげしげとながめ、それをおえると、
「おいK、出かけるぞ」と、小生が「このかっこうでかよオ?」と聞きかえすと「あったりまえだよ 男の約束だからな!」
小生は、しかたなくと言うよりは、なんだか自分の美しさを他人に見せてやりたい気分になったので、彼女のゲタ箱から小生の足に合うはき物をさがし、結局小生の足の方がだんぜんと大きかったので、彼女の女もののサンダルをはき、小生と清田、岩崎、小田部は小杉駅へと出かけて行ったのでございます。その途中、いやらしい目つきをして小生を見る男性諸君がおおぜいいらっしゃいましたので、小生は、おもしろそうなので男どもに色目を使ってやったんでございます。そうするとどうでしょう。彼等は立ち止まって小生を見つめるんででざいます。そして小杉の駅につき、小生が清田に
「オィ、どこへ行くんだヨォ?」
「渋谷へ行くんだ、渋谷の町中を歩き回わるんだ、フッフッフッ」 出所:「もうひとつ別の広場」ブロンズ社刊
続く