・・・ 角川短歌の初笑い ① ・・・
✿ 口あけて腹の底まで初笑い 虚子の初笑いの句としてよく知られている。今年の1月号角川短歌大特集は♦新春62歌人大競詠「初笑い」 作品+エッセイ である。ツイッターなどでお馴染みの歌人の歌の中から私の好きな作品を取り上げてみる。
片降(カタブイ) 俵 万智
右は雨、左は晴れの水平線 片降という語が島にある
一本の棒から芽が出て根が生えてマングローブの命たくまし
窓際に寄り添い芽吹くもののあり葉と葉を重ね語るものあり
三十度超す霜月の外廊下 百匹ほどの蛾を敷き詰めて
蛾を乱舞させぬコツなど身につけて島に五度目の秋は過ぎ行く
3・11の後から、俵万智は石垣島に移り住んでいる。3年前の3月にわたしは石垣島を訪れたら、夏だった。向日葵の花が咲いていた。近くの八重山諸島を周遊し、ここは南国だと思った。川にはマングローブが群生していた。「一本の棒から芽がでて、~命たくまし」 南国の植物の勢いが素晴らしい。そこで今、俵万智は少年の息子と暮らしている。「蛾を乱舞させぬコツなど身につけて」、自然と仲良く過ごしている。歌には笑顔の万智が、、。
「小学生のころは、あらゆるものに「初」をつけて、じーんとしていたっけ。初朝ごはん、初着替え、初電話、初テレビ、初トイレまで。年があらたまることに格別の感慨があった。そんな初々しさから遠ざかって、ずいぶんたつ」。10首に添えた俵万智のミニ。エッセイには望郷の念もただよっている。でも東京や仙台に戻ったら彼女は石垣島を恋うであろう。
1月7日 門松を外す 松井多絵子