「でも、私がほんとうにやりたいのは・・・ログアウトだな」
佳恩は少し酔った勢いでそう言った。
「ログアウト?」
「ポータルサイトのニュースに災害から避難した人たちの記事があったんだけど、写真に写っていたある女性の身なりがひどいと話題になったの。それがあちこちのコミュニティに拡散されて口にするのもおぞましいような書きこみが・・・」
「どうしてわざわざそんなの読むんだ」
亨祐が顏をしかめた。
「オッパ、見ようとして見たんじゃないよ。見たくなくても見えてしまうの」
「インターネットなんかやらなきゃいい」
佳恩は、亨祐はインターネットをあまり見ないから醜い老け方をしなかったのだと思った。
「で、それがどうした」
「昨日今日のことでもないしもっとひどい話はいくらでもあるのに、溢れてしまった。内面にある器のようなものが容量をオーバーして…世の中からログアウトしなければいけないと思った」
表題の「絶縁」を書いた韓国のチョン・セランさんをはじめ9人のアジアの作家たちがそれぞれ絶縁をテーマに作品を寄せている。
こういう形式の作品集を、もっと読んでみたいと思う。