☆ 真冬の芥川・直木賞 ☆
♦ マンションの非常階段のぼりゆく人に吊られる坂のぼりながら 松井多絵子
第154回芥川・直木賞が19日に発表された。芥川賞✿滝口悠生(33)「死んでいない者」
✿本谷有希子(36)「異類婚姻譚」 直木賞✿青山文平(67) 「つまをめとらば」
この3人がならんだ写真は笑顔というよりほっとした表情である。まるで坂道に建つマンションの非常階段をのぼりつめた、とりあえず追われているものから逃れたような気持ちかもしれない。私たちが書店で本を手に取るとき、まず話題になっているものを選ぶのではないか。正月がすぎ、寒さがきびしい今は家にこもりがちだ。読書の秋と言われるが紅葉の美しい秋は私は旅を楽しむ、紅葉狩りで忙しい。今こそ読書だ。「読書の冬」だ。
「死んでいない者」で第154回芥川賞に決まった滝口悠生さん(33) 本日朝日新聞朝刊
ひと に取り上げられている。「行き先を決めない書き方は、この作家の人生そのものだ」。彼へのインタビューの記事を高津祐天が書いている。~高校時代、同級生は進学したが、自分は学ぶ目的が持てなかった。卒業後は、アルバイト生活、あちこち放浪もした。映画「男はつらいよ」を愛し48作を5回ずつくらい見た。~写真の彼は寅さんに似ている。小説は言葉を使う「放浪」と感じた。自在に時を行き来し記憶をたどる彼は文学的な男だ。
「23歳で早稲田大に進学。遊びもせず思想や宗教を学び、これで十分と卒業前に中退。5年前にデビュ―した。思いのままに道を曲がる<迷い歩き>が好きだ。道ばたや足もとを見つめているうちに思い浮かぶ場面や雰囲気が、自分の書こうとするものかなと思います」
滝口悠生さま 私も「迷い歩き」が大好き。歩きながら迷歌を生んでいます。
1月20日 松井多絵子
※ 明日は本谷有希子さんについて書く予定です。