木漏れ日は陶酔の幻想
幻想に似ているのが恋愛
恋愛は晴れ渡る
葉が落ち枯れ流れ
恋愛は雨が降る
雨は好き
雨は嫌い
ふたりを結ぶゆわい糸
それは木漏れ日の反射
まるいケーキを
ひときれずつ切りとって
一口ずつ味わっていく
A B
右 左
月 夜
半分みたい
私の名前も出現する
一瞬の
ふれあいだとして
あと何度
あげられるかな
ころがる瞳
あたたかな
九月のおわりの
足取りは
あなたに会えた
それがすべてで
「シズコさん」
佐野洋子 著
母と娘の関係。
好きなとき、嫌いなとき、
好きなこと、嫌悪する葛藤。
ながれる月日のなかで、
動くことのない視線の揺らぎ。
それはときに残酷に体を張いずる。
認知症は自分自身の分からなさと、
その分からなさを理解する。
理解することの不完の望郷。
時代時代に変化していく、
思い出というチョイスから、
見え隠れしながら保つ影の跡のひかり。
家族という単位から漏れるさまざまの灯り。
ひかりは、いずれやさしくくるまれる。
白すぎて目を細めるように。
時代に興る変化は、周囲の営みにより
地から出てくる本性の、それもまた一部分。
一部分はその人の全部でもあり続ける。
収まりつかない五感をたよりに。