それ、問題です!

引退した大学教員(広島・森田信義)のつぶやきの記録

書店で考えたこと 2

2019-04-01 18:14:27 | 教育

 古書の価格についてである。  大手の古書店で、岩波の『漱石全集』の何巻だったか、大判の箱入りの本が二冊棚に並んでいた。出版されたばかりの頃には、ずいぶん高価な本であったので、興味を持って価格を見ると、なんと200円台。そう言えば、かつてのベストセラー小説、『ハリーポッター』も、今や200円台で手に入る。  私が学生の頃は、本を購入するということは、生活の質に響くほどの行為であったが、今や100円ショップで、ちょっと贅沢をする程度のものになっているようだ。しかし、それは古書の場合で、新刊書は相変わらず割高感がある。この大きな落差はなんとかならないか。古書店は、出版社や著者の憎むべき存在になっているようだが、安価でも代金を払っているだけ、図書館よりは良心的であるとも言える。その図書館も、新刊書を購入してくれる読者を育てる役割を果たしているかもしれないので、大らかに構えていて欲しい。  このところ重たい戦争物(史実を大切にした)を読み重ねてきたが、今日は、本屋大賞になった作品を読んでみた。そして、阿川弘之や吉村昭が棚から姿を消す理由が飲み込めた。今後、ますます、この傾向は進むことになろう。せめて古書店にはがんばって欲しいのだが……。


書店で考えたこと 1

2019-04-01 06:39:39 | 教育

 蔵書の棚から、阿川弘之の『井上成美』と『暗い波濤』(上下)を抜き取り、数日かけて読み終えた。  すでに読んだものばかりのはずが、後者については、内容に全く覚えがない.前者についても記憶と大きな差があって愕然とした。古い映画を何度も観て感動するのとよく似ている。これでは、新しい本を購入する必要などなく、山ほど抱えている蔵書を再読、三読するのがよいと思い知らされた。  阿川弘之の『山本五十六』(上下)があったはずだから、ついでに読んでみようと書棚を探したが出てこない。退職、転居を経ているので、その間に他人に譲ったり、処分したり、倉庫に入れたりした可能性があり、探しても出てくるかどうか分からない。そこで、書店に出かけたのだが、なんと市内の書店では、入手不能であることが分かった。探している作品のみならず、「阿川弘之」の作品そのものがないのである。規模の大きな古書店も事情は同じであった。結局ネットで注文して入手することができたが、昨今の書店では少し前の世代の作者は、完全に忘れ去られている。必要なもののうち、書店で入手できないものはネットで購入できる。それも送料なしで、一週間以内に入手可能である。これでは地方の弱小書店は存続不能になるはずである。「阿川」と表示のある棚にあるのは、弘之の娘さんの佐和子女史のものばかりで、2015年に亡くなった父親は、「もう忘れられたか」と、苦笑しているに違いない。