家に帰って、去年の年賀状を探していると…
昔の夢日記が見つかった。毎日、夢を書き留めていたもので、ほとんどが一行だが、一つだけ長いものがある。
久々に読んでみたが、我ながら面白い。
最後まで、読んでくれたら嬉しく思う。
今日も誰かに追いかけられている。それが誰であるのかわからない。逃げていると、小屋につきあたった。行き止まりだ。もうダメだと思った時、仮面ライダーの変身セットを見つけた。これを身につければ空を飛べる。そう思い、やっと身につけた。手袋が異常に重かった。最後にベルトを巻いた。ベルトの右にボタンがあるのでスイッチをオンにした。すると体が宙に浮き始めた。ちょっと練習すると要領を得て何とか飛べるようになった。
幾度か近くのビルにぶつかりそうになったが、どうにかかわして事なきをえた。空を飛べれば簡単に追跡者から逃げることができる。でも、仮面ライダーセットが手に入った今、闘わねばならぬ気がしている。そんな時、悪そうな兵隊が何台ものジープに乗って道路を走っていた。何故か彼らが敵に思えた。僕は勇敢にも彼らの1人に空からライダーキックを試みようとした。やり方がわからないので、重力の力を利用することにした。スイッチを空でオフにして、昔見た仮面ライダーのように足を伸ばした。当たったが、思ったよりスピードが出ず、全く効かなかった。とりあえず逃げることにした。すぐにスイッチをオンにして、空へ逃れた。彼らはみんなで何かを叫んでいたが、無視して逃げた。
しばらく飛んでいると、舗装されていない駐車場のある喫茶店を見つけ、降りることにした。そこの親父が駐車場でバイクを修理していた。何故かそのバイクは直感的に自分のものだと思ったが、その親父に言い出せない。すると親父がこっちを向いて「ほら、できたぞ。お前のだ。」と言う。素直に貰うことにした。バイクは自分の思うままに操ることができる。「今度こそ奴等を倒せる。」そう呟きながら、さっきのジープ兵達を探しに行った。
走っていると庭に花一杯の白い家を見つけた。僕はバイクを止めて、全てを忘れ、もとの姿に戻り、その天使が住んでいるような白い家に吸い込まれていった。気がつくと部屋の中のこたつでうとうとしていた。窓の外に自分のバイクが見えた。花に囲まれたバイクを見ていると幸せだった。 突然、玄関のところに人影が見えた。この家の住人のようだ。眼鏡をかけた中年の男のようだった。心臓が鳴り始めた。「間違いない。この男にいつも追いかけられている。見つかれば、殺されるかもしれない。」そう思い、彼が玄関に入ると同時に、部屋の窓を開けて飛び降りた。もう空も飛べず、バイクもなく、気ばかりが焦った。見つかった。その男が走って追いかけてくる。振り返る勇気はなく、ひたすら走った。
近くに山があり、必死に山の中に逃げ込んだ。どうにか彼から逃げきることができた。歩いていると、見覚えのある小屋にたどり着いた。仮面ライダーセットが置いてあった。変身すればまた同じ繰り返しが待っていて、その歯車から一生抜け出せない気がした。同じ過ちを繰り返してはならない。そう決意して、再び仮面ライダーセットを身につけた。やはり手袋は重かったが、簡単に空を飛ぶことができた。そして勇気を出して、今逃げてきた道を引き返した。花一杯の白い家が見えた。悪魔の住む家だ。その家は夕日に照らされていた。日が暮れる前に男の正体をつきとめ、闘う決意をした。闘わねば、一生追いかけられる気がする。仮面ライダーのまま、玄関のドアを叩いた。心臓が飛び出るほどの緊張だ。しばらくして玄関のドアが開いた。どこかで見たことがある親しみやすい眼鏡の中年。僕を追いかけるこの悪魔と思っていた男が微笑んだ。緊張が一気にほぐれ、逃げていた自分が恥ずかしくなった。同時にこれから逃げずにすむことに安堵を感じた。その男はペ・ヨンジュンだっ
た。
夢は本当に面白い。現実はたまに逃げることはあっても、夢の中だけは逃げたくないものです。最後まで読んでくれた人、ありがとう。グッドナイト。