ウブドの王族の火葬の帰りにタマンアユン寺院に寄った。ドライバーがバリで一番美しい寺院だと紹介してくれた。着いてみると以前にも来たことがあることを思い出した。数年前にクタビーチのマデが連れてきてくれた。堀に囲まれたこの寺院に入るとガイドが寄ってきて勝手に解説を始めた。人柄のよさそうな男だったので断らずにそのままついてくるにまかせる。
べサキ寺院に次いで大きなタマンアユンは1643年に建立されたという。すぐに11層のメル(屋根)からなるバデ(塔)を最大としていくつかの大きさのものが順序正しく並んでいるのが目につく。そうか、これは先ほど火葬儀式で見てきたバデと同じだと気が付いた。火葬の際に行進するバデという塔は、目の前にあるバデを模しているのだと気が付いた。11層のバデは日本式で言えば11重の塔と呼ばれるのだろうか。
バデという名前でなにかひらめくものがあった。仏教の菩薩つまりサンスクリット語のボディー・サッタバのボディと同じではないのかと。仏教の用語はヒンドゥから借りているものが多いので可能性はある。確認していないので何ともいえないのだが。
このガイドは小学生の時のクラスメートのだれかに似ている。この男は植物にも詳しく寺院の中にある樹木を片っ端から説明してくれる。ジェプン、マンゴ、マジャパイ、ブリンギン、ブンガ???等々と、非常に物知りだ。今まで植物の名前を正確に教えてくれる人と出会えなかったのでうれしくなり大目にチップを渡した。しかしメモをしなかったのが残念だ、かなり忘れている。
寺院の脇には細い道が通っている。これはスードラ階級が通る道で、サトリアとウェシアは別の道を、ブラフマナはさらに違う道を通りクンニガンのお参りするという。スードラとはワヤン、マデ、ニョーマン、カトゥで呼ばれる人々で90%を占める。日本人はインドのカーストが頭にあるせいで、スードラなどと聞くととんでもない蔑称のように感じてしまうが、バリ人は平然と自分たちのことをスードラという。
現代のバリではカーストはもちろん存在しないが、ぼんやりとした尊敬の念はあるようだ。このあたりの感覚は外国人である私には理解しづらい微妙なものがある。たとえば日本で、名刺交換をしたときに、相手の名前が萬里小路さんだとしよう。心の中では、ひょっとしてこの人の先祖はお公家さんかなとの思いが頭をかすめる。バリ人の心に今でもしっかりと根付いているカーストはこの程度のものかな。いや、なにかが違う。バリ人はこのカーストを結構うれしそうに解説してくれる。怨念や差別といった気持ちを感じることがない。
最近の「バリ島 文化・風習・葬祭・ヒンドゥ・寺院・宮殿」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
- バリ島 地震・事件・病気・イベント・危機管理(180)
- バリ島 食べ物・暮らし (日本・世界の食べ物含む)(365)
- バリ島 街の風景・海辺の風景・山の風景(294)
- バリ島 文化・風習・葬祭・ヒンドゥ・寺院・宮殿(218)
- バリ島 絵画・紋様・アート・クリス・美術館・ワルター シュピース(93)
- バリ島 舞踏・レゴン・ケチャ・ガムラン(63)
- バリ島 世界各地のバラ・蘭・花(72)
- バリ島 不思議な話・死後の世界・輪廻・自己とは(46)
- バリ島 人に歴史あり(96)
- 小説 村上春樹(69)
- 小説 幼年期の終わり(UFO含む)薔薇の名前(46)
- 小説 カラマーゾフの兄弟(98)
- 小説 音楽(220)
- 映画 絵画・写真作品含む(194)
- 源氏物語(25)
- 紀野一義 仏教研究含む(267)
- 紀行 チリ・アルゼンチン(68)
- 紀行 イタリア (74)
- 紀行 モロッコ・チュニジア(58)
- 紀行 シンガポール・マレーシア・カンボジア・タイ・ベトナム・中国・韓国(97)
- 紀行 USA・UK・FR・BCN・GVE・AUS・DEU(47)
- 紀行 日本(193)
- 紀行 マチュピチュ・ボリビア・ペルー(57)
- 通信事業 NTT・NTTデータ・新電電(382)
- 通信事業 孫正義(77)
- 通信事業 NTT法廃止と課題(48)
- AIの先にあるもの(89)
- 日常の風景・ニュース(732)
- 心の旅路・my life・詫間回想(453)
- my memory 宮本治子 墓碑にかえて(40)
- ブログの紹介(3)
バックナンバー
人気記事