フローズンヨーグルトの液体を、最後まですすったそのとき、私には聞こえた。誰かの言う、真剣な、ふざけてもからかってもいない、心からの言葉。「あれ以上の不幸って、ないと思うの」
私は、100個は言えると思った。
この体で生きること、ティッピと一緒に生きること、それよりも辛いことなんて、100個だって、10000個だってあると思った。
ね。私に直接、きいてみて。
ガンはいやだ。機械につながれて、体に毒を流し込みながら、生きたいって祈り続けるのがこわい。
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児童虐待、食料不足、大虐殺、干ばつ、毎日、ニュースから流れてくる不幸な人たち。その人たちと入れ替わりたいなんて、絶対思わない。私の体はそれよりもずっと不幸、なんて言えるわけがない。
ティッピとずっと一緒にいられる体。
ティッピと、双子でいられるこの体。
それが、どんなことよりも不幸なことだなんて、絶対誰にも言わせない。
結合性双生児として生まれた少女たちの目を通して描かれた日常。実在の双生児達のエピソードがもとになっている。二人で一つの身体。でも一人ではない。互いの個性を尊重し、大切に思いながら生きてきた二人。分離など考えたこともなかった二人に、避けては通れない試練が訪れる。
本を読み終わった後、いつまでも胸の中に喪失感が残った。