何かあるとアンケートに頼るというのは、大学生の卒業論文作成に特有のことかと思っていたが、技能実習生に対する法務省の行為も似たり寄ったりで、いかにも客観的で公正なデータを導き出したようなふりをして、恣意的な結果を生んでいることが野党のチェックによって明らかになった。
テレビでは、アンケート用紙の内容が、一瞬しか放映されなかったが、失踪の理由として挙げられ、該当するものにチェックを入れるようになっている項目が、「低賃金」と「最低賃金以下」が並列する形で存在し、「最低賃金以下」にチェックを入れた者は、わずかに20数人だったという。野党の吟味の結果によれば、1500人以上が、実は、「最低賃金以下」であったということが明らかになった。
法務省の官僚の能力が低くて、こういういかがわしい結果が得られたのかと疑われもするが、官僚はそれほど無能ではなかろう。意図する結果を生むための企みの結果のようである。「最低賃金以下でなくとも、低賃金にいやけがさして失踪したのである」という雇用者の違法行為でなく、実習生の責任であったという事実を生み出すための工夫だったようである。
そもそも、「最低賃金以下」と「低賃金」は、並列関係ではない。前者は、後者の下位項目の一つである。アンケート作成者は、無能であったのか、有能でありすぎたのか、結果として法務省や与党に都合のいい結果を生んだ。多分、意図的な行為の結果に違いない。未熟な学生の行為とは違うのだから。
世の中には、さまざまな調査、アンケートの結果としての数字が提示される。数字の出てくる所以を理解しておかないと調査者、作成者の思惑に踊らされることになる。このことを再認識するよい機会になった。
それにしても、技能実習生に関するこの実態(野党による吟味の結果)は、日本人の一人として恥じ入るばかりである。