ビスクドール・雛人形店・オーディオ販売 佐久市 ヤナギダ店長ブログ

ビスクドール64体他お節句雛人形をフランスへ輸出128年、軽井沢方面がお店の場所。

ドストエフスキーの「天国」と「地獄」

2023年09月20日 13時14分03秒 | owarai
ドストエフスキーは、思想犯と
してシベリア送りになったとき
のことを、「監獄では強制労働
に従事させられが、囚人は少し
でも急ぐ必要がなく、コスト
のことを考える必要もない。

苦役そのものも、それほど
つらいものではない。

しかし、強制されることによ
ってどんな自由な労働よりも、
比較にならないほど苦しくな
る」と指摘している。

どんな凶悪犯でも、それを聞
いただけで震え上がり、二度
と立ち上がれないように押し
潰してやろうと思ったら、

労働を徹底的に無益で無意味
なものにすればよい。

たとえば、一つの桶の水を
他の桶に移し、それをまたもと
に戻す、といったような作業を
させたら、四、五日で首をくく
るか屈辱と苦しみで変になって
しまうそうです。

ところが、作業自体が有益で価値
があり、ノルマを決めてもらえ
そうだとなると、たとえ報酬が
なくても、囚人たちの気の入れ方
がガラリと変わった。

彼らは、何かに取りつかれた
ように、少しでもよく仕上げよ
うとして無我夢中で仕事をした
という。

それが、人間の本質だと思います。

自分の仕事に少しでも価値を
認めることができれば、
人はいつまでも生き生きとして
いられるはずです。

「夢で会う」

2023年09月20日 11時34分03秒 | owarai
ずっと気にしてて
元気にしてるかと
不安になっていたら
夢で会ったわ

にこにこしながら近づいて
きて
私を履けますようなことを
言ったの
しっかりしなさい
どうしたの
大丈夫
そんなこと気にしないで

それから大きな声で笑ってた
私は安心して
やっぱり変わってなかったん
だと
うれしくなった

夢で会ったわ
でも
夢でしか会えないわ

真夜中の雨音 ―1―

2023年09月20日 11時32分52秒 | owarai
白妙のシルクのワンピースの胸に、
かずみ草のコザージュを飾った
佳代子は、心なしかふっくらと
した頬を桜色に染めて、ふわふわ
と幸せそうに見えた。

桜の季節に、悲しい目的で、わたし
の部屋に泊まりにきた佳代子。あの
夜、ふたりとも寝たふりをしていた
けれど、わたしには、わかっていた。
明け方近くまで、彼女が肩を震わせ
て、泣いていたこと。

あの夜から三ヶ月が過ぎて、
「燃えるような恋じゃないんだけど、
静かに受け入れて、育てていく恋も
あるのね。彼は追い求めなくても、
いつもそばにいてくれる人、

恋焦がれなくても、そばにいてと
願わなくても、手を伸ばせばすぐ
届くところに、いつもいてくれる
人なの。詩音ちゃんならきっと、
こんな気持ち、誰よりもよくわか
ってくれるでしょ」

「うん、わかる。佳代ちゃん、よ
かったね。ほんとにほんとによか
ったね」
新しい恋に巡り会ったことを、佳
代子は電話で伝えてきた。

その電話からほどなく、佳代子は
ホテルの仕事を辞め、九月の初め
に挙式と入籍を済ませ、すでに京
都府下の山村――――名前を美山
町といった――――の住人となって
いた。

東京近郊で暮らしている、新郎
新婦の親しい友人だけを招いた
パーティー。高校時代の友だち
が囲んだてテーブルには、千夏
の写真を飾った。

窓の外では街路樹の木の葉が思
い思いに色づき、秋風に誘われ
て、はらはらと地上に舞い降り
ていた。

「ねえ、詩音ちゃん。もしかし
たら愛は、ちょっと狂おしくな
んか、ないかもしれないよ。せ
つない想い、張り裂けそうな胸、

そういうのは愛とは、呼べない
のかもしれない。

愛はもっと穏やかで、身近にあ
って、日常的なもの。
それでいて。超然としてて、途
方もなく強いものなのよ」
目の前のシャンパングラスを手
に取り、わたしは一気に飲み干
した。

わたしの愛は――――
愛は、どこにあるのだろうと
思った。
笑顔と祝杯と拍手と花束と、
「おめでとう」「お幸せに」
「よかったね」の渦巻きの中で、
わたしはひとり、さがし求めて
いた。
 
答えの見つからない、問いの答え。
せつない想い。張り裂けそうな胸。
手を伸ばしても、いつも届かない
よころにいる、あのひと。

悲しいことがあった日も、嬉しい
ことがあった日も、わたしは淋し
くて、たまらなくなる。追い求め。
会いたいと焦がれ、そばにいて欲
しいと願っている、

こんなわたしの愛は――――。
愛とは呼べない?
「アイシテイル」とつぶやくた
びに、心がわっと泣きだしてしま
いそうになる。
こんな愛は・・・・・。
 

八番目の曜日 ―完―

2023年09月20日 11時31分15秒 | owarai
人の一生には、その人だけに訪
れる、八番目の曜日がある。

わたしにそのことを教えてくれ
たのは、父方の曾祖母だった。
名前を、キヨエといった。
キヨエはあちゃんは、わたしが
中学一年生の時になくなって
いるから、わたしがその話しを
聞いたのは、それ以前という
ことになる。

「でも、いつ来るの?日曜日の
次に来るの?それとも土曜日と
に日曜日の次に来るの?」
「さあ、それはわからん。人に
よっていろいろじゃ。来ても、
気づかない人もおる」

「あたしにも来るの?」
「ああ、詩音ちゃんにも来る。
その日には、詩音ちゃんの一生で
起こることが何もかも全部、一日
のうちに起こるんよ。ええことも、
悪いことも、全部な」


「そこにいたんだ?呼び出し音
なしでいきなりつながったんで、
びっくりしたよ。同時に受話器
を取ったんだね?」

「嬉しい」
と、わたしは言った。
「ありがとう。電話をくれて」
そう言ったきり、言葉が喉につか
えて、あとはもう何も、言えなく
なった。べっトに縛りつけられて、
まるで蛹のような姿になっていた、
哀れな父の姿が浮かんだ。

お父さんが、死んだの。ついこの
あいだまで、生きてて、偉そうに、
タバコ臭い息で、わたしに説教な
んかしていたのに。もうすぐアメ
リカへ行くよと言ったら、「ニュー
ヨークでジャズを聞いてこい」な
んて、わかったようなことを言っ
ていたのに。

わたしの口から実際に出た言葉
は、
「もう会えなくなったの、お父
さんに」
それだけだった。

「どうしてなんだろう。きょうに
限って俺、朝からずっと胸騒ぎが
して、何がなんでも絶対に電話し
なきゃて思った」
と、あのひとは言った。

海の向こうで、気が遠くなるほど、
遥か彼方にある岸部から。

「会いたい」
と、わたしは言った。それは
言葉ではなくて、叫びだった。
会いたくて、会いたくて、た
まらない。そばにいて欲しい。

抱きしめて欲しい。
なのに、会えない。会いに行
けなくなった。心も躰も岩に
ぶち当たり、木っ端微塵(こ
っぱみじん)に砕け散る、
波飛沫(はしぶき)のようだ。

「何も話さなくていいから」
海の向こうから、遥か彼方から、
見えない岸部から、あのひとの
声が耳に流れ込んできて、躰中
を巡り、わたしを拐って、どこ
かへ運んでいこうとしていた。

希望と絶望の渦に、わたしを巻
き込んだまま。
「泣いていいよ。泣きたければ、
いつまでだって、好きなだけ泣
いて。俺はずっとそばにいるから。
ずっと、詩音ちゃんのそばにいる
から」

あのひとはいつまでも、わたしの
そばにいてくれる。
あのひとはいつでも、わたしの手
の届かない場所にいる。

その日――――八番目の曜日に、
ふたつの思いに引き裂かれたわた
しの躰は、それからもう二度と、
もとに戻ることはなかった。