12月といえば、ヨーロッパでもクリスマスコンサートがあちらこちらで開催されます。
ロンドンにいた2年前、日系情報誌でふと目にとまった記事をきっかけに、前々から一度は歌ってみたかったメサイアを教会聖歌隊と共に教会で歌う機会に恵まれました。そのときの記事は
こちら。
そのときの気持ちよさに味をしめ、ここドイツでもクリスマスに教会で歌える機会がないものかと情報をあつめていたのが10月。ミュンスターにもいろいろとクワイアがあるようでしたが、その中でも目に留まったのがPhilharmonischer chor Münsterというところ。とりあえず「ドイツ語がわからないけれど大丈夫か」という大きな心配があったので、まずは指揮者の先生に直接メールを送りました。過去に日本で第九を歌ったこと、ロンドンでメサイアを歌ったことを書き加えて、しっかりちゃっかりアピール。
「一度来てみてください」という返事を数日後にもらい、練習に参加しはじめたのが11月初旬。予想はしていましたが、ドイツ人ばかりで「おっ、なんだなんだ、今日はアジア人が来たぞ」という視線をビシバシあびながらの初練習となりました。指揮者の先生の指示はもちろんすべてドイツ語ですが、フィーリングでなんとなく言っていることを感じ取れることと、近くのおばさん達の英語通訳のおかげで、これならやっていけそうだと思い、週に一度の2時間練習に参加するようになりました。
クリスマスコンサートだからキャロルかなにかを含めた数曲かなと思っていたのですが、かなり難易度の高い曲ばかりでこりゃ大変だぞと思いつつ、知っている賛美歌をアレンジした曲が入っていたりして毎週歌うのが楽しみでした。
11月のある土曜日には朝10時から夕方4時までという一日合宿がありました。お昼はみんな持ち寄りビュッフェ形式になるとのことだったので、寿司桶にキュウリとたまごの細巻きを準備していったところ大好評。わざわざ「お寿司おいしかった」と言いに来てくれる人々もいて嬉しかったです。
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いろいろなドイツ家庭料理が食べられて面白かったです。
本番を10日後にひかえた練習の日、「いつもより30分早く来てね」と幹事さんに言われていたのですが、手が離せない実験が深夜まで続いたため、結局練習に出る事ができず、しかも幹事さんの電話番号を知らなかったので直前に不参加の連絡もできませんでした。翌日、唯一の連絡先を交換していたおばさまに幹事さんのメールアドレスを聞いて、仕事でどうしても参加できなかったことを伝えて謝りました。
その数日後、幹事さんからの返信が届きました。
「残念だけれど、今回のコンサートへの参加を許可できません」
あまりにショックなメールで、しばし呆然としてしまいました。どうやら早めに来てほしいといったのは私個人のボイスチェック(いわゆるオーディション)をするためで、それを受けない限りコンサートには出す事はできない。そして、オーディションをする時間はもう作れない。だからダメです。ということでした。
そんな大事なことをやるとは聞いていなかったし、オーディションがあることも知りませんでした。幹事さんは英語が苦手な方だったので、あまり詳しいことを言わなかったのでしょうし、私は私でそのときは「何をするのか知らないけれど、とりあえず早く来たらいいのね」と軽く受け止めてちゃんと何をするのか聞かなかったのが災いのもととなりました。
しかーし、楽しみにしていたコンサートをこんな直前でキャンセルされるとはあまりにショックです。速攻で交渉のメールを書きました。そんな大事なオーディションがあるとは全く聞いていなかったこと、仕事でどうしてもいけなかったこと、コンサートで歌えることをとても楽しみにしていて、家で練習もしているということをアピールし、なんとかもう一度コンサート前に時間を作ってほしいとお願いをしました。指揮者の人にも同様のメールを送り、あとは神頼みをしながら返事を待つことに。この日の夜はショックであまり寝られませんでした。
そして翌日、幹事さんから連絡があり、コンサート本番2日前の練習後にボイスチェックをしてくれるとのこと。とりあえず首の皮一枚つながった感じです。
そして本番2日前の練習が終わったあと、一連の話を幹事さんから聞いていたと思われるおばさま達から「Kapi、がんばって」と激励のお言葉をもらい、指揮者の前でひとりオーディションとなりました。人生で初めてのオーディションです。コンサートで歌う曲のなかから部分的に3曲が選ばれ、「はい、ここ歌って」と指示がでます。しかも難しい所を指定してきます。「この曲だったらちょっとやだなぁ」と思っていた曲をズバリ指定してきました。緊張しつつも、なんとか歌いきりました。
「ノープロブレムだからコンサートに出ることを許可します。」
よかったー。お許しがでました!オーディションに通ったからには、もう怖いものはありません。翌日(コンサート前日)の最終練習では、おばさま達が一緒に喜んでくれました。
というわけで、先週の土曜日17日がコンサート当日でした。
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会場となったSt. Petri教会。
夕方5時からと8時からの2回公演。午後2時に一度集合し、会場のセットアップ。衣装に着替えて、いざ本番です!
歌った曲の覚え書き:
Machet die Tore weit (Andreas Hammerschmidt)
Veni Veni, Emanuel (Jan-Ake Hillerud編曲)
Rorate coeli desuper (Salomone Rossi)
Rorate coeli (Josef Rheinberger)
O Heiland reiß die Himmel auf (Johannes Brahms)
Hodie Christus natus est (Jan Pieterszon Sweelinck)
Es ist ein Ros entsprungen (Michael Praetorius)
In dulci jubilo (Michael Praetorius/Johann Walter
もちろん全てドイツ語ですが、歌詞を読む(発音する)ことはできるので、意味は全くわからなくとも歌う分には問題ありませんでした。
コンサートには子供のクワイアが最初と最後に登場し、トロンボーン3本とトランペット2本とオルガンが伴奏です。
コンサートの最後には会場の照明を消し、我々クワイアだけがキャンドルを手にして歌うというちょっと荘厳な雰囲気になりました。舞台に立っている本人達は「キャンドルが一本足りないっ!」などの声が小声で飛び交っていて、荘厳さとはかけ離れていましたが(笑)
コンサートは2回とも満員御礼状態で大盛況。そんなこんなで、直前に波瀾万丈のハプニングがありつつも、無事にドイツでも教会で歌うという目標が実現できました。。
さて、あとはRota氏の感想待ちといたしましょう。(追記でよろしく)
======= [Rotaによる追記] =======
まず何よりRotaが感じるのは,仕事でとても忙しい中練習参加等の準備をこなし(ドイツ語の歌詞!),最大の危機(参加取消未遂事件)を乗り越え,2回の本番をこなすまでに.よく短期間でもっていったということと,肉体的にハードなスケジュール(仕事&ノド)をこなして見事だったということです.お疲れさん!
え?演奏会の感想を書けって?
Rotaは1時間半の演奏会中(休憩なし),良好な視野&音響を確保するために良いポジションで(わざと)立ちっぱなしでしたが,ほとんど身動きせず,ずっと集中して聴いていました.それくらい,クワイアの歌唱と,会場の雰囲気,(本当はもう少し期待していたけど,一応それなりだった)金管隊の響きがあいまって,充実した演奏会だったと思います.ブラボー.クワイアの皆さんはアマチュアということですが,実力十分.Rotaは大船に乗った気持ちで音楽を楽しんでいました.Kapiの出演する演奏会を聴くのは三回目で,過去の二回も大変良かったですが,今回も期待にもれずとても楽しい時間を過ごしました.
ちなみに,Rotaの一番のお気に入りの曲は,Brahms の O Heiland reiß die Himmel auf.期待も大きかったけれど,見事に応えてくれました!
本当はマニアックな細かい話題は他にも色々あるんですが,それはここではやめとこう(笑)
以上,追記でした.