携帯電話が発明されて
LINEが発明されて
人間たちは 携帯電話の鳴
らない LINEの着信しない
さみしさ を 発明してしま
ったんだね
すこしまえ 留守番電話が発
明されて 用件のない日の
さみしさ が発明されたよう
に 郵便さえ 手紙の届かな
い さみしさ の発明だった
かもしれない
だから むかしがよかった
というのではなく こうして
この駅で君と待ち合わせて
いることが ぼくは好きだ
それはきっと 変わらない
誰だって こうして 現れる
ひとを待つことは 現れる
ひとのいることは ただ
むかしなら 10分でも
20分でも へいきだった
いまは 携帯電話のつなが
らない 心配 も 発明され
てしまったから どうしたの
かな まだ電車のなか なのだ
ろう と思いつつ 待っている
変わらない たとえ何が発明さ
れたって もうすぐ 現れる君
を待っている この人ごみに
君を捜す リアルな時間が僕
は好きだ ちょっと遅れて
ちょっと心配して でも現れる
きっとすぐに駆けてくる その
確かさが 手をのばせば さわ
れる君の 手をとって あるき
だす
あれこれ迷う 君の買いもの
君の気にいる そのシャツの
そのてざわりや えりの
かたち そういうことの
ひとつひとつが かけがえの
ない 消去されない まいに
ちになる 目の前にある
てざわりのある 時間の ひと
こまひとこまが 誰だって 欲
しいんだ
ほんんとうは だから こうして
この駅で
(・・・それにしても 遅いな)