現地で「今治加計獣医学部を考える会」共同代表の黒川氏(左から3人目、白シャツの人)から説明を受ける民進党議員団。(撮影/横田一)
民進党の「加計学園疑惑調査チーム」(共同座長は今井雅人衆院議員と桜井充参院議員)の衆参議員6名は5月19日、獣医学部が設置される愛媛県今治市の加計学園の建設現場などを現地視察した。
調査チームは、『朝日新聞』が安倍首相の指示を示唆する内部文書を報じた17日に発足。関連部署の官僚からヒアリングを17日と18日に行ない、発足3日目には疑惑の現場を訪ねたのだ。愛媛県庁で桜井氏は視察の狙いをこう語った。
「一番大きいのは知事の発言。『国家戦略特区で出したらどうか』というアドバイスが内閣府からあって、それからトントン拍子で進んだ(許可がおりた)という知事の発言がありました。ところが、昨日(18日)に私が農水委員会で(内閣府で国家戦略特区担当の)藤原豊審議官に質問をした時には『内閣府からそういう働きかけをしたことはない』と答弁。知事発言と食い違っていたので、確認をさせていただきに来ました」
実際、中村時広・愛媛県知事は4月12日の会見で内閣府の助言について、次のように明言していた。
「(加計学園の獣医学部予定地は)今治が古くから教育機関の誘致を図って、幾度となく挫折をし、私も就任以降、構造改革特区で提出をし続けて、ことごとくだめで、途中で『これはもう無理じゃないか』と感じた」「途中で内閣府
から助言があって、『国家戦略特区で出したらどうか』ということだったので、出したら許可が下りた」
また桜井氏は、民進党の福田剛県議からも「内閣府の方から県地域政策課の担当者に説明があった」という情報を得ていた。そこで調査チームは県知事や地域政策課の担当者と面談、藤原審議官の国会答弁との食い違いについての事実確認をしようとしたのだ。
しかし知事も副知事も担当者も不在で話を聞けず、文書で質問状を送って回答を得ることになった。なお県は当初は「調整中」だったが、最後は「会えない」と対応が変わったという。「官邸から圧力がかかったのだろう」(桜井
氏)。
続いて今治市役所を訪問したが、ここでも市長や副市長や担当者から話が聞けず、文書での質問状を送ると告げるにとどまった。
【“官製談合事件”の様相】
最後に調査チームは、獣医学部の建設現場を視察。駆け付けた市民団体「今治加計獣医学部を考える会」の黒川敦彦・共同代表らから、驚くべき実態を告げられた。
(1)市民の半数以上が「国が大学を作ってくれるから嬉しい。大半のお金を出してくれる」と思っているが、実際は「市税96億円を拠出(歳出の12%)」。一方、獣医学部開学の税収増は年間3000万円程度で回収には320年もかかる。しかも市民への説明会は、工事が始まった後だった。
(2)獣医学部には細菌などの生物災害の危険度(BSL)3施設を設置する計画だが、市民には「危険度2程度の研究しかしない」と一段階低いリスクのように説明。
(3)市役所のどの担当課に聞いても「『急げ』『急げ』と言われてきている」「平成30年開学をしないといけないから、この日程なのです」と話している。急がせている主体は内閣府しか考えられない。
(4)市有地が加計学園に無償譲渡される前にボーリング調査を実施。
黒川氏は「『だまし討ちを受けた』という気持ちを持っている。96億円を地場産業振興に使う選択肢もあったはず」とも説明。加計疑惑は“国家的詐欺事件”の性格を帯びると同時に、首相主導の“官製談合”事件の様相も呈してきた。
視察後の囲み取材で今井氏は「官邸の意向が働いて内閣府主導で話が進んだ疑念がある」「森友は官僚の忖度だろうが、加計学園疑惑は首相の直接指示の可能性がある」と強調。朴槿恵前韓国大統領事件とも重ね合わせた。
木内孝胤衆院議員も、加計学園の競合相手だった京都産業大学が新たな条件付加で排除された選考過程を「公正中立な決定とは言えない」と問題視。国家戦略会議トップ(議長)の安倍首相が「天の声」を発して本命が決まった“官製談合”疑惑が浮上したといえる。中央と地方、両面からの追及が期待される。
(横田一・ジャーナリスト、5月26日号)