TPPをめぐる、日本の政治や言論界の絶望的な状況――フェイス・ブックより (美津島明)
●五月十四日(木)「TPP問題について~アメリカの議員とロビイストは中身を見れるのに、日本の国会議員は誰も見れない不思議な条約~」(高木克俊・ASREAD)
http://asread.info/archives/1805
当論考によれば、TPP交渉の中身について、日本は守秘義務を負っているので、国会議員も関連業界団体もその中身を知りません。しかるに、米国の国会議員や関連業界団体は、その中身を当然のごとくに知っている、というのです。当論考が言うごとく、〈ポーカーで例えれば、自分は自分の側の手札も見られないのに、相手は相手自身の手札とこちらの側の手札を全て見られるような状況で勝負するようなもの。こんなルールでゲームに勝つなどまず不可能〉です。中身の分からない条約を、国会はどうやって承認すればいいのでしょうかね。また、TPP賛成論者は、中身の分からない条約にどうして賛成するのでしょうか。中身が分からないから賛成しようがないのでとりあえず反対する、というのが常識的な対応ではないのでしょうか。TPP賛成の識者たちよ、特に、プラグマティックなリアリストを自称する中道保守派よ、目の前の不条理な事態に対して知らんぷりをせずに、この疑問にちゃんと答えよ。
●五月二九日(金)「日本が報道しないTPP条項で米国議会が紛糾」(MAG2・NEWS)
http://www.mag2.com/p/news/16645
日本では、マスコミの執拗な翼賛報道によって「TPP参加は既定路線」というムードが支配的です。しかし、アメリカではいまTPPをめぐって激しい賛否論の応酬が繰り広げられています。アメリカは決して一枚岩ではないのです。賛成派は日本のそれと同じで、「自由貿易は素晴らしいこと。TPPは自由貿易を推進するもの」という論調が支配的です。反対派はこれまた日本のそれと同じく「TPPの本質は、自由貿易などではない。その主役は、知的財産であり、ISDS条項である」というもの。知的財産の保護は消費者主権を脅かし、ISDS条項は、企業による国家に対する訴訟が多発して国家主権を脅かす、と反対派は言います。私は反対論に与する者ですが、それ以前に、日本における、TPPをめぐる言論の無風状態が異様に映ります。
●七月十四日(火) TPP交渉「離脱も覚悟を」=党支持層にアピール―クリントン氏(時事通信) - Yahoo!ニュース 情報ソース【ワシントン時事】米民主党のヒラリー・クリントン前国務長官の発言(13日) *記事はすでに削除されている。
ヒラリーいはく、「(TPPの協定内容が)雇用を創出し、賃金を上げ、安全保障を増進するものなら支持すべきだが、そうでないなら(交渉から)抜けることも覚悟すべき」。日本の政治家で責任ある立場の人が、TPPの参加離脱に関してこのようにはっきりと、国民経済にとってプラスになるかどうかを基準として掲げたのを見たことがない。聞こえてくるのは「自由貿易はいいことだ」「規制緩和の起爆剤」「TPPは、日米同盟にプラス」「TPPは、中国包囲網」という空疎で根拠薄弱な声ばかりである。中身がはっきりしない毒まんじゅうの可能性が高いものを食べる理由などない、というのが常識的な考え方なのではなかろうか。
●七月十四日(火)TPP交渉、米国がカナダ抜きでの妥結も検討=関係筋 (ロイター)
http://jp.reuters.com/article/2015/07/10/usa-trade-canada-idJPKCN0PK2JA20150710
アメリカの、他国の食糧安全保障を無視した、はじめに合意ありき、の強硬姿勢が気にかかる。日本は、秘密交渉において、アメリカの強硬姿勢をなし崩し的に甘受し、自国の食糧安全保障体制をずたずたにしてしまっているのではないかと危惧する。
●七月二六日(日)<TPP>著作権、非親告罪化 社会や文化の萎縮懸念(毎日新聞 7月25日配信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150725-00000071-mai-bus_all
ACTA問題として、ヨーロッパでは数年前から問題にされていたこと。ヨーロッパは、この問題に関しては、はっきりと拒否の姿勢を示している。日本のマスコミはこの問題を取り上げようとしてこなかったのだが、大筋合意の瀬戸際になってやっと申し訳ていどの触れ方をすることになった。むろんTPPの危険性は、これだけにとどまらない。要は、グローバル企業の利益追求のために、国家主権がおびやかされるという点にこそ、TPPの危険性の核心がある。交渉過程が秘密にされているので、それさえもいまだに明らかにされていない(アメリカの国会議員はその中身をすべて知っているのだが)。この、中身のはっきりしない毒まんじゅうを食べるべきだと主張するメディア、政治家、評論家はすべて無責任で愚劣である。TPPに参加すべき理由が、私にはいまだにさっぱり分からない。不参加にすべき理由なら、枚挙にいとまがないけれど。
●八月一日(土)「クリントン氏 TPP『国益を優先すべき』」(日テレNEWS24)
http://www.news24.jp/articles/2015/07/31/10305762.html
クリントン氏が優先すべきであるとする「国益」とは、「労働者の保護・賃金引き上げ・経済的な機会や安全保障上の国益増大」のことである。つまり、あくまでも一般国民や国家主権の立場からの「国益」なのである。これは、現在進行中のTPPが、あくまでもグローバル企業の利益を最優先させていることに対する批判なのである。
メディアは、TPP交渉に苦慮する甘利経産相の白髪頭ばかりを放映しているが、クリントンのTPP批判を掘り下げた報道を、私は寡聞にして知らない。端的に言えば、こんな馬鹿げた交渉など決裂してしまえと思っている。TPPは、日本の一般国民のためにも、国民経済のためにもならないのだ。TPPに参加して喜ぶのは、日本では、経団連くらいである。ここでひとつ、確実に当たる予言をしておこう。TPPに参加してから数年間で、消費税は10%を余裕で突破することになるだろう。なぜなら、内外のグローバル企業の圧力で、日本政府は、法人税をさらに下げざるをえなくなるものと思われるからである。
消費増税議論はなぜやまないのか。それは、財務省のコバンザメたちがのたまうように日本政府の財政が危機的状況にあるからなのではなくて、内外のグローバル企業の法人税引き下げの要求に、政府が抗しきれないからである。グローバル企業に対する減税分を、一般国民への増税で補う。それも、国民ひとりひとりの首根っこをつかまえた形で着実にいただく。それが消費税の正体なのである。むろん、異次元緩和を断行しているいまの日本に、財政問題なんてものはない。しかし、財政破綻論は、主婦の財布感覚の連想が働くから、国民を納得させやすいので捨てがたい。だから、マスコミを総動員して、このフィクションというか端的に言えばウソをまことしやかに年中行事のように垂れ流し続けるのである。
●八月一日(土)「TPP交渉大詰め 厳しい状況続く」(日テレNEWS24)
http://www.news24.jp/articles/2015/07/31/06305754.html
報道によれば、日本側に「攻め」の展開はまったくなくて、防戦一方である。こんなみじめな展開になっても、安倍首相の、TPP交渉にあたっての「とにもかくにも交渉の妥結を最優先せよ」という方針はどうやら生きているようである。国益をずたずたにされても、TPPの妥結がとにもかくにも大事であるということは、要するに〈TPPでアメリカの要求を呑まなければ、日本が中国の覇権主義の犠牲になっても、アメリカは知らんぞ〉というアメリカの脅しに屈していると解さなければ、とうてい理解できない。なんということか。これが、安保関連法案の裏側の事実なのである。
●八月一日(土)「TPP、合意見送り 新薬・乳製品の対立解けず」(日本経済新聞)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS01H16_R00C15A8MM0000/
大筋合意見送りを祝す。TPPという、グローバル企業に対する片務条約の交渉が決裂することを、私は天に祈りたい心境である。日経新聞の残念そうな論調が片腹痛い。
☆オバマ政権下でのTPP交渉の、これ以上の進展は、どうやらなさそうである。とりあえず、胸をなでおろす思いである。しかし、アメリカ・ウォール街の「日本獲り」の策謀はこれで終わりを告げるはずもなく、また、グローバル企業による国家主権の封じ込めの試みがこれで止むはずもない。これらの強欲資本主義勢力は、アメリカの国家機構を駆使してこれから第二、第三のネオTPPを執拗に仕掛けてくるはずである。また、TPPを俟たずとも、日本国内において規制緩和の波は次から次に押し寄せている。本来ならば、それに対する防波堤となるべき日本のマスコミや政党や識者たちの頼りなさはごらんのとおりである。ほっとしている暇はないのである。
アメリカの属国、日本! アメりカの洗脳広告代理店、電通による、テレビ、新聞、週刊誌、ラジオ等の、マスコミを使った偏向報道で、見事な国民洗脳をされ続ける日本人は、自分自身の脳、すなわち思考そのものを点検せよ! さらにネット洗脳システムのツイッターやフェイスブック利用者、まとめサイトには注意が必要である。 我々はハッ、と気付いて、常に注意深く、用心して、警戒し、疑いながら生きれば、騙されることはない。 すべてを疑うべきなのだ!