高齢者が積極的に自己実現に取り組むとともに、社会的にも生産性に貢献することができるなら、それ自体は好ましいことに違いありません。また生産的活動のために健康維持につとめ、医療・福祉を支援しようとすることは、ただ寿命の延長だけを目的とするのに比べ、社会的な支持を得やすいことも明らかでしょう。
しかし、生産性を追及しようとすることは、成果によって評価すること、すなわち帰結主義的な考えや、あるいは成果(プロダクト)を究極の事柄(エンド)だとみなす「プロダクト・エンド」の考えが根底にあることに注意する必要があります。
プロダクト・エンド的な発想では、成果を生み出すことができた者は評価されますが、一方では、たまたま成果を生み出せなかった者は評価からもれることになります。
また、老化という取り除くことのできない生物的性質のために、社会的な意味での生産性を持ち続けることは限界があり、それから先に至るまでは、生産性という評価を失って生きなければならないことになります。
90歳や100歳の老人さえも珍しくなくなった。
でも、ただ生きていてくれるだけでいいんだよというメッセージを受け取れる人が一体どれだけいるだろう。
高齢化は急速に進行した現象だけに、私たちは今も最適な出口を見つけ出せずにいる。医療、経済・・・問題は簡単ではない。
長寿と生活の質についても深く考えさせられる一冊。