私的海潮音 英米詩訳選

数年ぶりにブログを再開いたします。主に英詩翻訳、ときどき雑感など。

雑記: 楽園の復活① ※訳詩に非ず

2009-12-06 22:07:03 | 自作雑文 楽園の復活
 ※次に訳するものが決まるまでしばらく雑記。テーマは「わたくしの感じる詩情とはなんぞや?」。今年夏ごろ孤独に書き連ねていたものです。

 楽園の復活
――マイ・コールド・プレイス――

Ⅰ 
 ファンタジー作家には二つの種類がある。楽園を描く作家と描かない作家である。論拠抜きの私見を述べれば、J・トールキンとC・S・ルイスは描く。ル=グウィンは描かない。L・アレギザンダーとD・ウィン=ジョーンズも描かない。J・K・ローリングもむろん描かない。N・スプリンガーも描かない――否、むしろ描けない?――が、A・マキリップは描く。
 以上の分類からお分かりのように、ここでいう「楽園」とはけっして「異世界」のことではないし、それを描くか否かは、作品の評価とも、いわゆるハイ/ロウ・ファンタジーの区分とも関わりない。単にタイプの問題である。正直なところ、必ずしもファンタジーである必要さえないのだ。千のレプラコーンが乱舞しようとクディッチ会場が「楽園」ではないのと同じほど、メアリが見つける秘密の園はまぎれもなく「楽園」である。

 続