夕暮れミナトの潮風が
胸元を通っていく
好きだと言っても言われても
飛んでいきそうな人だった
意地をはったら それっきり
終わりそうでこわかった
後ろ姿みつめて歩いた
丘の上に白いチャベル
心に響いてもう決して
だまされないのと誓ったの
ああ、あなたのことばかり
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★埠頭を渡る風 (^_-)-☆ ユーミン 首都高疾走バージョン
https://www.youtube.com/watch?v=eGPShwJx9HI
一旦、別れてまた合流する川の
ように、彼女の中から懐かしさ
が溢れ出す。それは長く忘れて
いた感覚で、出会いの頃の息苦
しいほどのときめきを伴って
いる。
帰って来たのは私の方だと彼女
は気付く。男に初めて会った、
あの日の自分に。
肩の力がふっと抜けた。喜びが
体の筋々に伝わって、ゆっくり
筋肉を弛緩させてゆく。
涙に濡れた顔が和む。舌が甘や
かな言葉を紡ぎだす。
―――そうだわ、明日、残り
の折りヅルをみんな燃やして
しまおう。もう、私には必要
がないだもの。
だって、私の中に灯が点った
のだから―――
夜明けの鏡はガスの災を優しく
映している。涙に曇った彼女の
目には、白いセーターの胸の
真ん中あたりが、ぽおっと
緋色に染まって見えた。
“楽しいだけが恋じゃない、
歓びだけでもない、楽しい
分だけ苦しみや危険がとも
なう、
それが当たり前。生きた形態が、
塑像(そぞう)として見えるた
めには、深い影を必要とするの
と同様に、
困難や危険や涙がともなうから、
恋がきらびやかでもあるわけだ”。
いつも上品なついたての
むこうにいるようなあな
たに
風の吹く帰り道
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小林桂 / フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン kei kobayashi / fly me to the moon
https://www.youtube.com/watch?v=P5Y57euf9Xk&list=PLql-5J66IaWj690quAn_qqa6UWLF8V55I
思いこんではいけない
思いすぎてはいけないと
何度も自分に言いきかせた
愛は強くひきつけてしまう
その人のもとへと
起きているあいだじゅう考えて
起きる素材が底をついたら
妄想が始まる
思い込んではいけない
思いすぎてはいけない
愛が心の中で
愛の心の中で
妄想を生んでしまうから
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Yumi Arai - Ame no machi wo (雨の街を - 荒井由実) [HD]
https://www.youtube.com/watch?v=CrFW7-KtT6I
もしも
思い出をかためて
一つの石にすることが出来る
ならば
あの日
二人で眺めた夕焼けの色を
石にしてしまいたい
と
彼女は手紙に書きました
その返事に
恋人が送ってよこしたのは
ガーネットの指輪でした
あかい小さなガーネットの
指輪を見つめていると
二人はいつでも
婚約した日のことを思い出す
のです
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中村 中 / 友達の詩
https://www.youtube.com/watch?v=zPQS55Y3Vds
今、好きな場所
好きな花
今、好きな色
好きな匂い
今、好きな声
好きな人
今、好きな本
好きな歌
それらは何を意味するか
それら全部が
今、行く道を教えてくれる
行くべき道を教えてくれる
好きなものは刻々変わる
とるべき道も刻々変わる
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rain 大江千里 × 秦基博
https://www.youtube.com/watch?v=u1SWm06Kaj4
返事は届かなんだ。
金曜日にも短いメールを送った。
今までなら、最初のメールをあの
ひとが読んだ段階で、すぐに電話
がかかってくるはずだった。
けれども、電話は鳴らなかった。
一週間のあいだに出した四通の
メールに対する、あのひとの返事
は沈黙だった。
もしかしたら、小旅行か何かで、
家を留守にしているのかと思った。
日曜の夜、「戻ったら、メールか電
話を下さい。何度も催促してごめん
なさい」と書いて送り、その週はた
だ、あのひとからの連絡を待った。
その次の週を待った。
連絡が途絶えて一ヶ月後、電話をか
けたことはあった。
あのひとは電話回線をインターネ
ットにつないでいるので、話し中
のことが多かったけれど、そんな
時には、一階に住んでいる大家さ
んの留守番電話に、メッセージを
残しておけばよかった。そうすれ
ば一両日中には必ず、あのひとか
らの電話がかかってきた。
受話器を取り上げて記憶している
番号を押した。今、ニューヨーク
は、朝の六時半。それは、あのひ
とが部屋にいる確率が最も高い時
刻だった。
わたしたちはこれまで、そ
の貴重な僅かな時間帯を使って、
辛うじてつながってきたのだ。
やっぱり旅行中だったのか、少し
だけ、気持ちが落ち着いた。
わたしは留守番電話に向かって、
話し始めた。ふたりのあいだに
横たわっている果てしない距離
と、ふたりを朝と夜に切りわけ
ている時差の壁に向かって。
できるだけ爽やかに、穏やかに、
何気ない風を装って。
「もしもし、快晴。こんにちは、
詩音です。メール、何度か送った
んだけど、ずっとお返事がないの
で・・・・・きっとどこかに、旅
行中なんだよね。実はわたしの方
にも、あれこれいろいろあって、
相談したいこともいろいろあり
ます。とりあえず、このメッセ
ージを聞いたら、お電話かメール、
下さいますか。待ってます」
受話器を置くと同時に、それまで
わたしたちを結びつけていた、細
く透明な蜘蛛の糸が、ぷつん、と
切れてしまったような気がした。
窓の外は、篠突く雨だった。
許すことを知らない、優しくない
雨だ。強風に煽(あお)られ、斜め
に降っている。まるで地上に突き
刺さる、銀色の無数の針のように。
あなたに、尋ねたいことがある。
あなたに、話したいことがある。
もうこれ以上、待てない。
もうこれ以上、わたしを待たせな
いで。
お願い、電話をかけて。
お願い、声を聞かせて。
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JUJU 『この夜を止めてよ』
https://www.youtube.com/watch?v=vMk81-Y_cYU