梅原猛や鈴木大拙は源氏物語は精神の深いところを扱わないとして軽く見た。万葉集も同じく子供の感動と同列のものを掲げたと言う。
なぜこんな風にいうのだろうと不思議な思いにとらわれその理由を長い間胸に温めてきた。
道元は母が父に略奪婚されて生まれた子で生涯色恋を遠ざけたと紀野一義に学んだ。梅原猛も父に対して道元が抱いた鬱屈と同類のものを生涯抱いた。鈴木大拙については父に早く死なれ母っ子のような感じがしている。
共通点が見えてくる。母を守ろうとする念が色恋沙汰を一段低いものと見る性向に結びつき、源氏を深みの無い文学と評するのだろうか。