暫くの間、雨続きで陽射しがなかったからササユリも蕾のままで開花を待たされていた。蕾が膨らんで白い色に変
わり薄らとピンクに近い色になると開花が近い。昨日,今日と弱いながら日差しが出てきたら、やっと色の変化が
出て来た。山小屋周辺は谷間だがこんな場所でも昔は稲作が行われていた。恐らく減反政策で稲作が止められ廃田
になったのだろうが、かつての農地は耕作しなくなり地目も原野に変わってしまったのは40年以上前のことだと
推察される。
私が山を譲り受けてからもう15年近くなる。当時でさえ25年以上は放置された廃田だったから荒れに荒れ放題で
稲作に欠かせない水路も土砂で埋まり大雨の度に流れ易い所を作り出していた。水路と言うより溝で稲作の田だと
思わせるものなど何一つないジャングル状態だった。
山小屋を建てるために雑木を伐採、何十年もお日様の光が射さなかった土地に待望の陽が落ちるようになった。木
を伐採して綺麗にすることを『山をこる』と言うが、恐らくこの辺りの方言だと思う。
『山をこるとササユリの花が咲く』は山購入の道筋を引いてくれた糸さん(故人)の言葉。これは本当だった。
ササユリは種からだと数年経たないと花は咲かない。山を綺麗にしたらササユリが咲き始めた。近くにササユリは
咲いていなかったし種が飛んで来ても直ぐに花は咲かないから球根が耐えながら生き続けていたのだろう。
山小屋を建ててから周辺で数は少ないもののササユリが咲き始め今年も10本近くの蕾を確認している。実は、尾
根筋の隠れ場には沢山のササユリが咲いているから、じっくりと探せばもっと多くのササユリがあると思われる。
今年のササユリ・ハイライトは山小屋の進入路にある蕾が五つついたものだ。これくらいのものになると茎に虫が
入り込み倒されることが多いのに、こいつは元気よく五つとも開花させる勢いだ。高さは1㍍近くもある立派なも
のだ。過去の最高は八又だったが残念ながら五つ咲いたところで虫に茎を喰い折られてしまった。
道の側で目立つので白い紐で囲って『取らないで』の看板はないが無言のアピールをしているから、ここで満開を
迎えてくれると信じている。