我が家で購買している某新聞のコラムより
日曜に書く
山上直子
それはまさに奇跡のような 1 通のメールだった。
4 月から大阪夕刊一面で、
読者の本にまつわるエッセーを募集し掲載する「ビブリオエッセ ー」が始まっている。
当初はいったいどれくらいの応募が来るのか、全く予想がつかなかっ た。
事前に紙面で募集を始めたものの、1 日、2 日と音沙汰のない日が過ぎていた。
胃がキリキリと痛みはじめたころ、編集局に舞い込んだのが、
「ジュディの言葉を胸に」と いうタイトルの、18 歳の女性からのメールだった。
100年経てもなお <『おじさん、私ね、今を生きてるの。』
ジュディはあしながおじさんへの手紙にこう書い た>で始まる。
瑞々しい感性のエッセーだった。取り上げた本は「あしながおじさん」(ジ ーン・ウェブスター著)100 年以上も前にアメリカの女流作家が書いた不朽の名作だ。
投稿してくれた女性は、小学生の時に読み、その後も繰り返し読み、今を生きる大切さを知 ったという。
将来を考えなければならない年齢になったが、
改めて主人公の言葉を胸に「今」 を生きて行く、と綴っていた。
本は人を作り、知らない世界への扉となる。
そんな実例がまさしくそこにあった。
心がほのぼのと温かくなるような83 歳の女性からの手紙もあった。
丁寧に手書きされた 文章の書き出された文章の書き出しはこうだ。
<孫娘に「今、何読んでるの?」と聞くと、
「森鴎外」と答えてみせてくれた、その本をぱ らぱらと繰って、
知っているけれど、実は読んでいないと気付いた。
私の小さな文庫本はも う茶色で、文字も小さい。
思い切って、新しい文庫本を買ってきた。
『舞姫』。作者もあらすじも知っているが、読んだことがないという本は案外多いものだ。
祖母と孫娘が同じ物語を読んで語り合い、森鴎外の世界を共有する。
これもまた、堀夢中で 始まった企画が、読者のおかげでようやく動き出したのだった。
厳しい活字業界
読書離れ、活字離れといわれて久しい。
<全国出版協会・出版科学研究所(東京)によると、 昨年の紙と電子を合わせた推定販売金額は、前年比 3.2%減の 1 兆 5400 億円だった。
紙の出版物(書籍と雑誌)に限ると同 5.7%減の 1 兆 921 億円で前年を割り込んでいる。
電子市場は 11.9%と増えたが、2479 億円と市場規模はまだまだ小さいのが現状だ。
なぜ人は本を読まなくなったのだろう。
文化庁の平成25年度「国語に関する世論調査」によると、1 か月に本を一冊も読まない人が 47.5%と最も多かった。
次いで「1、2 冊」が 34.5%、「3、4 冊」が約 10.9%だった。
そ して「読まない」人は 14 年度の調査と比べて 10 ポイントも増えていた。
「やっぱり若い人に読まない人が増えているんだろうな」と思ったが、意外な数字もあった。
「読まない」と答えた人を年齢別に見ると、最も多かったのは「70 歳以上」(59.6%)だったのである。
20代、40代はういずれよりも約 40%で、他の年代よりも割合は低かった。
だし、11 年前と比べると、すべての世代で「読まない人」の割合は増えていた。
人生は3 倍豊かに 「本」を読むことは、心の体操だと思っています」と、敬愛する画家、安野光雄さんが著書 「かんがえる子ども」(福音舘)に書いている。
「本を読まないでも、生きていけます。でも、本を読んで生きてきた人は、同じ十年生きて いても二十年も、三十年も生きたことになります。
本を読むことで人は何倍もの人生を生きることができるという。 これこそ読書のすばらしさだと思うがどうだろう。
少し前まで、本を読む人が減ったのは、テレビや娯楽の多様化のせいだと言われることが多かった。
今はそのテレビが、スマートフォンやインターネットに押されている。
栄枯盛衰、 人間の知的探求が続く限り、世の変化はとどまるところがない。
本に未来はあるのだろうか。
「本を読んで『心を磨き、鍛え、心が満ち足りること』は、心の中を美しくします。
お化粧品を塗るより、ずっと美しくなれるのです」(同書から)
その美しさは目に見えない。もし心からあふれたら、次は言葉にして語ってみよう書いてみ よう。
読者の喜びが倍になる。
(やまがみなおこ)
本との出会いは、この先も大事にしたい。
先日は職場の20代の女性に絵本を一冊プレゼントしました。
絵本と侮るなかれ
綺麗な挿絵と短い文章の中に「核心」に触れる言葉があります。
私はその「核心」に触れることで、
気づき、癒され、励まされ、前を向いて生きていくことができるのです。
でんでんむしのかなしみ新美南吉/作 井上ゆかり/絵
ブログ添付サイト
ちゃこ花房〜本日も波瀾万丈〜
ちゃこ花房
友人のサイト
おやたまキネマ
おやっさんの映画魂ッ!
魔窟チェロ家の宝物殿
日曜に書く
山上直子
それはまさに奇跡のような 1 通のメールだった。
4 月から大阪夕刊一面で、
読者の本にまつわるエッセーを募集し掲載する「ビブリオエッセ ー」が始まっている。
当初はいったいどれくらいの応募が来るのか、全く予想がつかなかっ た。
事前に紙面で募集を始めたものの、1 日、2 日と音沙汰のない日が過ぎていた。
胃がキリキリと痛みはじめたころ、編集局に舞い込んだのが、
「ジュディの言葉を胸に」と いうタイトルの、18 歳の女性からのメールだった。
100年経てもなお <『おじさん、私ね、今を生きてるの。』
ジュディはあしながおじさんへの手紙にこう書い た>で始まる。
瑞々しい感性のエッセーだった。取り上げた本は「あしながおじさん」(ジ ーン・ウェブスター著)100 年以上も前にアメリカの女流作家が書いた不朽の名作だ。
投稿してくれた女性は、小学生の時に読み、その後も繰り返し読み、今を生きる大切さを知 ったという。
将来を考えなければならない年齢になったが、
改めて主人公の言葉を胸に「今」 を生きて行く、と綴っていた。
本は人を作り、知らない世界への扉となる。
そんな実例がまさしくそこにあった。
心がほのぼのと温かくなるような83 歳の女性からの手紙もあった。
丁寧に手書きされた 文章の書き出された文章の書き出しはこうだ。
<孫娘に「今、何読んでるの?」と聞くと、
「森鴎外」と答えてみせてくれた、その本をぱ らぱらと繰って、
知っているけれど、実は読んでいないと気付いた。
私の小さな文庫本はも う茶色で、文字も小さい。
思い切って、新しい文庫本を買ってきた。
『舞姫』。作者もあらすじも知っているが、読んだことがないという本は案外多いものだ。
祖母と孫娘が同じ物語を読んで語り合い、森鴎外の世界を共有する。
これもまた、堀夢中で 始まった企画が、読者のおかげでようやく動き出したのだった。
厳しい活字業界
読書離れ、活字離れといわれて久しい。
<全国出版協会・出版科学研究所(東京)によると、 昨年の紙と電子を合わせた推定販売金額は、前年比 3.2%減の 1 兆 5400 億円だった。
紙の出版物(書籍と雑誌)に限ると同 5.7%減の 1 兆 921 億円で前年を割り込んでいる。
電子市場は 11.9%と増えたが、2479 億円と市場規模はまだまだ小さいのが現状だ。
なぜ人は本を読まなくなったのだろう。
文化庁の平成25年度「国語に関する世論調査」によると、1 か月に本を一冊も読まない人が 47.5%と最も多かった。
次いで「1、2 冊」が 34.5%、「3、4 冊」が約 10.9%だった。
そ して「読まない」人は 14 年度の調査と比べて 10 ポイントも増えていた。
「やっぱり若い人に読まない人が増えているんだろうな」と思ったが、意外な数字もあった。
「読まない」と答えた人を年齢別に見ると、最も多かったのは「70 歳以上」(59.6%)だったのである。
20代、40代はういずれよりも約 40%で、他の年代よりも割合は低かった。
だし、11 年前と比べると、すべての世代で「読まない人」の割合は増えていた。
人生は3 倍豊かに 「本」を読むことは、心の体操だと思っています」と、敬愛する画家、安野光雄さんが著書 「かんがえる子ども」(福音舘)に書いている。
「本を読まないでも、生きていけます。でも、本を読んで生きてきた人は、同じ十年生きて いても二十年も、三十年も生きたことになります。
本を読むことで人は何倍もの人生を生きることができるという。 これこそ読書のすばらしさだと思うがどうだろう。
少し前まで、本を読む人が減ったのは、テレビや娯楽の多様化のせいだと言われることが多かった。
今はそのテレビが、スマートフォンやインターネットに押されている。
栄枯盛衰、 人間の知的探求が続く限り、世の変化はとどまるところがない。
本に未来はあるのだろうか。
「本を読んで『心を磨き、鍛え、心が満ち足りること』は、心の中を美しくします。
お化粧品を塗るより、ずっと美しくなれるのです」(同書から)
その美しさは目に見えない。もし心からあふれたら、次は言葉にして語ってみよう書いてみ よう。
読者の喜びが倍になる。
(やまがみなおこ)
本との出会いは、この先も大事にしたい。
先日は職場の20代の女性に絵本を一冊プレゼントしました。
絵本と侮るなかれ
綺麗な挿絵と短い文章の中に「核心」に触れる言葉があります。
私はその「核心」に触れることで、
気づき、癒され、励まされ、前を向いて生きていくことができるのです。
でんでんむしのかなしみ新美南吉/作 井上ゆかり/絵
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