ちゃこ花房~本日も波瀾万丈~

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地球を読む 

2024年09月16日 | 学ぶ
昨日主人に読んでみろと言われて
読売新聞の【地球を読む】で地理学者・作家のジャレド・ダイアモンドの論文を読んだ。
興味深かったので打ち込んでみた。

お金を出せば、子育て支援さえすれば、少子化問題が解決する」という一般的な論調に、ジャレド・ダイアモンド氏は、出生率の低下は重要な利点であり、今日の最大の問題は人口が多すぎることだと論している。



地球を読む

ジャレド・ダイアモンド

地理学者・作家


 

日本や中国、韓国、そして欧州でも、悪評高い出生率の低下が進んでいる。

人口を維持できなくなるほど低下しているのは、よく知られるこれらの豊かな国だけではない。

逆説的に言えば、高い出生率を保っているのは、増え続ける人口を支えられない国ばかりだ。アフリカで特に貧しい国、例えばニジェールでは一人の女性が生涯に平均 7 人の子供を産み、人口は年 3%以上増え続けているが、平均年収は1000㌦に満たない。


日本やほかの裕福な国々の政府は、出生率の低下を深く憂慮している。実業家のイーロン・マスク氏は赤ん坊が生まれてこないと文明が終わるだろうと予測する。各国政府やマスク氏の懸念は妥当なのか。

もし彼らが正しいなら、国民にお金を払って子どもを持てるようにすれば、この問題は解決できるのか。答えはノーだ。イタリアの独裁やムソリーニを始め、近代でも多くの国がこうした出費や奨励金を試みたが、どれも成功しなかった。

スウェーデンは育児支援に惜しみなくお金を使ってきた。オーストリアは子が一人生まれたら、親に「赤ちゃんボーナス」を付与した。フランスは親の所得税を減免した。韓国と日本は父母双方に育児休業制度を適用した。


こうした金銭的誘因があっても、これらの国々では自国民の数が減り続けている。日本もそうだ。これだけお金を使ったのに、どうして多くの子供が生まれてこないのだろう。


なぜそうなったのか理解するには、身近にいる子育て世代の友人に聞けばいい。子供が少ない、あるいはまったくいない人に、なぜそうした選択をしたのか尋ねれば同じような答えを繰り返し聞かされるだろう。

子の衣食や教育への出費を挙げる人もいる。仕事を持つ親には、家で子どもと過ごす時間よりも仕事を優先しろと圧力も加わっている。さらに、悪くなっていくこの世界に子を送り出すのは忍びない、と答える人がいるかもしれない。

質問対象を女性に絞れば、別の答えも聞けるだろう。多くの女性がこう答えるはずだ。夫からは家事や育児の大半をこなすよう期待されている。でも自分は母親たちのような「家事の奴隷」にはなりたくないと。仕事のキャリアと母親であることのバランスを取るのは難しいのである。


私の日本の友人たちは、育休の取得を奨励されている。だがそれを取得すれば、昇進に影響することに気づいたという。仕事の後に期待されているのは、同僚との飲食で親交を深めることであり、帰宅して赤ん坊のおむつを替えることではないというのだ。

子育ての障害となっているのは要するに、経営者や政治家、親となりうる人々の姿勢である。

お金の役割を否定はしないが、親と雇用主、政府という重要な3者の姿勢を、お金で改めることはできない。


ところで、低出生率や人口減少は、イーロン・マスク氏が言うように破滅的なことなのか。

経営学作者たちはマスク氏に同意する傾向がある。人口の減少は、経済にとって良くないと考えているのだ。

人口が減れば、発明家も技術革新も減る。

税収も軍隊の規模も小さくなり、消費者市場も縮小し、増大する社会保障の負担が政府にのしかかる。

こうした懸念は現実のものだが、物語全体の一部に焦点を当てたに過ぎない。一国で公民小数よりもずっと重要なのは、人々の持つ技術や国に貢献する力の方だろう。


日本の人口が、一億 2600 万人まで減ったら、日本の経済や技術開発、企業の成功が人口 2 億人を超すパキスタン、ナイジェリア、インドネシアに圧倒されてしまうのだろうか。決してそんなことはない。日本の重要性は、人口の多寡に依拠しているのではない。地政学的、歴史的な優位性や、日本の本質によるところが大きいのだ。

経済学者たちは、出生率の低下で若年労働者が減り続ける一方、彼らが支える高齢者人口は増加するという不都合な事態が続くことを懸念している。では経済学者はなぜ、強制的な定年制度という働かない高齢者を増やす愚策について憂慮しないのだろう。欧州の大半と日本、韓国の企業は、一定の年齢の達した労働者に仕事をやめるよう「義務づけて」いる。そのほとんどが 60 歳代だ。


もちろん、長年にわたって骨の折れる仕事をしてきて、引退が待ち遠しいという労働者も多い。だが、そうとばかりは言えない。

特に教員や弁護士、医師など専門職の人々は仕事を楽しんでいる。義務的退職制度はこうした人たちの培った能力と権限、経験がピークに達し、社会に最も貢献できる時期に引退を押し付けている。そうすることで人々から社会的交流や人生の目的。自分が有益な存在だという理由を奪ってしまうのだ。


これは労働者にとって良くない。結果的に彼らは落ち込み、孤独になりがちだ。国にとってもひどい制度である。納税者として貢献する人々を、年金の受け手に変えてしまうのだから。


米国などいくつかの国では、義務的退職制度は違法である。ただ、高齢化による技能低下が好況や労働者自身の危険につながるような職種は例外だ。米国では民間航空機のパイロットや管制官などが該当する。これは十分に理解できる。

義務的退職制度が米国で撤廃されたおかげで、私の友人の多くが 70 代や 80 代、90 代になっても仕事を続けている。実は私は最近、86 歳で大学教授を「引退」させてもらった。これは執筆活動に多くの時間を費やす自由を得るためだ。


私たちのような、働く高齢の米国人は、人生と仕事、米国社会への貢献を楽しんでいる。納税し、年金をまだ受け取らないことで政府の助けになっているのだ。日本や欧州の政治家は、年金受給者の増加を懸念しているなら、まず義務的退職制度を違法化すべきではないか。


政治家たちが決して口にしないのは、出生率低下の重要な利点だ。それは世界の資源逼迫の圧力を緩和することである。今日の最大の問題は、人口が多すぎることだ。少なすぎることではない。真水、海産物、鉱物などの不可欠資源は、現在の人口規模を支えるだけでも十分あるとは言えない。資源獲得競争は、戦争に至る最も重要な要因である。

第二次世界大戦の太平洋戦線、ドイツのソ連侵攻、19 世紀の地理と、ボリビア・ペルーが戦った「太平洋戦争(硝石戦争」など枚挙にいとまがない。そう考えると、出生率低下で人口が減る世界は平和的で安定し、幸福で豊かな世界だと言えるかもしれない。

 

 

 

ジャレド・ダイアモンド氏

1937 年生まれ・米ハーバード大卒。カリフォルニア大ロサンゼルス校地理学部教授などを歴任。「銃・病理菌・鉄」など文明を深く考慮した著書で知られる。


ジャレド・ダイアモンド氏は、ピュリツァー賞受賞の「銃・病原菌・鉄」に代表される著作を通じ、文明論、組織論の観点から環境問題の根源を探り、目指すべき文明のあり方について問題提起をしている。
この活動が評価され、地球環境問題の解決に向けて貢献した人に贈られる2019年のブループラネット賞を受賞。2019年12月に来日して記者会見し、日本の若者に「日本は既に気候変動の影響を強く受けている。これからもっと被害を受ける可能性の高い若者は、大人が間違ったことをしていたら異を唱えるべきだ、「行動を」と強く訴えた。

 


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2 コメント

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Unknown (まかろん)
2024-09-20 04:03:40
kumanekoさん、ご訪問有難うございます。
坂の上の雲の記事に感想を書こうと思ったのですが、
こちらも大変興味深い内容で・・。

少子化だ、子供を増やせとよく言われますが、
女性のキャリアの負担になるのは
記事の通りです。

また、増やした子供を何に使うのかというと
低賃金の労働力に使いたいから、というのは
心寒い話です。

とは言え、我々のインフラを担う人材が
日本人でまかなえなくなる・・のは怖いですよね・・。

とりあえず日本は機械化を力一杯進めるべきだと
私は思っています。
単純労働は極限まで機械化できるよう、
技術開発などに公的支援を向けてはどうかと思ったりしてます😊


坂の上の雲の記事は、読んでるだけで胸が熱くなる記事でした。
有名な小説でありドラマですが、
読んだことはなく・・kumanekoさんの記事で
そのような熱い話だったのかと驚きました。

私ごときではとうてい書けないだろうなと
思うと悔しい思いもしました😅

読んでみたいなと思わせる、大変秀逸な記事だったと思います😊

ご訪問有難うございました。
秋になっていく季節を楽しくお過ごしください🌸
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Unknown (Unknown)
2024-09-25 04:25:06
主人に勧められて読んだ地理学者・作家のジャレド・ダイアモンドの論文は、逆に少子化のメリットを書いていて、目から鱗の興味深いものでした。
と言っても、この先の未来がどう動いていくのかは、私にはよくわからないし、何が正解なのかもわかりません。

雲の上、非常に面白い本ですのでぜひ読んでみてください。
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