歴史だより

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≪弘兼憲史『決算書の読み方』を読んで≫

2022-05-15 19:11:52 | 私のブック・レポート
≪弘兼憲史『決算書の読み方』を読んで≫
(2022年5月15日投稿)

【はじめに】


 地区の会合などに出席すると、決算書を目にする機会も増えてくる。
 ましてや、監事などの役職に就くと、決算書を精査する必要に迫られる。
 その際に、どうしても、決算書の読み方について、一定の知識が求められる。
 その場合、少しでもそうした知識があると、その読み方に困らない。
 今回のブログでは、漫画家・弘兼憲史さんの次の著作を一読することにより、「決算書の読み方」について考えてみたい。

〇弘兼憲史『決算書の読み方』幻冬舎、2009年[2004年初版]

【弘兼憲史(ひろかね・けんし)氏のプロフィール】
1947年山口県生まれ。早稲田大学法学部卒。
松下電器産業販売助成部に勤務。退社後、1976年漫画家デビュー。
以後、人間や社会を鋭く描く作品で、多くのファンを魅了し続けている。
奥様は同業の柴門ふみさん。
代表作に『課長 島耕作』





【弘兼憲史『決算書の読み方』(幻冬舎)はこちらから】
弘兼憲史『決算書の読み方』(幻冬舎)






弘兼憲史『決算書の読み方』幻冬舎、2009年[2004年初版]

【目次】
第1章 決算書から何を読む? 会社の真実の姿は決算書から見えてくる
 決算書とは1 決算書とは会社の経営状態がわかる成績表
 決算書とは2 どのような書類を、誰のために作るのか
 決算書とは3 決算書が作られる時点と期間の基本ルールを知る
 貸借対照表 会社の底力は「財産」で決まる
 損益計算書 会社の勢いは「儲け」で決まる
 キャッシュ・フロー計算書 会社が本当にもっているお金が見える

第2章 貸借対照表 会社の底力は「財産」で決まる
 貸借対照表 小分けして読むことが理解への早道
 資産の部 貸借対照表の左側、借方に表されるのが資産
 負債の部・純資産の部 貸借対照表の右側、貸方に表されるのが負債と純資産
 流動資産 「流動」とはもうすぐお金になるという意味
 たな卸資産・その他流動資産 在庫も家賃の前払いも大切な資産と考える
 POINT 1 たな卸資産の扱い
 固定資産 三つをまとめ、償却できるか否かを見る
 POINT 2 減価償却の算定の仕方
 有形固定資産 読んで字のごとく、目に見える形のある資産
 無形固定資産・投資等その他の資産 目に見えない資産とハイリスクな資産
 POINT 3 有価証券の区分は目的による
 繰延資産 価値がないのに資産とされる繰延資産
 貸倒引当金 資産のなかで唯一マイナス項目となる貸倒引当金
 流動負債 会社の運転資金がわかる流動負債
 固定負債 大きな買い物に使う固定負債
 POINT 4 多額の支払いに備える引当金
 資本金・剰余金 株主のお金、自分で稼いだお金が資本を担う
 資本準備金・利益準備金 会社法に定められた、万が一に備える「準備金」
 POINT 5
 黒字と赤字で表記が違う

第3章 損益計算書 会社の勢いは「儲け」で決まる
 損益計算書の構造 まず「いつもの儲け」と「特別な儲け」に分ける
 損益計算書 損益計算書を攻略する3・5・5の分類
 売上高 本業で稼いだお金を最初に見る
 売上原価 仕入れにかかるお金、モノ作りにかかるお金
 売上総利益 商品、製品の魅力が売上総利益に表れる
 販売費及び一般管理費 売るため、管理するためにかかる費用
 POINT 6 人件費と接待交際費
 営業利益 本業での活動で得た儲けをまとめた営業利益
 営業外収益・営業外費用 会社は本業以外でも儲けたり、損したり
 経常利益 最も重要視されているといっても過言ではない利益
 特別利益・特別損失 アンビリーバブルな出来事は利益か損失か?
 法人税、住民税及び事業税 税金を差し引いてたどりつく当期純利益
 ★株主資本等変動計算書 純資産が前期末から当期末までにどう変わったかがわかる
 ★注記表 注記が充実している会社は信用できる

第4章 キャッシュ・フロー計算書 会社が本当にもっているお金が見える
 キャッシュ・フローとは 近年重要性が増している現金の流れを追った計算書
 キャッシュ・フローの構造 キャッシュ・フロー計算書は大きく見て三層構造
 営業活動によるキャッシュ・フロー 最も注目すべきは本業による現金の流れ
 営業活動によるキャッシュ・フロー 「間接法」と「直接法」、二つの方法から求められる
 投資活動によるキャッシュ・フロー 投資の内容で会社の将来を予測する
 POINT 7 余力があってこそできる設備投資
 財務活動によるキャッシュ・フロー 「負債」と「資本」の流れで資金繰りがわかる
 フリーキャッシュ・フロー 会社の価値を決める、「自由に使えるお金」
 キャッシュ・フローの見方 キャッシュ・フロー計算書は粉飾しにくい構造
 キャッシュ・フロー計算書の見方 プラスとマイナスの数字の意味を読み取ろう

第5章 知識3からの経営分析 決算書を十二分に活用する
 分析のポイント 五つの分析ポイント、三つの視点
 総資本経常利益率・自己資本利益率 二つの経営指標から会社の総合力をはかる
 収益性分析 商売上手は収益性でわかる
 売上高総利益率・売上高営業利益率 本業にかかわる収益性を分析する
 売上高経常利益率 収益性分析の核となる比率、売上高経常利益率
 効率性分析 よく回転している会社がよい会社
 総資本回転率・回転期間 少ない総資本でも、多くの売上高を上げることが大切
 たな卸資産回転率・回転期間 適正在庫を保つことが、効率性のよさにつながる
 固定資産回転率・回転期間 高額な投資をしたからには効率よく動かす
 売上債権回転率・回転期間 取引先への売上債権は、回収後すぐに活動資金になる
 仕入債権回転率・回転期間 返済予定の仕入債務はできるだけ遅く支払う方がよい
 安全性分析 貸借対照表をもとに、会社の安定性をチェック
 流動比率・当座比率 支払能力のよしあしをはかる流動比率と当座比率
 固定比率・固定長期適合率 大きな買い物は自分のお金でしているか
 自己資本比率 資本の充実こそ、安全性の最大の課題
 生産性分析 従業員や設備がどれだけの付加価値を生んでいるか
 労働生産性 従業員一人ひとりが生む価値とは?
 労働分配率 生産性向上のために人件費をさらにくわしく分析する
 損益分岐点分析 誰もが気になる、売上高と費用がつり合う点
 損益分岐点売上高の求め方 会社の具体的な目標は、費用の分解から見えてくる
 経営安全率・損益分岐点比率 損益分岐点から会社の余裕を見る

第6章 連結決算書 グループ会社をひとまとめ
 連結決算書 企業を集団でとらえ、まとめて成績を見る
 子会社、関連会社の定義 子会社は「支配」され、関連会社は「影響」を受ける
 連結貸借対照表 企業集団の財政状態を表す連結貸借対照表
 連結損益計算書・連結株主資本等変動計算書 企業集団の儲けを表す連結損益計算書
 連結キャッシュ・フロー計算書 企業集団の資金状況を表す連結キャッシュ・フロー計算書

 あとがき
 参考文献
 さくいん




さて、今回の執筆項目は次のようになる。


・貸借対照表
・流動負債 会社の運転資金がわかる流動負債
・社債と株式の違い
・第3章 経常利益について
・第3章 法人税、住民税及び事業税について
・第4章 キャッシュ・フローについて









貸借対照表


・貸借対照表は、決算日に会社がどんな財産(資産)をどれだけもち、その資産を借金(負債)して手に入れたのか、自分のお金(自己資本)で手に入れたのかを示す。
・つまり、決算日における会社の財政状態(資産・負債・純資産の状態)を示す。

・貸借対照表は、左右に分けられる。
 左側に資産が示される。これを会計用語で借方(かりかた)という
 右側に他人から借りたお金である負債、自分で用意したお金である資本が示される。これを貸方(かしかた)という。

※資金の運用(借)と調達(貸)のバランスがとれている(対照している)ので、バランス・シート(貸借対照表)という。

【貸借対照表からわかること】
〇どこから調達した?(株主が出資? 借金?)
〇資金はいくら?
〇何にいくら使ったか?
〇資産はどのくらいある?

【貸借対照表の構造】
・借方(左側)に資産、貸方(右側)に負債、純資産を示す。
 さらに、資産と負債は流動と固定に分けられる。

・貸借対照表を理解するうえでは、分類して考えるとわかりやすい。
まず、全体を資産、負債、純資産の三つに分ける。
さらに、資産を流動資産、固定資産、繰延資産に、負債を流動負債、固定負債に分け、純資産を資本金と剰余金に分ける。
※資産も負債も、「流動」と「固定」に分けてみる。
 どちらも「流動」が先、次に「固定」という並び方になっている。
 流動の方が早く換金できるものであり、換金化のスピードを大事に考えるから。
 (換金力は会社の支払能力ともいえるので、会社の信頼度をまず対外的に示している)
(弘兼憲史『決算書の読み方』幻冬舎、2009年[2004年初版]、16頁、24頁)

流動負債 会社の運転資金がわかる流動負債


流動負債 会社の運転資金がわかる流動負債
・負債=支払わなければならない借金
    主に会社の運転資金として使われることが多い
    返済期日によって、流動負債と固定負債とに分けられる
・流動負債の勘定科目には、
  1年以内に返済しなければならない負債や本業の流れのなかで生まれた負債が並ぶ
・並べ方:流動性配列法により、上から順に、支払義務の強いものから並べられる
・支払手形
  支払期日が厳密に決められている
  一番厳しい支払義務をもつということで、流動負債の中で、最初にくる
※ちなみに、手形とは、現金の証書 
  いつ、どこの銀行から、いくら支払うかを明記したもの
 「不渡り」とは、手形の支払期に現金を用意できないこと。
  ⇒不渡りを起こせば、会社の信用は失われる。
   さらに、半年間に2度、不渡りを発生させると、銀行取引が停止され、倒産ということになる。

・支払手形と買掛金はどちらも、正常営業循環基準から流動負債に計上される。
 その違いは、支払義務を証書で決めたか、口約束で決めたかによる。
・短期借入金は、一年基準(ワンイヤールール)から、流動負債に計上される。
 銀行や取引先から融資してもらった借入金のうち、決算日の翌日から1年以内に返済しなければならない。

(弘兼憲史『決算書の読み方』幻冬舎、2009年[2004年初版]、50頁~51頁)

社債と株式の違い


社債と株式の違いについて、まとめておこう。

【社債と株式の違い】
・固定負債は長期に安定した資金である。
 この資金の調達方法の主なものが社債の発行である。
 社債とは、会社が発行する債券のこと。
 投資家からお金を募り、その代わりに、「社債」を手渡す。
 期日がきたら元本に利息をつけて投資家に返金する。
 (いわば社債は、投資をしてくれた人たちへの借入証書と同じもの。その意味では長期借入金と同じ性格を持つ)

・投資家からお金を集める方法には、資本金を増やす「株式増資」もある。
 投資家からお金を集める点では社債と同じことをする。
 しかし、株式で集めた資金は返さなくてよいが、社債は返さなくてはならない。

 会社が発行する社債と株式。出資者はお金を出すことは同じだが、その意味やその後の状況が違う。

株式 社債
出すお金は 出資したことになる お金を貸したことになる
返金は お金は返ってこない 決めた日に戻ってくる
利益が上がれば 配当金が出る 金利が決まっているから変わらない
利益がなければ 配当金は出ない 決まっている金利を受け取れる

(弘兼憲史『決算書の読み方』幻冬舎、2009年[2004年初版]、54頁)

第3章 経常利益について


第3章 損益計算書 会社の勢いは「儲け」で決まる
 経常利益~最も重要視されているといっても過言ではない利益
・災害や事故など特殊な事情を抜きにして、会社が、平常時の活動でいくら儲けたかを
示す経常利益
 ※計上利益と混同しないよう、「ケイツネ利益」と呼んだりもする。
 【経常利益の求め方】
 売上高-売上原価 =売上総利益
売上総利益-販売費および一般管理費 =営業利益
営業利益+営業外利益-営業外費用 =経常利益

※経常利益と売上高は、前期との比較が不可欠
 〇売上高比較~前期の損益計算書と、当期の損益計算書を比較する
  ⇒ここから、会社の取引が、どう動いたかを見る
 ・前期に比べ、当期の売上高が増えていれば「増収」、
               減っていれば「減収」。
 〇経常利益比較~前期の損益計算書と、当期の損益計算書を比較する
  ⇒ここから、会社が毎期に利益をどれだけ生み出しているかを比較する
 ・前期の経常利益が増えていれば「増益」、
          減っていれば「減益」。
損益の動き 評価 評価内容
増収増益 優 素晴らしい。この調子。
ビジネスチャンスを逃してはならない
増収減益 可 売り上げが増えたのに何故、減益になったのか、
薄利で売っていないか要確認。
減収増益 可 人件費削減などの企業の判断がうまくいった形。
しかし、あまりの経費削減は、長期的に見て
好ましくない。売り上げを伸ばす努力を。
減収減益 不可 危険だ。何期にもわたって続いているのであれば、構造改革が必要である。
倒産の二文字がちらつく。



・経常とは、「その会社の実力で毎期発生する」という意味。
  本業も財テクも含めて、会社の活動すべての成績をまとめた項目。
 (会社の総合力をはかるうえで、欠かせない科目)
  
☆経常利益に目をこらしてみると、多くのことがわかる。
 ・たとえば、売上高がプラスなのに、経常利益がマイナスという会社がある。
 ⇒これは、本業で稼いでいるが財テクに失敗したか、借入金が多く支払利息が多いと見て取れる。
 ・逆に、売上高はさほどないのに、経常利益はよい数字を残している会社もある。
 ⇒これは、財テクで稼いでいるということが見て取れ、経常利益は会社の実力を表すといえども、将来性に疑問が残る。
(弘兼憲史『決算書の読み方』幻冬舎、2009年[2004年初版]、84頁~85頁)

第3章 法人税、住民税及び事業税について


法人税、住民税及び事業税 税金を差し引いてたどりつく当期純利益
・すべての利益と費用をまとめた税引前当期純利益(経常利益+特別利益-特別損失)から、会社にかかわるさまざまな税金を引くと、当期純利益が求められる
・税金に関係する勘定科目は、法人税、住民税及び事業税と、法人税等調整額の二つがある。
※「法人税、住民税及び事業税」は、名称が長いため、略して「法人税等」と呼ぶことが一般的。

<注意点>
・法人税等に記載されている税額は、法人税法の都合で決められるということ。
・会社法のルールで決まった税引前当期純利益をもとに、税額をはじき出すのではなく、法人税法にのっとって独自に利益を計算し、税金が算出される。
 ⇒この利益を課税所得という。

〇儲けに課せられる法人税等
 ・法人税は所得(法人税法上の利益)の30%を乗じて計算。 
  ほかの税は法人税をもとにそれぞれの税率を乗じて算出する。
  結果、会社の所得の約40%は税金とみる。
 ・法人税、住民税及び事業税の内訳
  法人税(国に納める)、都道府県民税(都道府県に納める)
  市町村民税(市町村に納める)、事業税(都道府県に納める)

〇租税公課と法人税等は違う
 ・販管費の勘定科目に、租税公課というものがある。
  税金を扱うことでは法人税等と同じだが租税公課は利益に関係なく課税されるものである
 ・一方、法人税等は、当期の会社の活動で生み出された利益に課せられる税金である。
  (儲ければ儲けるほど、税金の額は大きくなる)

   
  租税公課          法人税等
  印紙税          法人税
  固定資産税        都道府県民税
  自動車税          市町村民税
  登録免許税        事業税

 〇法人税等の算出方法
 ・法人税等は会社の儲けにかかる税金だが、利益からではなく、課税所得から算出する。
   
   損益計算書 税金の計算
   収益 ≠益金
   費用または損失 ≠損金
   利益 ≠課税所得

※  損益計算書の利益=収益-費用または損失
   税金の計算の課税所得=益金-損金
   法人税等=課税所得×税率

※給料や電気代などの費用は損金になる。
 しかし、貸倒引当金のように費用になるが、まるまる損金とならないものもある。
 ⇒このように、利益と課税所得は一致しない。
(弘兼憲史『決算書の読み方』幻冬舎、2009年[2004年初版]、88頁~89頁)

第4章 キャッシュ・フローについて


第4章 キャッシュ・フロー計算書 会社が本当にもっているお金が見える
 キャッシュ・フローとは 近年重要性が増している現金の流れを追った計算書

・貸借対照表と損益計算書の二つの書類からは、会社が使った「現金」がどこからどこに流れたのか、はっきりとはわからない。
・それに対し、本当の現金の流れを示すのが、キャッシュ・フロー計算書
 ※正式な財務諸表として、平成11年4月から、上場会社に作成が義務付け
 (国際標準に準拠した「会計基準のグローバルスタンダード化」による法的な施行)
〇キャッシュ・フロー計算書は、現金を絶えず追うため、次のようなことがわかる。
 ・どこから現金を調達しているか
 ・どこに運用しているか
 ・本業でどれだけ現金が生み出されているか
 ・投資にどれくらい転用したか
 ・どれくらい借入金をしたのか
 ・どれくらい返済しているか

<まとめ>
※貸借対照表(会社の資産、負債などの財政状態を表す)と損益計算書(その期の利益がどのくらいかを表す)では、いずれも書類上の数字で、現金の収支はどうなっているのか不明。
⇒キャッシュ・フロー計算書は、現金の流れがどうなっていたかを表すため、企業の財務状況の実態がわかる。

【補足:キャッシュとは】
・貸借対照表に「現金及び預金」という科目がある。
 キャッシュ・フロー計算書の「キャッシュ」は、ほぼこれと一致する。
 ※しかし、預金のなかにはすぐに解約できないものもある。
  たとえば、定期預金~これはキャッシュには該当しない
・また、合計欄は現金及び現金同等物となっている。
  ⇒現金同等物とは、換金可能でリスクの少ない短期投資のこと。
 ※定期預金のうちでも満期が3ヵ月以内のものは該当する
(そのほか何を現金同等物とするかは、経営者の判断になる)
・キャッシュの定義は実は曖昧で、経営者の判断にゆだねられている。
 ⇒そこで、何を現金としたか、注記に記載することになっている。
(弘兼憲史『決算書の読み方』幻冬舎、2009年[2004年初版]、98頁~99頁)



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