私は、まだ会ったこともないころのおかあさんの選択に心からの支持を表明した。問題がはっきりと目に見えているとき、人は原因を取り除こうとする。でも、必ずしも全員がそうではない。ある人はひっそりと部屋に身をひそめてドアを閉め、鍵をかける。人生が常に、一瞬一瞬の闇を突破しつつ前進する苦難の旅路である必要はないじゃない。そういう考え方をするという点で、私は確かに彼女の娘だった。 ―ずうっと、夏 ―
8編の短編が収められている。
登場人物の誰もが、生きることに時として苦痛を感じながらも、心の均衡を保とうする繊細さと思慮深さをもって生きている印象を受ける。ドラマチックでない日々の暮らしと平凡な人々。どの作品にも胸にしみる言葉があふれていて、好きな作家のひとりだ。